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すっごいキレイな、ヒューどっかーん!  作者: 健康っていいね
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第九話 「行きたい場所と居たい人」

行きたい場所があった。


みんなで話す先の予定。

あれが見たい、あそこに行きたい、あの場所を知りたい。


どんなに期待しても、実際行ってみないと何事もわからないのだけれど、ただ一つの確信がある。

『キミがいっしょなら、どこへ行っても楽しい』と。


とつぜん始まるホラー回!!

すっごいキレイな、ヒューどっかーん!

9話 「行きたい場所と居たい人」です!!

よろしくお願いします!!!

「さっ!続きを見よ!」




 ハナが大切だと言ったサッカーボールの描いてあるページをめくっていく。




 すると、とある絵がぼくらの目についた。




「これは……なんかに照らされてる人たちか??」





 ハルヤが首をかしげる。




「あぁこれはね、『花火を見ている人たち』だよ!」




 ハナは笑顔でそう答えた。





 数ページに渡る『花火を見ている人たち』の絵。




「…………ん?」





 パラパラとハナがページをめくっていく途中に、今一瞬だけ……。





 笑顔で花火を見上げている人たちの中に、たった1人だけ、泣いてるヤツが居たような……。





「…………まさかね」





「ん? ヒビト今なんか言ったか?」




「えっ? いや、なんでもないよハルヤ!」





 ヒカリは目を輝かせてハナに聞いた。





「あっ!じゃあ、花火の絵もあるのかな!?」




「うふふ、ざんねん! 次のページはね~」





 パラリ。





「ウチの近くで見つけた四つ葉のクローバーでした!」





「「「ずこー!!」」」





 ぼくらはバラエティ番組の芸人さんのように、ワザとらしくズッコケた。




「は、ハナ、花火を見に行って花火の絵を描かなかったの?」




「そーなの。この絵描くのに夢中になってたら、花火終わっちゃっててさぁ~」




 ページをもどして、えへへ……とほっぺたをかくおっちょこちょいなハナちゃん。




 うん、かわいい。




「でもさ、今度もまた花火大会があるんだよね!そのときにはちゃんと花火を描くよ」




「あっ。それってとなり町のやつ??」




 いつか見た、花火大会のチラシが頭をよぎる。




「あぁー!それわたしとハルヤは毎年行ってるよー!」




「だな。去年のマジでキレイだったな〜」




 ……ということは、ハルヤもヒカリもハナも、あの日の花火大会を見に行ったのかな。





 だったら、今度は。





「それじゃあさ、みんなでいかない? 今年の花火大会!」





 ぼくは、ちょっとだけ勇気を出してみんなに言った。



 少し間が空いて、ヒカリが答える。




「いいねー!! まぁわたしは元よりそのつもりだったけど!」




 そしたら、ハルヤも笑って言った。




「さんせい!ってかオレもそのつもりだったし!」




 その時のことを思い浮かべながらヒカリは続ける。




「花火の前の日はさ、その町にある海で遊んで~、近くでお泊まりして~、次の日にみんなで花火を見るの! どうかな、ヒメも!」




 キラキラした目をしているヒカリに対して、ハナは少しだけザンネンそうに、それでも笑ってこう答えた。




「花火は行けると思うんだけど、海とかお泊まりとかはムズカしいかも。すごく行きたいけど、わたしの身体のこともあるし、お母さんがいいって言うかわかんないから……」




 あぁそっか……! それは仕方ないよね……!


 と、ぼくらは少し落ち込んだ。




 どんなにハナといっしょに遊びたくても、ムリなことは言えない。




 日差しに弱い身体の大変さとか、白いせいで目立つこととか、もちろんそのお母さんがハナをどれだけ心配してるかも、ぼくらは実際、それがどれほどのモノかよく分かっていなかったからだ。




