2-24 初めての救出作戦③~転位召喚しない存在と、古代魔術?~
いつも、有難うございます。
宜しくお願いします。
――― R4075年7月18日(光)20:20
【テルールパンセ】☆1☆1 発動 ≫
「何をしておる。指示に指示に従わぬか」
「無駄ですよ。2人は俺が拘束を解くまで身動き1つ喋る事すら出来ません」
「な、何をした」
「何って見れば分かるじゃないですか。メルカッツ・カノイ長老」
「ど、何処で儂の名を・・・」
「創造神様から神授していただいた能力でです」
「・・・あの日、集団啓示に見た人間族の男はお主か?」
「あぁ~俺とか俺の仲間はその啓示の夢見て無いんですよ。1度目の迷宮の啓示の夢も見て無いし。夢で啓示ってどんな感じ何ですか?」
「ふ、ふざけておるのか!」
「樹人族は、高齢になると感情が強くなるんですか?人間族とは逆なんですね。少し落ち着いた方が良いと思いますよ。・・・それはさておき、さっきの魔力陣の話なんですが、意味が分かりました」
「・・・どんな意味がだね」
「監視域で隔離管理されている樹人族達は、監視域の各区域内から許可無く外に出られ無いと聞きました。フィーラ市街地にも許可無く立ち入る事は出来ない。外出の許可があるからと言って、監視域の外に集まって話をしていたら目立つし兵士が駆け付けて来るでしょう。この魔力陣は、エルフィーローズ王国時代のカーフィリア長老家と王宮なりを繋ぐ転位陣ですね。そしてここはカーフィリア中家の魔力陣。だから中央を示す言葉が術式の中に無い。東と南と北はあるのにです」
「ますます、お主を帰す訳には行か無く成ったな」
「長老って昔みたいに4人なんですか?それとも各地区毎に1人ずついるんですか?」
「人間族の小僧がぁっ!・・・※△〇◇□●※※□〇◎▽□●※▲●□〇△◇※※□〇☆☆☆風属性上級魔術【トロンぺ】≫」
メルカッツ長老は、両手を身体の前に伸ばし親指と人差し指で三角を作り呪文を詠唱した。俺目掛け大きな竜巻が突っ込んで来た。
「馬鹿なのか!・・・」
俺は、意識を保ったままで拘束した男2人と、メッテとシオの2人に慌てて聖属性の結界を張った。
【サンミュール】☆1☆1 ≫ ×4
「こんな狭い部屋で何考えてるんだ」
「何故、平気でいられる・・・それに、何をした」
「拘束中の2人と女性2人に聖属性の結界を張っただけだ」
「わ儂の上級魔術を人間族風情が・・・」
樹人族が他族を見下しているのは分かってたけど、奴隷階級民として隔離管理されてる今でもその基本姿勢は変わって無いって事か。・・・それに、魔術の次元で考えたら今のは相当な威力だ。そう
「魔法に近い・・・古代魔術?」
「全ての言葉を解読出来るのではなかったのか」
「文字なら分かるんですけど、言葉は専門外なんです」
「お主。世界創造神創生教徒ではないな」
「そうですよ」
創造神様に否定された宗教に興味は無い。両親の影響かもしれ無いが信心深くも無い。
「なるほど。世界創造神創生教徒なら、今の下りは教義や歌で意味は分からなくとも言葉の響き位は知っているはず」
【神眼】・・・風属性魔術・・・『ブリーズ』『ヴィント』『トロンぺ』なるほど。【ゲデヒトニス】『ブリーズ』『ヴィント』『トロンぺ』 ≫
身体で受け止めたり、講習を受けなくても、スキル商人や協会から買わなくても、俺にはスキルを覚える方法が存在していた。【パーフェクト・コピー】に付帯する魔法達だ。
俺は、メルカッツ長老に指を向けた。
「何の真似だ」
「見ててください」
【ブリーズ】☆1(の250000011988分の1)☆1(の250000011988分の1)発動 ≫
メルカッツ長老目掛けて優しく弱い風がそよいだ。
「ブロウ・・・?嫌!・・・今のはブリーズ!?」
「精霊気って知ってますか?」
「精霊気? そんな事よりもだ。お主、詠唱はどうした・・・」
説明しても理解してくれないだろうし無視で行こう。
「物凄く加減したんですが、ブリーズで間違い無いみたいですね。さて、貴方は罰を受ける必要があります」
「罰だと?」
「そうです。樹人族4人と俺を殺そうとした殺人未遂の罪でです」
「ふざけた事を申すな。犯し奪い殺し続けたは人間族の業。樹人族や樹人族の長老である儂が裁かれるいわれ等無いわ」
本気でそう考えてる様に見えた。
「謝罪する気は無いんですね?」
「人間族に何を謝る必要があるか」
「分かりました。そこの男性2人よりは痛みを伴うと思います。貴方には調度良いかな・・・」
【レストリクシオン】☆1☆1 発動 ≫
漆黒の光がメルカッツ長老を包み込む様に広がり消えた。
「あっ!」
あれ?闇属性で拘束しただけなのに気絶?
