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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーアシュランス王国建国編ー
101/1227

2-20 初めてのお願い②と、王国改造計画②。

宜しくお願いします。

――― R4075年7月17日(邪)11:00


 エルドラドブランシュ(領主館であり俺の家)ファミリーエリア(北地区)の3階にある応接の間に、非戦闘型(NBT)のJOBのみを所持している、アリス王妃、リナ王女殿下、アルセーヌ王太子、エメ前王妃、クリオ伯爵夫人(王女殿下)、祖父エンゾ天爵殿下、祖母イネス妃、ローラ妃を残し、俺達は屋上へ移動した。


 エルドラドブランシュ(領主館であり俺の家)の屋上は、視認付加の結界に2重で覆われており、浄化と修復の魔法が施されている。俺が全力で魔法を発動させたところで一時的に結界を破壊するだけで特に被害は出ない。そういう造りになってるそうだ。


 人間種の個体レベルの上限が999になった事と、JOBによってはレベル修練度の上限が10では無く99である事の詳細説明を終えた俺は、スキルの発動についての説明をしたうえで、実際にやって見せる事にした。


「フォルティーナ。ミスリル製の人型の的を俺の前方20mに出して貰えるかな」


「分かったね」


≪パチン


 俺の前方20mの位置に横1列10体のミスリル製の人形の的が出現した。


「ありがとう」


『神純度ミスリルの的だね。普通の人間の攻撃ではビクともしないね』


 なるほど。調度良いです。


「今からあの的に、JOBサンシュヴァリエ(聖騎士)のスキル【尖突の剣風(せんとつのけんぷう)(修練度)1と5と10を撃ち込みます」


 俺は、ヴァリアーブル(変数)の短剣を神竜の堅鱗の調帯(腰に巻いたベルト)の後に取り付けたケースから右手で抜くと構えた。


「ロイク殿は、サンシュヴァリエのスキルを扱えるのかね?」


 サラ・ルーリン王女殿下の父親で、剣聖ボードワン・ルーリン天爵殿下の長男、JOBサンシュヴァリエ(聖騎士)のバルタザール・ルーリン王子は、サンシュヴァリエでも無い俺がどうしてスキルを扱えるのか疑問に思ったのだろう。


「俺のJOBエロー(英雄)は、神授で転職する特殊なJOB以外の全てのスキルを扱う事が出来るんです。まだレベルが69なので99になった時の状況まではわかりませんけどね」


 神授のJOB以外は、認識した時点で所持している状態になる。スキルも本職に設定したJOB以外の物も扱える。何て言え無いです。


「素晴らしいJOBですな。父上もサンドラもそうですが、神授JOBという物は計り知れない物ですな。実演の前にもう1つだけ確認させていただきたい」


「はい」


「聖騎士の技には、大剣技と剣技と槍技はありますが、短剣技はありません。尖突の剣風(せんとつのけんぷう)は大剣技の1つです。それを短剣で行うのでしょうか?」


「そのつもりです。盾で対象を殴り付ける様なスキルを弓矢で行う事は出来ませんが、武器の形状が違い過ぎない限りだいたいどの武器ででもスキルは発動します。ただ、心得の(修練度)によって【STR】の補正値が異なるので、心得を所持していない武器はお奨めしません・・・それでは始めます。まずは、(修練度)1です」


≪シュゥッシュゥッシュゥッシュゥッシュゥッグゥワァ―ングゥワァ―ンシュゥッシュゥッシュゥッ


 5枚の風の刃が回転しながら襲い掛かり切り刻み突き刺す。だが、20m先の神純度のミスリルは傷1つ付いていない。


「今のが、(修練度)1で・す・・・か・・・私の(修練度)8より遥かに・・・」


「比べる為なので、次は5、その次は10と続けます」



 (修練度)5の時は刃が60枚強で、(修練度)10の時は200枚強。ダメージの違いは、(修練度)1が仮にダメージ5なら、(修練度)5は80位で、(修練度)10は300位はあるだろう。


