8-070 源泉かけ流しの巨大家族風呂で癒されたい ①
chefアランギー様率いる妖精のおしごとが織りなす何時でも何処でも天元突破常に蜿蜒思考錯誤を重ね続ける空前絶後の料理の味には一歩も二歩も譲るが隠蔽の楽園銀行の宿泊施設の料理の味が悪い訳ではない。
神界の食べ物や飲み物には味がないあるのは豊かな色彩と微かな香だけ。数多に存在する神域の多くが神界の影響を受け悲しいかな食べ物飲み物には無頓着なところが多いらしい。
そう考えるとここは実に素晴らしい。料理の世界唯一の至高最上位と比べて一歩も二歩も譲る腕は間違いなく高い方の上位クラス。食べ慣れ舌が肥えてしまっている俺達だからこそ物足りなさを感じてしまっているだけだ。
ここには、ここにも、確かな実力と経験を持った本物のchefが居る。食事の時間を楽しみに待っている俺が思っているのだから間違いない。
スィートルームの無駄に広々としたダイニングで夕食を楽しんだ後はスィートルームに一つしかない同時に五十人は浸かれそうな巨大な家族温泉に浸かり兎に角色々と癒す。
見慣れない星々の輝き何だかちょっと明る過ぎるような気もしないでもない雲一つない夜空を見上げながら心を落ち着かせる。
「ねぇロイク」
「はいなんでしょうか?」
「アッオイから聞いたのだけれど、私はイヤよ、百万年もここで暮らすのは・・・止まっているから気にする必要はないと言われても納得できないのだけれど」
ですよねぇ~、俺も同じ気持ちなんでその気持ち良く分かりますぅ~。ですが。
「出来ることならサクッと終わらせて俺も帰りたいです。ただ・・・この状況でそれはどう足掻いても叶わぬ夢って言うか諦めるしかないって言うか、そんな感じじゃないですか。俺こう考えることにしたんです。フォルティーナの為に頑張ってるって思うから心が行き場を失うって言うか付いて来ないだけなんで・・・だったらコルト下界の為大樹や聖域や皆を守る為に俺達にしかできない今やれる最善を尽くしているって思うようにすれば多少は心も悲鳴を抑えてくれるはず、こう思えばまだもう少しは頑張れるんじゃないかって」
「・・・あのフォルティーナが来る日にいったいどこまで・・・ある種の掛け・・・ハッキリ言って最早神頼みなのだけれど、期待するだけの価値があるのかしら」
そうなんだよなぁ~フォルティーナだからなぁ~。
「まっ備えの一つってことで、備えは幾らあっても足りないはずなんで深く考えないでおきましょう、今は」
「アナタがそれで良いのなら、そうね・・・」
「ロイクさん、妙案があります聞いていただけますか」
「勿論です」
話し掛けるタイミングを見計らっていたのだろう、マルアスピーとの会話を静かに聞いていたマリレナさんが得意満面な笑顔で話し掛けて来た。
「ここは非常に良い所です。ここには約束された安寧しかありません。あの、あのジャックポットさえなければここは真に楽園、楽園その物です」
マリレナさんから何となく毒々しいオーラを感じるんだが、タブン気のせいってことで・・・。
「そこで私は考えました。ここに存在し続けることが、コルト下界の一般の民やちょっと逸脱してしまった理外の民には、難しい。難しいと言うだけで無理ではない・・・つまり適切な対策を講じさえすれば何とかなる、そうですよね、そう思いませんか?」
怖ぇ~・・・ホンワカしてるのに迫力があるってこれ如何に。
「お、思います」
「ですよねっ、ロイクさんも同じ考えで私とっても嬉しいです。そこで妙案なのですがゴニョゴニョゴニョ」
近いっ!! 近過ぎて当たってますからっ!! ノォー・・・。
「ゴニョゴニョ」
「マリレナさんロイクさんそれなのですが・・・理の不文律、禁忌に抵触します」
ザバァァ~。
「「え!? そうなのですか、フラン様」」
湯船から身を乗り出したマリレナさんと俺の声がちょっと食い気味に被った。
「無理だなキューンキューン」
「其に触れ己が消散を以て赦され、許されるは我が心中に留まるのみの僅かばかりの悲しき成れの果て、久しく思い出すことのない悉に語らぬ名を司りを託されし我が主神様が眷属神・・・今となっては悪い奴ではなかったが良い奴でもなかったくらいの記憶だ」