メルカッツ長老は泡を吹き出し白目を向いて気絶した。
「長老様」
メッテさんは慌てて駆け寄ると、立ったまま気絶しているメルカッツ長老の状況を確認する。拘束しただけなので倒れたりはしない。
「大丈夫ですよ。拘束しただけです」
「泡を吹き出し気絶しているのですよ。大丈夫な訳が・・・」
「1433年間。我慢もし無い、他人の痛みも理解し無い、苦痛を伴う事をした事も無い。そんな感じだったんでしょう。カライ家は東家を支える家。ワワイの森の東側を事実上支配していた一族みたいだし」
「貴方はいったい何者なのですか?」
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――― R4075年7月18日(光)20:56
3つ程、風属性魔術を習得したが、貴重な30ラフンを損してしまった。霧は対岸のヴァルオリティア帝国の都市ククイムからも見えているはず。霧が濃すぎて今は上陸出来ないとしても、もうそんなに時間が無い。霧が晴れたと同時に樹人族の姿が消えている。創造神様と信仰を捨てた樹人族が神隠しに合う・・・
「霧が晴れるまでにサクッと済ませてしまいたいので、協力してください」
「わ、私が人間族にですか?」
「そうです。メルカッツ長老は残念な人でしたが、貴方までその残念さを真似る必要な無いと思います」
「・・・・・・分かりました。ですが、条件があります」
「何ですか?」
「3人の拘束を解除してください」
「それは構いませんが、たぶんそっちは無駄ですよ。拘束云々の前に気絶してるみたいですから」
俺は、聖属性を2人から、闇属性を1人から吸収し、3人の拘束を解除した。
「変な真似は抜きでお願いします。って、どうしたんですか?」
細マッチョな男の樹人族2人は、俺に深々と頭を下げ、短剣を両手で差し出した。
「メルカッツ長老の風の上級魔術に巻き込まれていたら私達は死んでいました。貴方は命の恩人です。これは命を救っていただいた方へ忠誠を誓う礼の証です」
あのまま当たっていたらって・・・俺が拘束したからですよねぇ~・・・
「えっと、皆無事で良かったです」
「ありがとうございます」×2
「いえ・・・」
とても複雑な気分です。
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「さてと、謎が解けたからには、ここからは急ピッチにサクッと終わらせましょう。この魔力陣を起動させます」
「貴方がですか?」
「俺しかいないと思いますけど」
俺はメッテさんから視線を外すと周囲を見回した。
「人間族の貴方では無理です。私達樹人族の中でも【MP】の高い者が10人~20人で、祈りを捧げ魔力を注ぎ指定した場所へ1人を送るのがやっとなのです」
あれ? 転位陣と比べると、随分と効率が悪いみたいだけど、そうなの?
俺は、魔力陣に手を翳し、風属性の自然魔素をほんの僅かだけ注いだ。
魔力陣は、文字や線や曲線や絵。あらゆる術式方式が眩しく強い黄褐色に輝き出した。
「魔晶石に自然魔素を装填する型じゃないから直接魔力陣に注いだけどこんな感じで良いかな」
「え?・・・今、手を翳しただけですよね?」
シオさんは、【MP】が高い方の樹人族だ。俺のやった事の凄さが分かるのだろう。
「これ効率の悪い魔力陣ですね。【MP】3万~5万を消費して、転位用に変換出来てる自然魔素が3000以下って何ですか?」
「何ですかと聞かれても・・・」
「樹人族の巫女やマージ10人20人分の【MP】を一瞬で注いだ・・・?そんな×〇△□▼※□〇◎□▽※□・・・」
メッテさんは、聞き取れない言葉でブツブツと何か呟いた。
「皆でまずは北の魔力陣へ移動しましょう。全ての魔力陣に俺の自然魔素が流れて起動してるはずなので、誰かが気付けば集まるはずです」
「ここから、全部に魔力を注いだのですか?」
「注いだのはここだけです。ここの魔力陣では抱えきれなかった分が接続可能な魔力陣に自然魔素を流しただけです」
「さぁっ行きましょう」
「分かりました」
「恩人殿の頼みお供しましょう」
「拙者もお供します」
「待ちなさい。貴方達!・・・私達全員で行く?私達は6人です。長老様をここに置いて行く事は出来ません」
「えぇ連れて行くつもりなので問題ありません。それに10人位は移動出来ると思うので、人数は気にしなくて良いと思います」
「10人?」
細マッチョな男の1人が 困惑するメッテさんに近付くと、
「おぉ~そうであった。メルカッツ長老は拙者が担ごう」
長老を強引に奪い取ると肩に担いだ。
「さぁ~メッテ殿先に行かれよ。レディーファースト。先を譲りましょう」
そしてもう1人の細マッチョな男は、メッテの背中を押した。メッテさんは魔力陣の中へ勢い良く入り転位し消えた。
この人達、力加減を知らないのだろうか・・・?