「こんな感じで、レベルと言いますか、修練度を調整する事が可能です」


≪・・・・・・


 皆の反応が薄い。


「ロイク殿。今の2発もサンシュヴァリエの初級スキル尖突の剣風(せんとつのけんぷう)なのですよね・・・?」


「はい。1、5、10と(修練度)を上げ発動させてみました。10っていっても加減したのであんな感じです。的も壊れてませんし」


「そ、そうですか・・・」



 その後、魔術使い系JOB以外の皆に下げる感覚を覚えて貰い。何人かは解散前に会得した。



――― R4075年7月17日(邪)13:00


 皆を送り届けた後、久々に御前会議に出席した俺は、迷宮の管理者として幾つかの提案をした。イヴァン国王には4つ叶えて欲しい願いを事前に伝えてある。


 提案1


 信仰の迷宮、地の迷宮、水の迷宮、火の迷宮、嘆きの迷宮(邪)。この5つ迷宮の受付の横に転位陣を設置。この転位陣を利用し迷宮管理詰所に転位移動し攻略や修練を目的に迷宮に入場する者からは出入通行管理税を徴収しない。迷宮から帰還した後、迷宮管理詰所から集落へ移動する場合は税金の対象にして良い。


 これは、迷宮の攻略と修練を促進させる事と、迷宮内でのみ取得可能な素材を、この世界に流通させる事が目的だ。


 提案2


 迷宮内で取得した素材アヌトン(黄金虫)系の外骨格は、受付(王国軍)が必ず買い取り、迷宮の管理者である俺に引き渡す。買取価格は、素材1個品質状態不問=10万NL。俺が王国軍から引き取る時11万NL。また、買取素材や買取価格は状況に応じ修正する。


 これは、王国軍への配慮でもあるが、現在微妙な状況の中で取り扱いを控えているこの世界の武具や道具の向上が目的だ。


 提案3


 迷宮内の地図や罠や魔獣の情報を、王国、王国軍、騎士団、各貴族家、貴族領軍私兵隊、各協会は共通管理する。迷宮内で他のパーティーを襲撃したり、攻略や修練を妨害した者には罰を与える。


 これは、提案1に近いが、迷宮の攻略と修練を促進させる事が目的だ。来たる日に備え協力し合う姿勢を養わせたいとも考えたが、人間種同士で争い合わなければ今はそれだけで良い。


 提案4


 回復役の居ないパーティーの入場を制限する。


 これは、回復役のいないパーティーの未帰還数が属性制限の解除以降、急激に増えた為だ。


 小さなトラブルや改善等は、引き続き管理局に任せる事にした。



「管理事務所より外へ出ない場合に限り、出入通行管理税を免除。迷宮内で入手した1部の素材を王国軍が買取、迷宮管理者へ売却。迷宮内の情報の徹底した共有。回復役不在パーティーの迷宮内への入場を制限。副王陛下。この4項目に間違いありませんか?」


「はい」



 ミスリル鉱脈の報告と、坑道に設置する労働者と警備監視者用の転位陣と各騎士団事務所に設置する転位陣。坑道に設置する運搬用の転位陣とパレスエリア内に設置する転位陣。教会に設置する教会間転位陣ネットワーク。


 パレスエリア内に設置する人間専用の転位陣と許可を得た者の屋敷に設置する転位陣。この転位陣は俺の計画通り、王家、王族、外戚王族、3公、5侯、4辺伯、9伯、重役の者は許可では無く義務として設置する事になった。ただし、当主以外の者が利用する為には、国王陛下から許可を得て、俺が登録する必要がある。ファルダガパオの箱は、手持ちでは無く荷物だけを転位陣で転位移動させる事が出来る為、国宝級の褒美として国王が管理する事になった。転位陣の設置が義務付けられた家には、国王陛下よりファルダガパオの箱が1個下げ渡された。自分で準備した箱を下げ渡され微妙な気分だ。


 ミスリル鉱脈の運用は、俺が転位陣を設置してからになる為、可能な限り早く運用出来る様にと御前会議で催促ではなく嘆願という形式で可決し、国王陛下から勅令で嘆願されるという不思議を経験した。


