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すっごいキレイな、ヒューどっかーん!  作者: 健康っていいね
20/23

第二十話「夜」

昼は、誰かと向き合い生きる時間。


夜は、自分のココロと向き合う時間。


外が明るいと、ともだちの笑顔がよく見える。


周りがくらいと、ココロの声がよく聞こえる。



だから、夜に誰かと過ごしていると、いつもよりもっと本音で話したくなる。



だからどうか、今だけは君のココロの声を、ちょっとでいいから、聞かせてくれたら嬉しいな。


 

 海で遊び疲れたぼくらは、お腹が空いたのでとりあえずハナたちと合流し、海の家で焼きそばを食べることになった。




「「「「「いただきます!」」」」」




 みんなでいっしょに、いい匂いのするソース焼きそばをすする。




「うまっ!!!!」



「美味~!!!」



「おいしい!!!」



「うめ うめ うめ」




「いい食いっぷりだなー! にしても海の家の焼きそばってなんでこんな旨いんだろうな!」




 みんなで、目の前の焼きそばにがっついた。




 マジでうまいっ!! これやば!!!!




 遊びつかれていたからかな、焼きそばがこんなにうまいなんて!!!!




「ハナさ、ここに来る前『焼きそばすごい楽しみ!』って言ってたよね! その気持ちが分かった気がするよ!」




「おいひいね!ひひろくん!!」




 口いっぱいにやきそばをつめこんでめっちゃニコニコしているハナを見て、いっしょに来れて本当によかったと思った。




「はいはい! 食レポしまーす!!」




 いきなりヒカリが勢いよく手をあげた。




「お前にはムリだ。今のうちにやめとけ」




「はぁーーーー、ハルヤは相変わらず舐めてんなーーー! 約束された未来の女子アナを舐めてんなーーー!!!」




「おめーが女子アナをなめてんだろ!!」




 ハルヤのツッコミをスルーしてヒカリは食レポを始めた。




「わぁー!見てくださいやきそば麺のこの茶色いボデー! 日焼けした男の色をしてます!」




「美味しくなさそうだな」




「さぁいただきます……ズズズズゥ…………わぁー!美味しいですね!! コクのあるソースの深い味!!」




「こいつとりあえず”コク”って言っときゃいいみたいに思ってるだろ」




「まるでわたしの心までソースの海で洗濯されているよう!!」




「心真っ黒になるだろそれ」




「さっきからヤジばっか飛ばしてんなオス二人ィ!!!」




 シショーさんがぼくらをなだめるように言った。



「まぁまぁ、言葉選びはともかくなかなか上手かったと思うぞ? ヒカリは将来女子アナになれるんじゃないか?」




「ほらー!!シショーも言ってるでしょ! 」




「ヒカリちゃんは、アナウンサーさんよりお笑い芸人さんじゃない?」




「ピギャフッ!!」




「な、なんだ今の宇宙人が体内からバクハツされた時みたいな声は!」




「……ヒ、ヒメの言葉に貫かれ……わたしの五臓六腑が破裂……しました…………」




 ヒカリはユラユラとイスからくずれ落ちてしまった。




「えぇ!!? ヒカリちゃん!大丈夫!!? さっきの食レポもおもしろかったよ!!??」




「ゴキョプッ!!」




「やばい!ヒカリの息が薄れている!!」




「だれか!! だれかライフセーバーさんを!!!」








 ☆☆☆☆☆








 楽しい時間は、すぐに過ぎちゃうらしい。




 ぼくらがいっしょにいる日は、いつもいつも、夕方5時のチャイムが鳴るのが早すぎると思うんだ。




 今日だってそうさ。




 さっきまでみんなで焼きそばを食べてたと思ったら、空はいつの間にか暗くなっていたんだ。




 旅館にもどったあと、みんなで温泉に入ったんだ。




 実はぼく、温泉も初めてだった。




 熱くて最初はなかなか入れなかったけど、ガンバって入ってみると、すごい気持ちよかった!




 シショーさんは、いつもはしないようなちょっと難しい話をしてくれた。




 この世にはいろんな物があって、人の数だけ考えがあって、人の数だけの夢があるんだって教えてくれた。




 シショーさんがはなしてくれたことは、ずっとココロの中にしまっておこうと思う。




 温泉から上がって部屋に戻ると、すごい料理が出てきた。




 お肉、お刺身、天ぷら、茶碗蒸し、お漬け物とかいろいろ!




 誕生日じゃないと食べれないようなすごい美味しいのが、次々とお皿に乗ってでてきたんだ!! ほんとにみんなでこの旅館に来れてよかった!!




 帰ったらママに自慢してやろうかな!!