「さぁ~シオさんも一緒に行きましょう」
押さないんだ・・・子供には優しいのかもしれないな。
「俺は最後に行くんで、皆さん先にどうぞ」
「拙者は、恩人殿の安全を確保する為、恩人殿より先に参ります」
「・・・・・・えっと、俺最後に行くんで、それでお願いします」
そして、余り人の話は聞いていないみたいだ。
「心得た」
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――― R4075年7月18日(光)21:10
......と、言う訳で、ここから皆さんを俺の領地へ避難させたいと思っています。避難先で奴隷として働かせるとかそんな事はありません。人間族よりも獣人族や魔人族や皆さんと同じ樹人族の方が多い都市です」
魔力陣に書かれた北へ移動した俺は、扉の無い長方形の部屋にいる。おそらくここも地下だろう。転位した先の部屋には、老人型の男の樹人族が1人。黒いフードで顔を隠した男の樹人族が7人。緑色の大きな布で全身を覆い隠した女の樹人族が4人がいた。
中へ転位移動する為、祈りを捧げていたところ、魔力陣が眩しく輝き出し、俺達が次々に現れた。沢山人が転位して来る有り得ない事態に戸惑い現実を理解出来ないでいる者達だ。
「それを信じろと言うのじゃな」
「拙者は信じます」
「俺もです」
「私も信じます」
北の長老家に従っていた一族でワワイの森の北地域を事実上支配していた一族のハーゲン・ノイ長老の発言に対し、細マッチョな男2人とシオは俺を信じると言ってくれた。
気絶中のメルカッツ長老と介護中のメッテは、ハーゲン長老とその側近達と俺の話には参加していない。
「霧が晴れて、フィーラに船が入港次第した時点で騒ぎになると思うんです。なので出来れば急ぎたいんですが・・・」
「どうしてじゃね?」
急ぎたいと話してる人間に理由を聞くって・・・
「現在のフィーラは帝国市民も帝国軍も渡航者もそんまさるも気絶してるからです。気が付くのは深夜から早朝にかけてです。入港した人達は、港の検問所を通過出来ず、手続きも出来ません。なので騒ぎになります。ククイムから帝国の海軍が来る可能性もあります。彼等がフィーラに上陸した場合やっぱり騒ぎになります。帝国では1人でも多く樹人族を殺処分した者こそ皇帝に相応しいと愚かな噂が広がっています。・・・さて、皆さんはどうなると思いますか?」
「何故、気絶していると分かるのじゃね?」
「気絶させたのが俺だからです」
「フィーラの市街地と周辺の者全員を気絶させたと言うのじゃな」
「そんまさるが先に目覚めた場合、人間達が捕食される可能性があったので、人間達は建物の中に移動させてあります。それと、強制労働させられていた樹人族は、奴隷契約書を新規で更新して破棄して俺の領地に転位で移動させたので、こっちも心配する必要はありません」
「市街地で奴隷として働かされている女性達を全員救出したと言うのじゃな」
「1000人近く居たので時間がかかって、監視域に来るのが遅れたんです。遅れた挙句に、あの残念な長老に関わってしまって・・・」
俺は、メルカッツ長老をチラ見した。
「奴隷としてフィーラ市街地に連れていかれた女性達を助け出したという証拠はあるのじゃな」
証拠かぁ~
「契約書の破棄書類とかでも良いですか?」
「してその1000人分の契約書というのは何処にあるのじゃね?」
≪以前、行商に来た人間族が忘れていった沢山物が入る鞄があっただろう。あれでは無いのか?