 運用開始の前に俺の4つの願いを予め文章化した御前会議は、俺が願う2つに頭を抱える事となった。4つの内2つは、迷宮に関する税金免除と素材の強制買取(管理者権限だけでは解決出来ない事項を含む)だったがすんなり了承されたが、残りの2つは判断が難しいそうだ。


 残り2つの内の1つ。


 貴族領間で行う経済協定を、国王王国直轄領とルーリン・シャレット領間で締結したい。国王王国直轄地或いはルーリン・シャレット領に本社本拠地を置く商人商家商会の交易関税の撤廃。取引税は関税では無い為これに該当しない。


 国王王国直轄領と経済協定を締結する事は、王国と貴族領が経済協定を締結すると同じではないのかという意見が出た為会議は難航。


 残り2つの内のもう1つ。


 ヴァルオリティア帝国フィーラで隔離管理居住している樹人族(エルフ)達を、ルーリン・シャレット領で受け入れる際に想定されるヴァルオリティア帝国側からの要求を全て無視する。


 トミーサス王国と現在戦争中であり、その上ヴァルオリティア帝国と戦争になる恐れがある。回避可能な事は回避するべきだと会議は難航。



「ホラセイラ山脈と、東モルングレー山脈と、サス山脈のミスリル鉱脈は、了承して貰えた時に転位陣を設置しに行く事にします」


「副王陛下。宰相として申し上げさせていただきます。設置した上で王国としての方針に従う。それが国政に関わる者の責務であり、人としての道理だと考えます」


 人としての道理と、国政の責務か・・・


「パトリックよ。道理と申したが、それは些か物言いとしては納得がいかぬな。私は剣聖として剣の道に生き、天爵として国政に長らく関わっている。ロイク。いや副王が居なければ、ミスリル鉱脈を発見する事もも、それを採掘する事も、それによって利益を得る事も無い訳だ。道理と言うのであれば、副王にミスリル鉱脈のある山脈に坑道と転位陣を設置しゼルフォーラ王国にミスリル鉱石を流通させる義務は無い」


「叔父上殿。私も同じ考えです。副王が孫故に庇っているのではありません。正街道の敷設、領都や副都市の建設、港や要衝の整備。正創生教の教会や大聖堂や神殿の建立。ミスリルを抜きにした状態での転位陣のネットワーク構築。2tまで転位移動で運搬出来るファルダガパオの箱。【MP】の回復効率を大幅に改善した回復道具。そして、皆に見せた個体レベルやJOBのレベル。ステータス値やスキルを確認出来るカードタイプの魔導具。これらに対する褒美もまだです」


「うむ。叔父上。兄上。世もそれは思う。副王は、次々と偉業を成し遂げた。・・・それに、農務省からの報告にも驚いた。今年の秋の穀物の収穫量は昨年比の約2倍。来年の春の穀物の収穫量は今年の春の約3倍。来年の秋の収穫量は、今年の予定分の約5倍。つまり昨年の秋の10倍の収穫量だ。以降12倍~15倍の収穫量が継続するそうだ。これはあくまでも穀物だけの話だ。野菜や果物や魚介や畜産や酪農。城壁や街道や港の整備によって齎される利益や成長は世の想像を上回る物だった」


「ですが、陛下。それにエンゾ殿下、ボードワン殿下。国が成長したからと言って戦争を回避しない理由にはなりません」


「宰相閣下。1つ宜しいでしょうか?」


「トゥージュー公爵殿。公爵殿も戦争回避の重要性を理解されているはず」


「私は、国家間で争う愚かな行為には反対します。ですが、旧教と帝国による奴隷の隠蔽や、帝国が樹人族、獣人族、小人族達を強制的に奴隷階級として隔離管理している現状は由々しき事態だと考えます」


