2-27 始めての風の迷宮①~調査開始、少し前~
宜しくお願いします。
――― R4075年7月19日(闇)12:30
俺は、エルドラドブランシュの屋上にある研究施設に、高位樹人族の大賢者マクドナルド・ガリバー、高位樹人族の巫女でシオの母親アストリス・ヴェロニカ、シオ、高位樹人族の大長老マリレナ・ハイペリカム、闇樹人族の長老バジリア・マンジュリカ、俺の秘書メリア・ワワイバーン・ノイリア、相談役(諜報員)ルードヴィーグ・ダダ。そして、マルアスピー、アル、トゥーシェ、パフ、アリス、サラ、テレーズ、仕方なく父バイルを集めた。
それは、俺の神授スキル【転位召喚・極】が一部の者に通じない事の原因究明と、フィーラの総督府の地下で行われていた実験と、そして俺のステータスやスキルについての開示だ(全てでは無いが・・・)。
フォルティーナは、風の迷宮にも影響がある様な感じの事を言っていた。それは、創造神から管理を任されている俺にとって無視出来ない事だ。俺は協力を要請するにあたり守護者であり管理者であり聖人として、自分にどの様な能力があるのかを開示する事にした訳だ。
因みに、フォルティーナには何度か話掛けてみたが、話は出来ていない。
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「そう言う事でしたら、分かりました。風の民の集落の祠にある風の迷宮を調査してみます。フィーラの自然魔素の乱れの原因と、創造神様よりいただいた風の迷宮の解放。一度にどっちも進められるし願ったり叶ったりです」
「ねぇロイク。調査には誰を連れて行くの?」
「そうですねぇ~」
俺は、アルさん、トゥーシェ、パフさん、アリスさん、サラさん、テレーズさんを見た。
「ロイク様。私は一緒に行きたいのですが・・・フォルティーナ様に頼まれました大聖堂で療養中の皆さんへの聞き取り調査がありますので、今回は諦めます」
「フォルティーナと連絡が取れたんですね。フィーラの事何か言ってませんでしたか?」
「何も・・・」
「そうですか」
「はい・・・すみません」
アルさんは、フォルティーナに頼まれた用事で不参加。悲しそうな顔をしないでください・・・
「私もパスなのじゃぁ~」
「外出ですよ。良いんですか?」
「あれがいない今こそ真の自由なのじゃぁ~」
「今なら逃げ切れるかもしれませんよ」
「捕まった時が地獄なのじゃぁ~・・・」
悪魔だし、地獄は快適・・・って事は無いか。
「分かりました。俺が迷宮に入ってる間トゥーシェには離宮全体の警備をお願いします」
「任せておくのじゃぁ~」
トゥーシェも不参加っと!
「パフさん、アリスさん、サラさん、テレーズさんはどうしますか?」
「おぅ!行くに決まってんだろうがぁっ!」
父バイルが何故か答える。
「親父に聞いてないんだけど」
「あぁーお前っ本気で言ってんのかぁっ!あぁーえぇー・・・?」
「邪魔だし」
「親を邪魔って・・・この子今親を邪魔って言ったわよぉー」
「何だよその喋り方」
「そんなこたぁーどうーでも良い訳よぉっ!分かるよなぁっ!俺は来るなぁーと言われても行く男だからなぁっ!俺は行き易い男なんだよぉっ!分かったかぁっ!」
分かる訳無いだろう・・・
「安心しろってぇー」
何にだよ。まったく。
「なぁー!風の迷宮かぁー楽しみぜぇーい」
言い出したら聞か無いのは昔からだし・・・はぁ~。
『ねぇロイク』
あ、はい、なんでしょう?
『パフちゃん達も同行するのなら、私連れて行きたい人間種がいるの』
誰ですか?
『メリア・・・』
「狩りの対象は何だぁっ!魔獣によっちゃー一瞬で逝かせられるぜぇーハッハッハッハ」
父バイルは一人喋り続ける。マルアスピーと俺のレソンネを邪魔しながら。
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「分かったよ。親父には魔獣を任せるから、どんな魔獣がいたのかとかそっちの整理も頼むよ」
「おっ!任せとけい。・・・あぁーダメだ」
「何が?」
「俺、狩り専門じゃんかよぉー。そういうのってぇー俺の専門じゃねぇーしって感じだしぃー」
「そ・・・そうだよなっ!・・・魔獣を倒すのだけ頼むよ」
「おっ!任せとけい。腕がなるぜぇーハッハッハッハッハー」
親父は、無理矢理自主参加・・・
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「テレーズと私は同行します。闇の迷宮や魂集めで個人レベルは上がっていませんが、弓の技術や連携は学べています。ロイク様には是非ご覧になっていただきたいです」
「アリスと、私の魔術と弓のダブルダブルコンボです」
アリスさん、テレーズさん、参加っと。
「サラさんはどうしますか?」
「後衛からの支援無しに側衛や前衛が成り立つとでも?私も参加致しますわ」
「私も参加します」
サラさん、パフさんは参加っと!