 でも……それでもぼくは……。




「ハナは、海やお泊まりも行きたいんだよね?」




「うん、みんなみたいには遊べないかもだけど、描きたいものがたくさんあるし、すごく楽しそうだし……」




 みんなの暗い気持ちをなんとかしたくて、ぼくは声を大きくして言った。




「じゃあさ!! 今度みんなで、ハナのママにお願いしにいこうよ!『ハナを海とかに連れて行きたいです!』って!!!」




 みんなが、おどろいたように目を見開いてぼくを見た。




「な、なんだよ!ぼく変なこと言ったか??」




「いや、いやいや、いいね!それ!!わたしも賛成だよ!なによりわたしもヒメの水着が見たい……ぐへへぇ!」




 ヒカリはとてもあぶない顔をしていた。




「ぼ、ぼぼぼぼぼぼくにはそそそそそそんなやましい気持ちはございませんから!!!! そうですからね、ハナ!」




「あはははは!そうなんだ……ごめんねヒビト君、行くにしてもいつもみたいな厚着をしていくと思う。たぶんね」




「あやまんなくていいから!!見たいけどヒカリみたいなやましい気持ちはないから!!」




「ヒビト、今ちょろっと本音が出てたぞ」




 あきれた顔したハルヤにツッコまれた。




 期待なんてしてない……。




 ぼくはそんなこと思って言ったんじゃない……!




「でもまぁ、オレもさんせーだ。にしてもあのヒビトがこんな思い切ったこと言うなんてビックリだ。ちゃんと育てたカイがあったってもんだぜ」




 ハルヤはうでを組んでウンウンと一人でうなずいている。




「ハルヤはぼくのなんなんだよ!?」




 するとヒカリは気持ち悪いニヤけ顔をして言った。




「ヒメのママさんか~キレイな人だろうな~! そうね、ヒメをわたしに下さいってお願いしに行くんだから、賄賂とか持ってって三人で土下座すればなんとかなるでしょ!」




「そういうアレをお願いしに行くんじゃねぇよ!?ってかワイロ言うな。せめて差し入れって言えや……」




 全くもってハルヤの言うとおりだ。




 てかいつもヒカリは人の話を聞いてるフリしてちゃんと聞いてないから、タチが悪い。




 気を取り直して、ぼくはハナに確認する。




「それでハナ、みんなでお願いしに行くっていうのは、大丈夫そうかな?」




「うん、お母さんがなんて言うかはお母さんしだいだけど、それは大丈夫だと思う!」





 あぁ、よかった。





「わたしのためにみんながそこまでしてくれるなんて……もうしわけない気持ちもあるけど、それ以上にうれしいよ……!! ありがとうみんな」






 ハナはやっぱり笑ってるのが一番だ。








 そしてぼくも。







 今度の花火は、笑って見たいからなぁ。





「どういたしまして! 差し入れ、何がいいかな……甘いものとかか?」




 ハルヤはさっそく差し入れのことを考えているみたいだ。




「いつかみんなでそれも買いに行かなきゃねー!」




「あっ、そうだ!行きたいところと言えばもう一個あった!!」




 ヒカリがとつぜん手を挙げる。




「ん?どこに行きたいの?ヒカリちゃん。」




 と、ハナは首をかしげた。




「ふっふっふ、それはね~!」








 ☆☆☆☆☆








 とても、めずらしい光景を見た。




「今日はわたしのわがままに付き合ってくれてありがとうございます。シショー!あん?ヒビト今なんつった?」




 …………!!!!!!!!?????????




 あのヒカリが、礼儀正しく人に頭を下げている!!!????




「ってぼくはまだなんも言ってねーよ!!」




 ぼくら四人は今、シショーことハルヤのパパさんの車にゆられている。




「いやいや、かわいい弟子の頼みだ。車の運転くらいはよろこんで引き受けるさ。ところで、僕からも連絡はしてあるけど、ハナちゃんとヒビトくんは親御さんに許可もらってるよね?」