≪良く見てみろ。あの人間族は鞄等持っていなだろうが!
1000人分の破棄書類(債務側)を見せれば良いのか?
『取り出し』奴隷契約書類・破棄を全て ≫
≪・・・道具・書類より『強制奴隷契約書・服従契約書・破棄書類』994部を取り出しました。
「書類です。確認してください」
≪何が起きたんだ?
≪宙から湧いて出て来たぞ!?
「ど、何処から出したのじゃね?」
書類の山が目の前に突然現れれば誰だって驚くだろう。
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「奴隷契約を破棄したのは事実の様ですな。ですが、これは彼女達の自由を約束した物では無い。フィーラからゼルフォーラ王国の領土で一番近いフォーラムですら130Km~140Kmも離れている。転位で1000人近くを移動させただとぉ~・・・誰が信じると思うのじゃね」
結局、こうなのるのか。俺の転位召喚・極が、個人のステータス情報を認識+所在情報を認識+系統系図情報を認識しているか、個人情報+顔認識(正確には体内に流れる自然魔素の流れ魔流系統を認識して発動している)って、微妙じゃなかったら一気に転位なり召喚しちゃうんだけど無理だしなぁ~・・・
『ねぇロイク』
ん?・・・
『ねぇロイク』
あぁ~・・・はい、なんでしょう?
『自然魔素がとても高い樹人族の女性が目覚めたわ』
おっ!・・・麻痺気絶からもう目覚めたんですか?
『えぇ』
耐性も高いって事ですね。加減して発動させましたが、それでも凄いです。
『この世界では、樹人族や魔人族は【MP】【INT】【MND】の数値が高いの。当然だと思うわ』
それで、その人がどうしましたか?
『アルが事情を説明したら泣き崩れたそうよ』
なるほど。
『それで、ロイクにお礼の気持ちを伝えたいと言っているそうよ』
お礼は不要だと伝えてください。・・・うん?・・・待てよ。
『どうしたの』
使えるかもしれません。その人の名前を教えてください。
『ジャスミンって名前らしいわね』
えっと、ジャスミンさんに、ちょっと監視域の上空に召喚するけど、戻す訳じゃ無い。監視域の人達を俺の領地に救出する為に呼び出すだけです。説得に協力して欲しいと、伝えておいてください。
『分かったわ。アルに伝えておくわ』
宜しくお願いします。
って、アルさんと直接話した方が早かった気がしないでもないけど・・・まっ良いか。
「皆さん。救出した女性が1名。目覚めたそうなので、その人に会わせたいと思います。ですが、フィーラ市街地や監視域内に戻すのは酷です。落ち着くまでは戻りたいという気持ちにならないと思います。なので、俺の魔術で少し離れた場所へ移動してそこで会って貰います」
≪ここから離れた場所だと?
「恩人殿よ。今から移動するのですか?」
「そうです。長老って24地区全部に居るんですか?」
「北の儂と東のメルカッツ、南のマクシミリアン、中のモーザスの4人だけのはずじゃよ」
「24地区に現在の長老4人と樹人族の住民がランダムに隔離管理されてる訳ですね」
「そうじゃね」
「後の2人は、南と東の魔力陣の方にはいますか?」
「・・・いや、東の魔力陣は、カトムーイの獣人族の監視域の#19。南は集落の廃墟じゃよ」
なるほど。北を選択したのは運が良かったって事か。
「それじゃ2人は何処に?」
「隔離管理されてから、200年近く会っていないのじゃよ」
えぇ~俺の長老説得からの皆で転位移動で樹人族の解放作戦終了って計画がぁ~・・・あれ?
