表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーアシュランス王国建国編ー
103/1227

2-22 始めての救出作戦①~救出作戦、少し前~

宜しくお願いします。

――― R4075年7月18日(光)08:40


 一夜明け、俺は、エルドラドブランシュ(領主館であり俺の家)の5階にある俺専用の執務室で、ルードヴィーグ・ダダさんと、メリア・ワワイバーン・ノイリアさんと3人で、30インチに拡大したタブレットの表示画面を見ていた。


「皇帝が死んだ途端に、この有様ですか」


 ルードヴィーグさんは、ヴァルオリティア帝国を中心に表示させた画面を見ながら呟いた。


「同じ国の兵士同士で殺し合うだなんて信じられません」


 メリアさんには、連絡鳩の手紙の内容もあって、エルドラドブランシュ(領主館であり俺の家)の来客用の間に泊って貰った。少しでも時間を無駄にしたく無いと考えたからだ。


樹人族(エルフ)の男が皇帝の暗殺を1人で実行し、その死を確認すると自ら命を絶った。・・・私には信じられません。樹人族(エルフ)には5つの自尊(・・・・・)の精神があります。高潔であれ、公平であれ、無欲であれ、博識であれ、勇敢であれ。劣る者へ施し与え品位を高めよ。自殺など樹人族(エルフ)には有り得ません」


「私の知っている5つ自尊と1つだけ違っている様なのですが、祖父からは、無欲、公平、平和、博識、高潔と教わりました」


「勇敢と平和はある意味では同じです。部族によって多少の違いはありますが、王家を中心とする西の一族や中の一族と基本的に解釈は同じです。私の先祖が従っていた南の一族は平和を勇敢。北の一族は公平を平等。南の一族は高潔を高尚と教育していたはずです」


「あれですよね。樹人族(エルフ)は、奪わない。関わらない。争わない。流されない。嘘を言わない。ヤーヤー宣言ですよね?」


「ヤーヤー宣言ですか・・・懐かしいですね。500歳以上の樹人族(エルフ)には、エアクレールングヤー(不干渉宣言)と言った方が通じ易いと思います」


「へぇ~そうなんですね。覚えておきます。5つの自尊とその、エアクレ―・・・なんたらはどう違うんですか?」


エアクレールングヤー(不干渉宣言)は、国家レベルの外交方針だったと認識していただいて良いと思います」


「だった?」


「はい。エルヴァーリズ(・・・・・・・)王国は、507年前に帝国に攻め込まれ、201年前に併合され国としては既に存在しておりません。・・・・・・あっ!メリア殿の前で私は何を・・・申し訳ございません」


「ルードヴィーグさん。頭を上げてください。私は、昨日、エルフィーローズ王国王家の最後の生き残りだと副王陛下より打ち明けられただけの、ただのパレスマージ(宮廷魔術士)です」


 ただのパレスマージ(宮廷魔術士)ですか・・・確か、パレスマージ(宮廷魔術士)隊に所属するのって大変な事だった様な・・・


「高潔の解釈を誤り、属国化した挙句、自治権を奪われ併合され、王家王族は処刑され国民は奴隷として隔離管理された。傲慢によってこれら全ては計画的に今に至ってしまったのだと私は考えています。当時の王家王族長老。指導的立場にある者の中に、メリア殿の様な方がおられたらエルヴァーリズ(・・・・・・・)王国には違う未来があったかもしれませんね」


「そういえば、ルードヴィーグさんは98年前に石化して、100年近い年月を一気に飛び越えたのに、石化が無かったみたいに順応してますよね」


 俺が石化を解呪した解呪士達は、ルードヴィーグさん以外は全て人間族だ。


「人間族と違って樹人族(エルフ)は寿命が長く月日の感覚が適当なのです」


 感覚が適当だからて・・・100年は誤差の範囲内って事?