滅茶苦茶怖いんですけど・・・要はマリレナさんの案を実行したら俺達も大いなる何かに消されちゃうってことですよね・・・。
「あぁーおったなぁ。エッチチィ―なのが、確か悪黒兎やらそないな感じの名前やったようなぁ」
「あぁ―――――居たかもっ。あぁ――――あっ!! アッオイのそれおしいニアピンだキューンキューン、悪兎黒神だ悪兎黒神だよ」
「そっちどしたか、そういうたらそないな名前どしたなぁ」
「ねぇユーコ、アッオイ、ロザリークロード、そのアトグロの名を持つ神? 神で良いのよね? 消散する程の禁忌を犯してまでやり遂げようとしたことがあったのよね、存在をかけてまでやり遂げる価値・・・それはいったい何だったのかしら、とても気になるのだけれど・・・ 」
おおおマルアスピーさんや俺もです俺も、一時的に神気を体表に這わせて疑似的に神気を持ってる状態にした上でここでジャックポットと戯れて貰おう作戦を実行しただけで消されちゃうんですよ、実際に消されてしまったその神様が何を何処までやったのか滅茶苦茶気になります。
「教えていただけるのであれば、私も聞きたいです。悪狼神様」
「僕も神気を持ったばかりだからとっても気になるぞ。鉱物に神気を這わせるくらいは大丈夫なのか知りたいぞ」
そうですよね、マリレナさんもミューさんも知りたいですよね。・・・だからって俺の近くに集まる必要はないですよね? ここ広いけど声くらい届きますよ・・・。
「フゥーン・・・チョコレートたっぷりイチゴジャムたっぷりカスタードクリームたっぷりのシュークリームと冷え冷えのミルクがあればどうでもいいのじゃぁ~。美味しい食べ物と心地の良い寝具と下世話で嘘八な週刊誌とノンストレスだったりドロドロだったり甘々恐々の漫画本ががあれば私はそれで満足なのじゃぁ~」
「阿呆としか言いようがないのぉ~、良いかもう一人の妾よ、それはただの自堕落あの女神そのものではないか、故にその恥ずべき生き方を正し未来へと続くであろう目標を定めてみてはどうか?」
「うぅ~ん・・・それは今じゃなくても良さそうだから今度にするのじゃぁ~♪ モグモグモグ、ウホッこれもウマッ!! ウマウマなのじゃぁ~」
「ハァー・・・トゥーシェよ、同じ容姿でその軽さ・・・幸せそうには見えるが妾としてはもっとこう凛と・・・」
・・・
・・
・
「...... ~ ......とまぁーこのような話だったと記憶しています」
見切りスタートで始まった悪兎黒神様のやらかし話は、ロザリークロード様、悪狼神様、遊狐様、フラン様の微妙な記憶のピースを繋ぎ合わせてやっとのことでゴールした。
「これって、本当にホントにあった話なんですよね?」
「どすえ」
「そうですよ」
「キューンキューン」
「我等が嘘を並べる意味がどこにあるのだ」
「驚きの結末でしたね、ロイクさん」
「ロイク、これは想像以上に変態としか言いようがないと思うのだけれど」
「ロイク様、私達樹人種も確かに子が生まれ難いところはありますが・・・これはちょっと嫌悪と言いますか、世間を欺く為嘘の情報でその身を穢したラケル様の作り話以上に吐き気を覚えるのですが・・・」
「ぼ、僕にはちょっと早過ぎたとしか・・・ぼ、僕今日はもうあがって寝るぞ」
マリレナさんとマルアスピーとバジリアさんとミューさんがドン引きする気持ち分かります。つうかそれしかないんですけど・・・悪兎黒神様って衝動を抑えられない只の馬鹿野郎としか言いようが・・・消散はやり過ぎ・・・イヤそうでもないのか・・・身内に被害って考えたら許せそうにないしな・・・。
「フゥーン。私が持ってる成人女性漫画本【花園より御団子学園は蜜の月の艶】にそっくりなのじゃぁ~、寧ろ過激なところが省略されていて可愛いくらいなのじゃぁ~」
トゥーシェお前そんな本を何処で・・・つうか書いた人が居るってことだよなっ、怖いんですけどその黒い想像力・・・。
「BL以外にもそのような書籍を所持していたのか・・・ハァ~トゥーシェよ・・・旦那様よすまぬが妾も先にあがらせて貰う、少しばかり頭痛がの」
貴重な時間をありがとうございました。