「公爵殿よ。何か勘違いされていませんか?我々はゼルフォーラ王国の人間です。それは帝国への内政干渉」


「私達は創造神様より、来たる日に備える様に神授をいただきました」


「来たる日に備える事が、帝国の奴隷を助け帝国と戦争する事なのですか?」


「来たる日を創造神様は悪と表現されました。私達の周りから大きな悪行即ち悪を取り除き来たる日に備える事は創造神様の御意思だと考えます」


「他国の大きな悪行を取り除く為に、無駄な戦争を引き起こす事は悪では無いと?」


「パトリック。アラン。お主達の意見は分かった。世は他の者の意見も聞きたいと思うのだが、どうだ?」


「はっ!陛下の思うがままに」


「陛下。このトゥージュー。副王陛下の意見を全面的に支持致します」


「トゥージュー公爵殿。まだ採決の時では無い。急がれるな」


「他に意見は無いか?」


「陛下、副王陛下、宰相閣下。宜しいでしょうか?」


「うむ。ダヴィッド申せ」


「はっ!ミィストゥリィー領はサンガスに水の迷宮を抱えております。迷宮と転位陣の運用管理はとても魅力的な話です。また、港の整備が進んだ貴族領が増えた事で......(省略)」



「ダヴィッド!?・・・これは失礼ミィストゥリィー公爵も副王陛下に賛成すると申されるのか?」


 ダヴィッド・ミィストゥリィー公爵は、パトリック・ミィストゥリィー宰相の長男だ。


「はい、先程も申し上げました(省略した部分)が、ボードワン天爵領の街道敷設と領都建設は、海上ルートに偏っていた王国南東部の農業と物流を改善する事に繋がります。ミスリル鉱石の採掘も大切ですが、ミィストゥリィー領としては、海岸線に沿ってデェイビュー公爵領フォーラムへの街道も敷設していただけるのであれば救出に賛成致します」


「その件ならば、少し前に副王より提案があって、ファーラムから街道を伸ばし我がバルタザール領を経由しブリーチまで正街道を敷設しないかと計画書を受け取っているぞ」


 バルタザール王子は、少し自慢気に発言した。


「バルタザール王子。ミィストゥリィー公爵殿。その提案でしたら私も副王陛下よりいただきました。デェイビュー領としては願ったり叶ったりの話だ」


「街道や城壁と引き換えに戦争を黙認するというのか?」


 パトリック宰相は、バルタザール王子、ミィストゥリィー公爵、デェイビュー公爵の3人に、叱責するかの様に、強い口調で言い放った。


「宰相閣下。それは違います。黙認ではありません。積極的に協力する意思があると明確に表明します」


 だが、息子ダヴィッド・ミィストゥリィー公爵は、パトリック宰相の言葉を否定した上で、更に強い口調で俺に賛成した。とっても良く似た親子だ。


「アヴィル領としてもフォーラムへ続く街道の整備は長年の悲願でした。ただ、賛成するにあたり、領都ブリーチの港湾の整備や港湾運営のお知恵を拝借出来ればなと考えております」


 ようは、港を作って欲しいって事ですね。



 御前会議に参加する。国王陛下、王太子、王族領地を持つ者達と、宰相、3公、5侯、現軍務大臣マーガレット辺境伯爵家、中央騎士団総括団長ジェルマン・パマリ伯爵。全面的に賛成し協力の意思を採決の前から表明したのは、王太子、剣聖殿下、王兄殿下、オーレリー王子、バルタザール王子、アラン・トゥージュー公爵、パマリ侯爵、国政に参加する様になったブルーノ・ブオミル新侯爵、ヴィクナン侯爵。マーガレット辺境伯爵、ジェルマン・パマリ伯爵の11名。条件付きで賛成すると表明したのは、ディラン・デェイビュー公爵、ダヴィッド・ミィストゥリィー公爵、アヴィル侯爵、トニナス侯爵の4名。パトリック・ミィストゥリィー宰相だけが最後まで反対の姿勢を崩さなかった。