「年上の方に年齢を尋ねるのは失礼な事だと祖父から教わってはいるのですが・・・お聞きしても宜しいでしょうか?」


「あぁ~それは、出産経験のある女性に対してで、私は男なので問題ありません」


 へぇ~。世の中、知らない事ばかりだ。


「私が生まれたのはリーファ歴3353年2月28日光の日。今年で722歳になりました。・・・ただ98年分を加算して良いものか少し疑問は残ります・・・」


「私の祖父よりも年上だったのですね」


 最初、神眼で見た時は俺も吃驚したのを覚えてます。


「失礼ですが、メリア殿の祖父殿はいつお亡くなりになられたのですか?」


「祖父は私が7歳の時に虚魔症(きょましょう)で亡くなりました」


 虚魔症(きょましょう)とは、【MP】の高い樹人族(エルフ)妖精族(フェアリー)や魔人族だけが発症する致死率の極めて高い病気だ。


「失礼ですが、メリア殿はお幾つですか?」


「今年の10月15日で24歳です。そろそろ本格的に婚活しないと・・・」


「まだ24歳なのですか!?」


「まだって、あっという間に三十路(アラサー)ですよ」


樹人族(エルフ)は201歳が成人です。24歳は人間族で例えるなら2歳程です・・・」


 ガールズトークならぬ、エルフトークって感じか・・・平均年齢1500歳の樹人族(エルフ)らしい会話だ・・・って、それどこらじゃ無かった。これじゃフォルティーナ達の事言えないや・・・



 脱線を繰り替えしながらも何とか話をまとめました。


 ①メリアさんの祖父の名前はヨーダさん。亡くなった時の年齢は669歳。7年前に他界。

 ②メリアさんの父親の名前はアルフさん。亡くなった時の年齢は299歳。18年前に他界。

 ③メリアさんの母親の名前はフーマさん。現在314歳(コルト生まれらしい)

 ④エアクレールングヤー(不干渉宣言)は、樹人族(エルフ)の王国エルフィーローズの国家としての外交方針姿勢の様な物で対外的な側面が強い。

 ⑤5つの自尊は、人間族の支配を受ける事となった当時の樹人族(エルフ)の長老達が、品位の体裁を保つ為、対外的な側面が強かったエアクレールングヤー(不干渉宣言)を、無理矢理解釈し対内的な側面の強い物へ置き換えた物らしい。時間と共に樹人族(エルフ)1人1人の精神論哲学、世界創造神創生教(そうせいきょう)の代わりとして定着してしまったそうだ。

 ⑥手紙の内容が事実であるならば、出来るだけ早く帝国に住む樹人族(エルフ)達を、保護解放するべきだ。

 ⑦皇帝を暗殺し自刃した樹人族(エルフ)の汚名を晴らせるなら晴らしてあげよう。

 ⑧エルフィーローズ王国の王家の最後の生き残りであるメリアさんの存在は現時点では隠しておこう。

 ⑨パレスマージ(王宮魔術師)隊を除隊し、表向きはルーリン・シャレット領聖都スカーレットの領主秘書官として働く。(俺の保護下で安全を確保。保護解放した樹人族(エルフ)をまとめる際の切り札になるとルードヴィーグさんの主張を通した形だ)



 因みに、昨夜、連絡鳩が運んで来た手紙の内容は次の通りだ。『・・・ヴァルオリティア帝国皇帝暗殺される。暗殺者樹人族男と断定される。暗殺者暗殺直後自刃する。皇位継承内戦状態にあり。緊急※次期皇帝に相応しい者。樹人族を多く殺処分した者。皇帝の無念を晴らす者。大量虐殺の危険あり※・・・』



――― R4075年7月18日(光)10:20


 ゼルフォーラ王国の王都モルングレーのパレスエリアにある中央議事堂で開かれていた中央議会が、非領地貴族171名による共同提議を、賛成171、反対77(欠席含む)で採択した。