「今回は、アルさんとトゥーシェ。それとフォルティーナは不参加って事で、調査を行います」
「「「「はい」」」」
パフ、アリス、サラ、テレーズは力強く返事をした。
「あぁー何だぁっ!調査ってかぁー狩りなぁっ!」
「・・・あぁ~頼むよ・・・・・・」
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「ロイク様。マルアスピー様には確認しなくて宜しいのでしょうか?」
「精霊樹が大樹の森に落ち着く様に語り掛ける機会が多くなってるみたいだし、自然魔素の乱れは自然の力、循環の乱れなんです。原因かもしれないし誘わなくても来ますよ」
「そうね。フフフッ」
「大樹様や大樹の森が語り合ってるんですか?ロイク様にも声が聞こえるのですか?」
「俺の場合は声というより、身体で受け止める自然魔素に信号というか感情の様な意思の様な物を感じる程度です」
「そうなんですね」
「ほうぉ~大樹の英雄殿は、自然魔素干渉の感受性が高いのですな」
「そう言えば、大賢者様はどうしてフィーラの自然魔素が膨張しているって分かったんですか?」
「風の魔術発動時に微弱ではあったのだが、乱れを感じたのじゃよ。風属性の自然魔素の乱れは、大樹の聖域か邪気の洞窟か息吹の谷か風の祠。乱れの大きさから、影響の小さい場所の自然魔素が乱れていると推測した訳だよ」
「なるほど。未来視をした訳じゃ無いんですね」
「フィーラの未来の覗き見を試みたが、黒紅色の靄が邪魔してのぉ~・・・」
大賢者様の未来視を遮る程の黒紅色の靄。
「邪属性の靄って事ですよね」
「そうなるな。それに未来視は、運の影響が非常に大きく。個体レベル108で【LUK】644では微妙なのじゃよ」
俺の神授スキル【神眼】の『千里眼』も運に依存するのか?フォルティーナが戻ったら、相談してみるか。大賢者様の未来視も来たる日に備える為に有力なスキルだし。
「ロイク様」
「私も同行して宜しいでしょうか?」
「メリアさんがですか?」
「私は、これでも2日前まで、ゼルフォーラ王国パレスマージ隊に所属していたエリートマージです。16歳になったばかりの女の子が同行する調査に参加しない訳には行きません」
メリアさんは、パフさんへ視線を動かした。
あぁ~なるほどね。
「メリアさん、えっとですね。パフさんは......
「パフパフはよぉー。ソメポールマージって言ってなぁっ!グレートマージやサージュより上級の神授JOB何だよぉー。そこいらの16歳の女の子と一緒に考えてっとぉー火傷すんぞぉーハッハッハッハーどうだまいったかぁーハッハッハッハ」
......え・・・親父・・・そんな感じです。パフさんは攻撃魔術サイドから成長しソメポールマージ。サラさんは補助回復魔術サイドから成長しソメポールサージュ。2人とも扱える魔術に実は大差ないんですが、成長過程が異なるので神授JOBが異なるそうです」
「16歳で、グレートマージやサージュより上級のJOBなのですか・・・」
「おうよぉ。任しとけぇい」
親父が自慢してどうするんだよ・・・
「ねぇロイク」
「はい、何でしょう?」
「先程も言ったのだけれど、同行させたい人間種はメリアなの。・・・メリア。同行を認めるわ」
「あ、ありがとううございます」
「えっと?」
決定権ってマルアスピーが持ってたのね・・・
「ただし、条件が1つあるの」
「はい」
「混血1種のシオを連れて行きたいの。アストリス。良いかしら?」
「で、ですが、この子はまだ98歳子供です」
「メリアも24歳。樹人族では子供なのでしょう?」
「この子は混血樹人族です。成長の感じは高位樹人族に近い為、ゆっくりですが、個体能力はどちらかというと樹人族に近くお役に立てるか・・・」
「そうかしら?個体レベルは1なのに【MP】【INT】【MND】は、個体レベル299のマリレナよりも高いわ」
「え?」
「あら?知らなかったのね」
「私達は、帝国の魔の手から子供達を守る為、抜き打ちの魔導判定機の検査が行われる時も。出来る限り隠して来ました」
「そうね。アストリスもシオも【MP】が高いわ。仕方ないわね」
「マルアスピー。どうしてシオさんを連れて行きたいんですか?」
「簡単な事よ。パフちゃんと、メリアとシオの魔力で確かめたい事があるのよ」
「連れて行かなくても出来ませんか?いざって時の転位や召喚が通じない訳ですから」
「地下0階では無いのよ。ロイクがいるのに危険な場所が存在するとは思えないわ」
「それは確かだな」
大賢者マクドナルド・ガリバーが即答した。
「ってぇー事で、チーム大人の玩具集合だぁっ!」
「親父なんだその卑猥な感じがする変なチームは?」
「神乳が言ってただろうがぁっ!俺は、パフパフとサラ姫さんとジェルマンとこのお嬢ちゃんとリラリスん家の下っ子ちゃんの花嫁修業の御師匠様なんだよぉ!」