 運転しながらシショーさんがぼくらに聞いてくる。



 先に答えたのはハナだった。




「はい。大人の方が付いてるならと、お母さんがOKしてくれました!」




「ぼくもだいじょーぶです。むしろママは


『オバケと会ってそのへなちょこメンタル鍛えてこい!』


 と送り出してくれました。自分の息子をなんだと思ってるんだって感じです」




「はははは!そうかそうか。それにしても、なつかしいな!心霊スポットとか、僕も昔はよく行ったもんだよ」




「パパ、その話もう三回は聞いてる」




 と、助手席にいる自分の息子からツッコまれるシショーさんであった。





 ただいま、19時30分。





 ちょうど夕日が頭をかくし、辺りがすっかり暗くなったこの時間に、ぼくらはとある場所へと向かっている。




「なんか出るといいな~!オバケトンネル!」




「いたらいいねー!わたしもオバケさんのこと描きたい!」




 この女子二人組は、怖いという気持ちを一体どこで無くしてしまったのだろうか。



 いや、元からそんなものついていなかったのか。




 ヒカリが、



『この前通りかかったさ、オバケトンネルに行きたい!夜中に!』



 と言い出したとき、



『え!?オバケ!?描きたい!』



 と真っ先に食らいついたのはハナだった。




「それにしても、昨日の今日でパパがOK出してくれるとは思わなかったよ。ありがとうな」




 何かの本を読みながらハルヤが言った。




「まぁね。心霊スポットは夜中に行ってこそなのは分かるし、場所も少し遠いから。


 こんな時間に子供たちだけでそこまで行かれるのは流石に心配だし、ならいっしょについて行った方が親分としては気が楽だ」




 ここからじゃ顔は見えないけど、運転しながらシショーさんがほほえんでいるのが分かった。




 本当に、少ししか話したことはないけど、それでもすごいやさしそうな人だなって思う。




 あのヒカリがそんけいする気持ちもなんとなく分かるなぁ。




 ちなみに、この人のことはぼくやハナも『シショーさん』と呼んでいる。




 ヒカリにずっとそう呼ばれてきたから、『ハルヤパパ』呼びよりその方が違和感ないとシショーさんが言っていたからだ。




「おーばけーが見ーたい♪おーばけーが見ーたい♪」




「わーたしーも見ーたい♪おーばけー描きーたい♪」




 ハナとヒカリは楽しそうにとんでもない歌を歌っている。




「…………」




 後ろのイスにはハナをはさむようにして、ヒカリとハナとぼくの三人がすわっている。




「ヒビト、さっきから顔赤くしてだまりこんでどうしたんだよ?お前も歌えよ!」




 2つとなりにいるヒカリがハナごしにぼくの顔をのぞいてきた。




「やだよ!歌わないよ!?」




 言えない。



 ただでさえハナとこんな近くにいるだけでヤバいってのに、歌ってゆれてるハナがぼくにぶつかってきてもうほんとココロがヤバいのがヤバいなんて言えない。




「ヒビトくん、もしかしてオバケさんがこわいの?」




 ぶっちゃけ、なに食わぬ顔でそんなこと聞いてくるハナさんが一番こわいっす……。




「べ、べつにここここわくないよ!!ホントにだよ!そうだよなぁハルヤ!」




「き、急にオレに話をふるなよヒビト!いや、こわいもなにも、居るわけないだろおばけなんて……」




「「えーー!!」」




 同時にブーイングの声を上げる女子二人組。




「夢の無いこと言うなよクソハルヤ!」




「そーだよハルヤくん!きっとオバケさんはいるんだよ!」




「ははは!そうだぞハルヤ!夢のないヤツはモテないぞ~?」




「パパまで何言ってんだ!?っつーか、オバケに夢なんてあるかっての……」




 そういえば何かのアニメで、オバケやしきとかでイケメン主人公がこわがっているヒロインをリードしていい感じになるってシーンがあったと思うけど、やっぱりあれはウソだったんだな。