 ゼルフォーラ王国の中央議会は合議制である。ただし、最高意思決定機関では無い。


******共同提議に参加した貴族******


 ≪賛成票を投じた家≫


 【子爵家】共同提議の中心家『3家』

      中央議会に書面参政

      【シーモア子爵家】

      【キャンベル子爵家】

      【パーシー子爵家】


 【名誉子爵家】(一代貴族)『49家』

      中央議会に書面参政

 ※世襲を認められると、『上級子爵家』※


 【名誉男爵家】(一代貴族)『93家』

      中央議会に書面参政

 ※世襲を認められると、『上級男爵家』※


 【男爵家】中央議会に書面参政『26家』

      【ディビッド男爵】

      【ベイオール男爵】

      【ボルニ―男爵】 他


***********************


 ≪反対票(欠席を含む)を投じた家≫


 【ボードワン天爵殿下】   欠席反対

 【エンゾ天爵殿下】     欠席反対


 【デェイビュー公爵】    欠席反対

 【トゥージュー公爵】    欠席反対

 【ミィストゥリィー公爵】  欠席反対


 【アヴィル侯爵】      欠席反対

 【ヴィクナン侯爵】     欠席反対

 【トニナス侯爵】      欠席反対

 【パマリ侯爵】       欠席反対

 【ブオミル侯爵】      欠席反対


 【スラリス辺境伯爵】    欠席反対

 【デュポン辺境伯爵】    欠席反対

 【マーガレット辺境伯爵】    反対

 【フェトロング辺境伯爵】  欠席反対


 【アルカド伯爵】      欠席反対

 【イリノイ伯爵】      欠席反対

 【ダリウス伯爵】      欠席反対

 【チューナー伯爵】     欠席反対

 【モンロー伯爵】        反対

 【ヘルネー伯爵】      欠席反対

 【ラカコア伯爵】      欠席反対

 【ラミア伯爵】       欠席反対

 【パマリ伯爵】         反対


 【カルゼノイ子爵】       反対

 【ヌー子爵】          反対

 【ベルタン子爵】        反対

 【ロチルド子爵】        反対

 【レクイニスキ子爵】      反対

 【ヴィリエ子爵】        反対

 【パール子爵】         反対

 【ヴィロード子爵】       反対

 【マググリード子爵】      反対

 【プジョー子爵】        反対

 【エルゼ子爵】         反対

 【パンフリー子爵】       反対

 【シャロン子爵】        反対


 【カラフ男爵】         反対

 【ボーゲン男爵】        反対

 【アンカー男爵】        反対


 【名誉子爵】『16家』     反対


 【名誉男爵】『21家』     反対


 【俺】           欠席反対


***********************


 その採択を受け、国王は御前会議を召集。部分的な修正が加えられたものの非領地貴族171名による共同提議は、国王イヴァン・ルーリンの名の下、公布される事となった。


――― R4075年7月18日(光)15:00


 公布内容は次の通りである。


 ゼルフォーラ王国は、ヴァルオリティア帝国の恒久的平和の実現及び包括的解決を支持する。

 

 ゼルフォーラ王国は、正創生教会を通じ食料支援及び医療支援を友好的且つ平和的に行う。


 ゼルフォーラ王国は、王国軍及び王国騎士団に所属する団体及び個人のヴァルオリティア帝国の内戦終結の為の戦闘行為への自由参加を禁止する。


 修正前


 ゼルフォーラ王国は、ヴァルオリティア帝国の恒久的包括的解決を目指し尽力する。


 ゼルフォーラ王国は、人道支援及び食料軍需支援を平和裏に行う。


 ゼルフォーラ王国は、ヴァルオリティア帝国の内戦の終結を目的とした支援要請に応じる用意がある。


 こんな感じだ。



――― R4075年7月18日(光)15:10


 俺は、エルドラドブランシュ(領主館であり俺の家)の5階にある俺専用の執務室で......


*********会議出席者*********


 ルードヴィーグ・ダダ

 メリア・ワワイバーン・ノイリア


 祖父エンゾ

 父バイル

 母メアリ


 マルアスピー

 アル

 トゥーシェ

 フォルティーナ

 パフ

 アリス

 サラ

 テレーズ


 デェイビュー公爵

 トゥージュー公爵

 ヴィクナン侯爵

 モンロー伯爵

 ヘルネー伯爵

 ラカコア伯爵 

 ジェルマン・パマリ伯爵

 シャロン子爵


***********************


......と小規模な会議を開いていた。


 それは、ゼルフォーラ王国の貴族領軍私兵隊や領地を持たない貴族達の私兵が、デェイビュー公爵領フォーラム、トゥージュー公爵領サーフィス、ヴィクナン侯爵領リッツ、ヘルネー伯爵領新領都サーカルフール、ラカコア伯爵領サーカス、シャロン子爵領シェリーベル、そして聖都スカーレットの港から、船でヴァルオリティア帝国に渡航出来ない様にする為の密約をまとめる為だ。


「100%封じ込める事は不可能だと思いますが・・・それで宜しいのでしょうか?」


 シャロン子爵は、場違いな会議に参加していると思っているのだろう、落ち着きが無い。


「はい。介入する意思が無い事を帝国側に態度で見せる事が目的です」


「先日の御前会議で決定した。奴隷階級民として隔離管理されている樹人族(エルフ)達の件はどうするつもりですか?帝国が内戦状態に陥った今だからこそ出来る事があると思いますが」