「長老家のカーフィリア家が居なくなったから、事実上各地域を支配していたノイ家カノイ家ワノイ家ワワイ家が皆をまとめる為に長老として存在しているって話は理解出来るんですが、会ってもいない2家が長老をやってるって、201年も会って無いし、王族狩りは201年前に起きた訳だから、何でその2人が長老をやってるって言い切れるんですか?」
「帝国の兵士達が噂しているのを誰かが聞き、それを誰かが報告して来たからじゃよ」
何か違和感が凄いんですけど・・・月日の感覚とかが適当だってルードヴィーグさんも言ってたし、この手の感覚も適当なのかもしれないな。
「王族狩りが行われて、長老家が居なくなったら、指導的な立場で長老になるのは、この4家だけなんでしょうか?」
「貴族家の者も指導的な役割をしておるのじゃね」
「サヴィニア伯爵家とかですか?」
「お主は・・・何処まで儂等の事を知っておるのじゃね・・・いったい何者なのじゃね?」
「それは、後でゆっくり説明します。移動するにあたって、確認したい事があります。ここって何番ですか?」
「恩人殿。ここは#6です。エルヴァーリズ王国第2の都市・ファヴィール大公領公都ワルクの廃墟監視域です」
北も廃墟で南も廃墟で、東は獣人族の監視域ってもしかしてだけど・・・
「もしかしてですが、東も南も元は樹人族の都市だったんですか?」
「その通り、人間族共に王都を奪われ、王都以外の集落は全て焼かれた。そして我々はフィーラとワルク周辺に集められ隔離管理されたの訳じゃよ」
「人間族って言うか帝国に戦争で負けて帝国の属国になって、その後併合されて奴隷化したんでしたっけ?」
「同じ事じゃね」
≪そうだ。人間族がやった事だ。
「なるほど。今の原理が通じる貴方達にだからこそ、帝国は皇帝暗殺の罪を樹人族の男に被せたのかもしれませんね。皇帝を殺したのは樹人族。樹人族が犯人。奴隷階級民の樹人族を1匹でも多く殺処分した者こそ次の皇帝だ。ゼルフォーラ王国の王国民が考えている以上に、帝国の人間族と貴方達の溝は深いみたいです」
「何が言いたいのじゃね」
「別に含みはありません。そのまま汲み取ってください。そこの残念な人よりは若い様ですし出来ますよね?ハーゲン・ノイ長老。しかし1309歳ですか。何歳位になると老人タイプになるんですか?」
「何処で儂の名を・・・!もしやイヴァリュエイションを所持しておるのじゃな」
見た目については教えてくれないのか・・・あっ急いでる訳だしこれで良いのか。
「そんな感じです」
「して、証人は本当にいるのじゃな?」
「いるにはいるんですが、貴方達を説得する必要があるのかどうか疑問を感じています。・・・えっと残念感が凄いのはそこの残念な人のせいですかね?」
「何が言いたいのじゃね」
「そこの残念な人に限らず結局は、閉鎖的でコミュニケーション能力が低く、同族であっても他里や他地域の者とは努めて交流しない樹人族の価値観や感覚が、帝国の支配を容易な物にしたんだなと感じただけです。ランダムで監視域の各地区に隔離管理されたのなら、同郷意識の強い貴方達樹人族は集団の中で孤立する。結束とか連携って意識が弱い種族みたいだし・・・あっ!えっとですね。他意はありません」
「皮肉じゃな・・・」
「皮肉と言うか、これは事実を言ったまでです。なので正論ってやつです。・・・・・・さてと、一応、皆さんを説得しておきたいと思います。皆さんを少し離れた場所へ招待します」
≪招待?
≪何の話だ?
【転位召喚・極】『転位』ここ北の魔力陣のある地下の部屋に居る全員『場所』フィーラとワルクの中間点の上空1Kmに接触しない程度の距離を開けて ≫
俺の周囲から樹人族が全員消えた。
さてと、俺も行くか・・・って、あれ?
「あのぉ~・・・皆さんは?」
俺の目の前にシオが残っていた。
「皆、上空1Kmの所にいます。・・・どうして、シオさんは転位しなかったんでしょう?」
「分かりません」
顔も認識してるし、名前も分かってるし、直接転位なのにどうしてだ?・・・もしかして、シオさんみたいな人が他にもいるとか無いですよね・・・もしそうなら、ルーリン・シャレット領に準備した転位先10地点(約30万人ずつ)に転位移動で救出出来ないぞ。
「シオさんみたいな人って他にもいるんですか?」
「私みたいない人ですか」
「そうです。例えばですが、・・・・・・・えっと・・・シオさんは98歳なのに見た目が子供ですよね。他にも同じ様な人はいるんですか?」
「#3では私の家族でしょうか。他には会った事は無いです、両親の話では同郷や親戚が#1~#24にいるので、私の様な樹人族も居ると思います」
「何か他の樹人族達と違う所ってありませんか?」
「分かりません」
他に違う点かぁ~・・・【MP】と【INT】が異常に高い位か・・・長老達に聞いた方が早そうだな。
「直ぐ戻るので、ここで待ってて貰えますか?」
「分かりました」
「何かあっても、俺の聖属性の結界が護ります。逃げ回らず動かずにお願いします」
「分かりました」
「それでは」
【フリーパス】メッテさんの目の前に ≫
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