 "女は強し"とママが言っていた通りだ。




 ぼくがそんなことを考えているうちに、どうやら目的地についたみたいだ。






 ☆☆☆☆☆






「それじゃ、僕は車で待ってるから。あまり遠いとこまで行っちゃダメだぞ?」




「「「「はーい!」」」」




 車から降りてみると、余計に外が暗くなったように感じた。




「ここの先にオバケトンネルがあるんだよね……?」




 たくさんの木にかこまれたその細い道はなかなかにブキミで、正直めちゃくちゃこわいや。




「うん。この細い道を越えたところに、最近じゃ使われなくなったトンネルがある…………」




 あれ、なんかヒカリの声に元気がなくなってる気がする。




「何か出そうでいいね~!!よし、しゅっぱーつしんこー!!」




 ハナはむしろ、車の中に居たときよりも元気になってる気がした。




「オバケナンテナイサ……オバケナンテウソサ……」




 ハルヤはさっきからぶつぶつジュモンをとなえている。




「よし。じ、じゃあ行くか」




 道を知ってるヒカリから、真っ暗な細道に入っていく。




 その後ろからルンルンしてるハナ、足がふるえてきたぼく、もうすでにヤバそうなハルヤが続いた。




 道に入ってからはだれも喋らないでしずかになっていた。




 こんなにしずかだと、よけいにナゼか冷たく感じる空気が気になってしまう。




 たまらずぼくは口を開いた。




「お、おいヒカリ。車ではあんなにうるさかったのにどうした?さっきからだまっちゃってるじゃないか……!」




「う、うるせぇな!べつにオバケなんて怖くねぇし!もし出てきたらわたしがギッタギタにしてやるし!!」




「ダメだよヒカリちゃん!わたしがオバケさんを描くのが先だよ!それにギッタギタにしちゃったらかわいそうでしょ?」




「あ、あぁ!!そうだよな!!ヒメはやさしい子だなぁ……アハハは…………」




 気がつくと、ルンルン気分なハナ以外はお年よりの人みたいに、腰を曲げておそるおそる歩いていた。





 それから3分くらい歩いて、ぼくらはオバケトンネルの入口にたどりついたのであった。




「うわぁ~!!!!」




「「「うわぁ…………」」」




 思わず口をそろえてしまうほどに、おそろしくこわい空気がそこには流れていた。




 きっとハナ以外はみんな同じ事を思っているはずだ。




「なんで、なんで、ぼくたちはこんな時間にとこに来てしまったんだろう……」




「ホントだよ!! ヒカリのせいだぞ……オレたちの人生がここで終わっちまったらどうしてくれるんだ!? 明日のニュースで『オバケトンネルに向かった四人の小学生が行方不明に~』とか言われたらどうしてくれるんだ!?」