 アラン・トゥージュー公爵は、何となく楽しそうな口調だ。俺は待ってましたとばかりに切り出した。



「バレなきゃ面白そうだがよぉっ!それって本当に出来んのかぁー?」


 俺の計画を聞き、最初に発言したのは父バイルだった。


「確かに、公布内容には違反していないな!だが、ロイク。トミーサス王国との戦争に参加してはいけないという創造神様からの神授の内容は、国同士の争いに創造神様の御力を利用してはならないというものだ。相手が帝国に変わっただけで、これは国同士の争いだぞ」


「エンゾ天爵殿下。副王陛下を始めとした数人の方々に対して創造神様が神授によって参加を禁止なされたのは、トミーサス王国との戦争であって、ヴァルオリティア帝国の名は神授には無かったのですよね?」


「ディラン殿。帝国の名は無かったが、ロイクが創造神様より神授していただいた能力。その能力の恩恵を受けた者に対し、創造神様は戦争への参加を控える様にと神授されました。もしもの話ですが、創造神様からの神授を破ったとしてロイクが罰を受ける事にでもなったらどうされる?」


「そ、それは・・・・・・ですが、・・・」


 祖父エンゾは、創造神様からの神授を意識し慎重な発言を繰り返し、ディラン・デェイビュー公爵は言葉を何度も詰らせた。


「ヴァルオリティア帝国に住む奴隷階級民として隔離管理されている樹人達(エルフ)は約320万人。獣人族は約250万人。小人族は約190万人いるそうです。殺されるのが分かっていて見過ごす事は出来ません」


「だが、ロイク・・・」

 

「エンゾ天爵殿下、デェイビュー公爵殿。・・・帝国の内戦終結の為に動かず、帝国との戦争を回避する事を優先し、万が一戦争になってしまった場合は参加しない。ロイク殿はこの3つを守って動く限り、創造神様からいただいた神授と御前会議での約束を破った事にはならない。私はこの様に考えます。戦争には参加しないのですから創造神様から神罰を神授されるとは思えません。それに、現時点で助かる可能性の高い樹人族(エルフ)達を見殺しにしたとあれば、神罰を神授される者は、現状を認識しているにも関わらず放置した我々全員になるでしょう」


 アラン・トゥージュー公爵は、やはり楽しそうだ。 


「戦争になった時点で、回避の要請を無視した事になりませんか?」


 ゴドウィン・モンロー伯爵は、額の汗を拭きながら、アラン・トゥージュー公爵の顔色を伺っている。


「戦争回避は最優先事項であって必ず回避しろと言う採択ではなかったはす。陛下もロイク殿に戦争を必ず回避しろとは仰っておられませんでした」


「ですが・・・私は王国軍の長官として、帝国との戦争回避は絶対だと考えています。ですので、戦争が回避出来るのであれば、ロイク殿に最大限の協力をするつもりでいます」


「ゴドウィン。私は政治面での内政や外交は得意なのだが、軍事面での外交は残念な事に最も苦手としている。軍事面での外交の専門家としてはどうなのだ。実際のところ、内戦状態の帝国が樹人族(エルフ)達を保護したのがゼルフォーラ王国だと断定したところで、それを理由に戦争にまで発展するものなのだろうか?」


 祖父エンゾは、幼い頃から身体が弱く武に関してはずぶの素人だ。だが政治家としては優秀で、軍事力の抑止効果を理解していない訳が無い。


樹人族(エルフ)を多く処刑した者こそ皇帝に相応しいという愚かな風潮をどこまで真に受け皇位継承争いが続くかにもよるでしょうが、帝国の内政が安定するまでは開戦を口にする者はいないと考えます」


「それならば、ロイクの計画を実行に移したとして、問題は無いと言う事か?」


「判断に難しいところです。先の話になりますが新皇帝を擁立した帝国に、バレずに事が進むのであれば問題ありません。ですが、裏で副王陛下やゼルフォーラ王国が糸を引いていたと露見した場合・・・」


「なぁっ!結局んとこぉーバレなきゃ良いんだよなぁっ!ロイクッやれるんだろうっ?」


「ロイク君。都市全体を霧で覆うなんて事は可能なのかい?」


 これって・・・ジェルマン殿と親父の援護射撃?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