「闇の迷宮の調査と魂集めだろう?」
「おめぇ分かってねぇーなぁっ!用たしに行く時、御花摘みに行くだろう?」
「そういう言い方もあるな」
「深夜にしか現れねぇー闇の迷宮の調査や、新鮮な魂集めに行って来まぁーすって、恥ずかしくて言えねぇーだろうがぁっ!」
「そうか?」
「だから、花嫁修業なんだよぉっ!」
意味が分からん。
「・・・それなら、チーム名から修正した方が良いと思うぞ」
「何でだよぉっ!夢と希望と愛と欲望と何だぁっ・・・ドキドキが止まらないだろうー興奮を隠さない潔さが溢れた良い名前じゃねぇーかよっ!」
関わるの止めよ・・・
「そっか・・・そうだな・・・それじゃ、昼食を済ませたら現地に移動するから、親父とパフさんとアリスさんとサラさんとテレーズさんは準備してください。集まるって事は打ち合わせですよね」
「おう。任せとけい」
5人は、研究施設を後にした。
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......分かったわ。実験はここでやる事にするわ。メリアを同行する代わりに、シオとメリアはパフちゃんと私の実験に協力して貰うわ」
シオさんには何のメリットも無い様に思うんだけど・・・
「マルアスピー様。娘は何の実験をお手伝いするのでしょうか?」
「言って無かったわね。【MP】回復用のデザート、スィーツ、軽食の試食よ。【MP】が高い人と、それなりに高い人と、とても高い人。【MP】の回復率や回復値を測定するのに良いと思うの。それに、シオはお菓子が好きかしら?」
「おかしですか?」
「甘くて美味しい物もあれば、しょっぱくて美味しい物もあるの。酸っぱい物もなかなか美味しいのよ」
なるほど。迷宮に連れて行くって言い出した時は驚いたけど、そういう事か・・・
「ロイク。塩苺飴を出して」
「あ、はい・・・【タブレット】『取り出し』【塩苺飴】5本&試作品ロイスピー【濃厚エクレア】5個≫」
≪・・・道具・食品・デザートから【塩苺飴】【濃厚エクレア】を各5個ずつ取り出しました。
俺は、アストリス・ヴェロニカ、シオ、マリレナ・ハイペリカム、バジリア・マンジュリカ。そして、マルアスピーに1つずつ渡した。
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「お、美味しい。おかしってこんなに美味しい物何ですね・・・」
「監視域では、その日食べるのがやっとでしたから・・・」
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結局、風の迷宮の調査には、大賢者マクドナルド・ガリバー、俺の秘書メリア・ワワイバーン・ノイリア、俺の父バイル、パフさん、アリスさん、サラさん、テレーズさん、マルアスピー、俺で行く事になった。
高位樹人族の大長老マリレナ・ハイペリカム、、闇樹人族の長老バジリア・マンジュリカ、シオの母親アストリス・ヴェロニカ、シオには、転位召喚の原因究明を進めて貰う事にした。王都から転位魔術使いを3人派遣して貰い、アルさんには、こっちの方も宜しくとお願いした。
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――― R4075年7月19日(闇)14:00
研究施設には、マルアスピーと俺だけが残っている。
「この世界の自然魔素の循環はおかしな事になっているようなのだけれど、ロイクが創造した球体の自然魔素の循環はとても安定している様ね」
「創造したばかりですからね」
「昨日、凄い事に気付いてしまったの」
「凄い事ですか?」
「えぇ。見てて」
マルアスピーは、空のグラスを片手に球体の中に入って行った。
え?この中って入れたのか・・・
そして、グラスに水を入れた状態で。球体から出て来た。
「中から汲んで来たんですか?」
「そうよ。でもね。見せたいのは、グラスでは無いの。球体を見て」
「はい」
暫くすると、球体は、球体内の循環以外の場所。つまり、俺達の世界の大気(自然の循環)から自然魔素を取り込み始めた。
「循環から各属性の自然魔素を取り出した時は、外から取り込む何てありませんでしたよね?」
「えぇ。でもね。循環に関係無い所で失った自然の力を外から自然魔素として取り込むみたい」
「なるほど・・・この球体事態、この世界に存在する自然魔素を使って俺が創造した訳だから、足りない分は拒絶する事無くこの世界から得られる訳か・・・あれ?それなら、この球体が生み出してる循環から生まれる自然魔素や自然の力って、この世界には余剰って事になりませんか?」
「そうね。ロイスピーで扱う位にしておいた方が良いでしょうね。でも、この位の力でこの世界の自然の力の循環がおかしくなる事は無いでしょうけど。フフフッ」
「そうですね!」
ありがとうございました。