 ハルヤは半泣きでヒカリの肩をつかんでゆらす。




「アハハぁ~ニュースかぁ~有名人だねわたしたちぃ~よかったねぇ~」




 ヒカリはヒカリで、もはや何かをあきらめてしまっているみたいだった。




「それにしても、なんでったってこのトンネルは明かりの1つもないの……節電ってやつ…………?」




 ぼくがギモンを口にすると、それに応えたのはハナだった。




「きっと暗いほうがオバケさんたちが住みやすいから、明かりをつけてないんじゃないかな!」




「あぁ~!なるほど~!そういうことか~!なっとくだね~!」




 ぼくもなんか、ハナ様の心やさしいお考えを聞いて何かをあきらめるしかないと悟りました。




「よしっ!じゃあみんな進んでいこう!」




 ライトで前を照らしながらトンネルの中へ進んで行くハナ様。



 ぼくらはもう何も言わずに、ハナ様の後ろにひっつき虫みたいにくっついて、ついていくしかなかった。





 ぶっちゃけると、ハナが居なければぼくらは引き返していたと思う。





 しかし、だれも『ここで引き返そう!』とは言うことはしなかった。




 なぜかといえば、まずぼくはハナにカッコわるいところを見せたくはないからだ。



 ヒカリとハルヤとぼくだけなら絶対にここで帰っていたと思う。



 そしてヒカリも似たような理由なんだろうけど、他には自分が言い出しっぺだから、というのもあるんだろう。




 ハルヤはというと、もう多分ハルヤの頭は何かを考えることを止めてしまっているんだと思う。




「おーばけー会いーたい♪おーばけーが見ーたい♪」




 ハナはゴキゲンな歌を口ずさみながら、ズンズン前へ進んでいく。




「ね、ねぇ、このトンネルどこまで続いてるの??」




「わかんない……そんな長くなかったと思うけど……っていうか、なんかカベのシミとかが全部なんかの顔に見えてヤバいんだけど…………」




「ばっ!!変なこと言うなヒカリ!ぼくもなんかそういう風に見えちゃうだろ!!」




「オバケイナイオバケイナイオバケイナイオバケイナイ」




「ってかハルヤ、さっきからそのぶつぶつ言ってるのやめて……お前のそれが一番こわいのよ…………!!」




「ヱ? オバケイナイ? ウンイナイ! オバケナンテイナイヨ!」




「ヒビト~助けてくれぇ、ハルヤがもうダメだ……完全に壊れてやがる……」




「ぼくに言われたってこまるんだけど……」





 トン……トン……と、ぼくらの足音がよく聞こえる。




 すると、いきなりハナは足を止めた。




「はぅぇっ!!!!????」




「わぁぁあっ!!!!!」




「ぎゃいいいい!!!!!!」




「きゃあぁっ!!!!!」




 最初にヒメイを上げたヒカリにびっくりしたぼくの声にびっくりしたハルヤにびっくりしたヒカリがもう一度叫んだ。




「ふざけんなよ!ぼくヒカリの声にびっくりしたんだけど!!?」




「だだだって!!ヒメがいきなり止まるんだもん!!!」




「そ、そうだ、どうしたのハナ?」




 ハナはそっと、前の方を指差して答える。




「いた」




「「「えっ」」」




 ぼくらはハナの声に反射して思わずその白い指の先を見てしまった。




 みんな頭では、そこに見たくないモノがあるとわかっていたのに。






 そこには、長い黒髪に白い服を着たダレかがいたんだ。






 声は、出なかった。






 ホントにヤバいやつを見たとき、声が出るよりも先に身体が動くということを初めて知った。











「はぁ……はぁ……あれ…………?」




 ぼくらは猛ダッシュでトンネルの入り口までもどってきていた。




「オバケだったのか……あれは…………あんなにオバケイナイっつったのになんでいるんだフザけんな……はぁ……はぁ」




「わからないけど……絶対に見ちゃいけないやつを見たな…………ってあれ??ヒメは?」




 明るいところまで来て、ぼくもようやく気づいた。




「ハナが……いない!?まだ中に!?」




「マジかよ!??」




「ヒメ……まさかホントにアレを描いてるってのかよ!?とにかく、つれもどさないと!!」




「あぁ……!」




 トンネルの中にもどろうとするぼくとヒカリをハルヤが止めた。




「まて、お前ら。もしあれがホントにオバケだったらオレたちだけで中にもどるべきじゃない」




「はっ?でも急がないとハナが……!!」




「落ち着けヒビト!こういうときは、大人がいた方がいい。もどってパパを呼んでこよう!」




「でも……!!そんなことしてるうちにハナが…………!!!」




「みんなお待たせ~!」




「「「えっ?」」」




 マジであせっていたぼくらのことなど知らず、スケッチブックをかかえた白い少女はとても満足そうな顔をしてもどってきたのだった。






 ☆☆☆☆☆






 車内にシショーさんの笑い声がひびく。




「ははははは!!!!よかったじゃないか!オバケさんに会えて!!あっははは!!!」




「「「よくない!!!」」」




 さわやかに笑うシショーさんの発言に三人でツッコむ。




 すると、もうしわけなさそうにハナが言った。



「いやぁ、みんなごめんね??心配かけちゃって」




「ホントだよ!!!ぼくハナがいなくてめっちゃこわかったんだから!!」




「うんうん、とくにヒビトがめっちゃあせってた」




「そ、そういうヒカリだってあせってたじゃんか!!」




「まぁまぁ、こうしてハナちゃんはもどってきたことだし、もうその辺にしてやれよ」




 ハルヤは、まるでさっきまでのことが無かったかのように、助手席でまた本を読んでいた。




「それで結局、ハナちゃんはオバケさんの絵を描けたのかい?」




 シショーは運転しながらハナに聞いた。




「はい!ちゃんと描けました!たしかこのへんのページに……」




「まってハナ!!!」



「ウェイトウェイト!ヒメ!!!!」




 ハナのとなりにすわっているぼくとヒカリはほぼ同時にハナの手を止めた。




「だ、ダメだハナ!こんなところで見ちゃダメだ!」




「そうですわよヒメ!そのページをここで開けちゃいけないですわよ!!」




 ダメというか、ぼくもヒカリもあのおそろしいオバケの絵を、ましてやとんでもなく上手いハナクオリティーのオバケなんてとても見たくは無かった。




「えぇー!オバケさんいい人だったよ!?ちゃんとポージングしてくれたし、わたしに『君はココロがキレイだね』とか言ってくれたし!!」




 なんだそのオバケ!?



 ポーズとかワケわからないし、ハナに口説き文句を言うとかもっとワケわからない……。




「あっはっは!面白いオバケだなー!そんなことなら、僕もいっしょに行けばよかったかな」




「「「あ""?」」」




「お、おぉ……こわいこわい……冗談だから三人とも、そんなニラまないでくれ…………」




 そのあともそんな感じで話しながら、ぼくとハナとヒカリはそれぞれの家まで送ってもらって無事帰れましたとさ。




 めでたしめでたし。




 …………って、ホントにめでたいのか?






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