 最終的に、俺を含めた賛成16、棄権1で可決する事となった。パトリック宰相はイヴァン国王や俺や他の皆に対し、反対の意思を明確にし、そして敵対しない選択をした。


 王国にとって、大切な存在なんだと何となく理解出来た。



――― R4075年7月17日(邪)16:00


 昼食を済ませた俺は、賛成票と引き換えに約束した様々な事項の作業処理を開始した。


 海に面した領都の港湾整備は、諸外国との貿易の為にも必要な事だ。大型船の入港を可能にしておいた方が良いと考えた俺は、ヴィクナン侯爵領の領都リッツ。シャロン子爵領の領都シェリーベル。トゥージュー公爵領の領都サーフィス。ラカコア伯爵領の領都サーカス。トニナス侯爵領の領都リリス。ミィストゥリィー公爵領のサンガス。アヴィル侯爵領の領都ブリーチ。デェイビュー公爵領の領都フォーラム。8件の港湾整備を実行した。


 王都モルングレーのルーリン湖とルーリン川の船着き場と、俺の領地に新しく建設した副領都シャレットのルーリン川の船着き場の整備も改めて実行した。


 正街道を沢山敷き、港と街道の整備の一環で、ラミア伯爵領内に外壁で囲んだ集落を建設。聖人教会と適当な大きさの屋敷を設置した。屋敷は仮でも正規でも構わない領主館のつもりで設置した。ヘルネー伯爵領内にも外壁と聖人教会と領主館用の屋敷。そして港を整備した。剣聖ボードワン天爵領とオーレリー王子領とバルタザール王子領にも外壁と聖人教会と領主館と港を設置した。新たに5つの領都がゼルフォーラ王国に登録される事となった。登録はR4075年7月18日(光)の正午15時だ。


 4つのミスリル鉱脈の坑道には、人間専用と荷物専用の転位陣を設置した。ドラゴン()達と建設的に平和的に事が進んだ場所と、拳を交えながら一方的に事を進めた場所があったが、明日以降の御前会議で報告する時に詳細を説明するつもりだ。


 港の整備と補修にあたり、王家、王族、外戚王族、3公、5侯、4辺伯、9伯、1子爵(シャロン子爵家)、1男爵家(アンカー男爵家)の領主館の一画に転位陣の間を設置した。王都のパレスエリア内にも予定通り転位陣を設置したが、これは正規の建物が完成するまでの臨時の転位陣施設だ。


挿絵(By みてみん)



 ヴァルオリティア帝国によって併合された3つの王国。『樹人族の王国の王都だったフィーラ』『獣人族の王国の王都だったカトムーイ』『小人族の王国の王都だったダカイラ』。


 条件を全てクリアした俺は、風の民の集落の祠、風の迷宮があるフィーラの隔離管理地域に派遣した元解呪士でルーリン・シャレット領の領主直属の諜報員樹人族のルードヴィーグ・ダダに連絡を付け、樹人族の王国の王族の末裔を名乗る者に接触する事にした。


――― R4075年7月17日(邪)22:40


 フィーラの郊外。森の中に作られた監視域の中で一番大きな居住地の近くに移動した俺は、ルードヴィーグ・ダダこと『コードビーンズ』と合流した。


「コードビーンズ。まずは、奴隷階級の居住地監視域の状況を聞きたい」


「お待ちしておりました。アドミン様」


 アドミンとは、俺のコードネームの事である。


「ヴァルオリティア帝国の監視警備状況は?」


「監視域を監視する兵士はおりません。フィーラの市街地に樹人族が侵入しない様に外壁や見張塔に配備されている程度です」


「ヴァルオリティア帝国の兵士達を気にする必要は無いって事か・・・」


「ただ、フィーラの市街地に奴隷として連行され強制労働を強いられている者が多数存在しているそうなので、その者達をどの様に救出するのかが問題です」


「なるほど・・・急ぎの報告はありますか?」


「夜になりましたら、エルヴァーリズ王国の王族の末裔を名乗る者とその側近達と会う事になっております」


「エルヴァーリズ王国?」


「エルフィーローズ王国の事です」


「あぁ~なるほど」

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