 ママ、スネちゃいそうだけど……。





 みんなでお腹いっぱいになったあとは、歯をみがいて、寝る準備をはじめた。




 広い畳の和室に、みんなでお布団をしいていく。




 1日動いていつも以上に疲れたし、ぐっすり眠れそうだと思ったら、"戦争"が始まってしまった。




 キッカケはヒカリだった。




 やわらかくて大きいまくらを、思いっきりハルヤに投げつけたのだ。




 そこから二人はまくらを投げ合い、それを見て笑っていたら、ぼくの顔にも流れ弾が飛んできた。




 と思いきや、ぼくにまくらを投げつけた犯人はハナだった。




 そこからはもう大乱闘。みんなで笑いながら、騒ぎながらまくらを投げ合った。




 しばらくそんなことを続けていると、誰かが投げたまくらが、ふすまを開けたシショーさんの顔面に直撃したんだ。




 そこから四人してシショーさんにうるさくするなと注意された。




 戦争がようやく終わった……と思いきや、シショーさんが部屋を出ていった後すぐに、また争いが始まってしまう。




 案の定、すぐに戻ってきたシショーさんにまた怒られてしまった。




「三回目は無いからな?」




 と言ったシショーさんの顔はなかなかに怖かった。




 今度こそ、ぼくらはおとなしく寝ることに…………。








 ☆☆☆☆☆








 部屋を暗くして、みんなでふとんを寄せ合って寝っころがる。




 窓の外は紫色の星空。




 耳をすますとみんなの寝息と波の音が聞こえた。





 あれだけ動き回って、疲れているはずなのに、ぼくはなかなか眠れないでいた。




「パパ、マジで怒るすんぜんだったな……あぶなかった……」




「ハルヤ、起きてたのか」




「ヒビトも起きてたんだな」




 なかなか寝付けないぼくとハルヤは、二人を起こさないようにひそひそ話した。




「にしても、なんたって夜は寝かせないぞーとか言ってたコイツが真っ先に寝てんだよ」




 ハルヤは自分の横の布団で寝ているヒカリを指差した。




「ほんとそれ、暗くしたらソッコー寝たよね」




「まぁ今日は一番動いてたからな~」




「ハナも、もう寝てるのかな」




 ぼくは寝返りをうって、横で寝ているハナを見てみた。




「はぅっ!!!」




 ハルヤがぼくのリアクションに声を押さえながら笑っている。




「どんな……どんな声の上げ方だよ」




「いやだって……ヤバかったからさ……」




「ヤバかったて。オレの横はバカのマヌケ面だ。ずっと見てられそうだ」





「ねぇ」




「なに」




「ハルヤってさ……」



「?」




「ヒカリのこと、好きなの?」




「…………」



「ハルヤ……?おい、寝るな!」





「寝てねぇよ!






 まぁ…………できることなら、ずっと一緒にいたいなぁとは……思ってる」




「……クビガクッ!!」




「わっ!!!」




「えっなに?!」





「スピー……スピー……」




「マジでビビった、ヒカリ起きたのかと思った……っておい、なに笑ってんだヒビト」




「……くっはははは……いや、ごめん今めっちゃ面白かった」




「面白くねーよ……もう寝ようぜ、明日は花火大会だ」




「そうだね。 楽しみだなぁ、みんなで来れて、ホントによかった」



「……だな。 それじゃ、おやすみ」




「うん。おやすみ」





 それからぼくは目をつむって、みんなの寝息と波の音を聞いているうちに、すぐ眠ることができた。







 ☆☆☆☆☆







「んん……うぅ?」




 もう朝かと思ったぼくの目が勝手に開いた。



 けれど、窓の外はまだ暗かった。




「今……何時?」




 壁にかかっている時計を見てみる。




「4時か、変な時間に起きちゃったな……ってあれ?」




 横のふとんで寝ていたハズのハナの姿がどこにも見えない。




 どこ行ったんだろう。トイレかな?



















「おそいな」




 時計の針は4時20分を指している。




 それでも、ハナが戻ってくる感じは少しもしなかった。




 なんとなく、いやな感じだ。




「さがしに行こう」




 ぼくは、二人を起こさないようにゆっくり部屋を出た。








 ☆☆☆☆☆







 旅館の中を一通り探した後、くつ箱の中にハナのクツだけが無くなったことに気づいた。




 ぼくはクツのカカトをふんだまま外へかけ出した。




「どこに行っちゃったんだろう……」




 周りをみわたしてもハナはどこにも見えない。 とにかく、走って探してみよう。




「はぁ……はぁ……ハナー!! どこー!!」




 いない。声を出しても返事がない。




 どうして……なんで……?





「ハナー!! ハナー!!!」





 走って、走って、走って。




 いつの間にか、海まで来てしまった。




「あれは……!」




 砂浜に、1人たたずむ白い少女が見えた。




「ハナ!」




「ヒビトくん……?」




 ぼくは彼女の元へ急いでかけよった。




「探したんだよハナ! あぁーびっくりした!」




「ごめんね、ヒビトくん。心配かけちゃって」




 ハナは申し訳なさそうにあやまった。




「見つかってホントによかったよ。 どこか行っちゃったのかと……」




「どこか……か」




 ハナはそうつぶやいて海の方へ向き直すと、砂浜にこしを下ろした。




「みんなに何も言わないで、遠くに行ったりはしないよ」




 ぼくも同じようにハナの横に座りこむ。




「そっか。それなら……」




「もしそうなるならちゃんと、"バイバイ"はするから」




 彼女は、遠い遠い海の向こうを見つめている。




「ハナは、どこかへ行ってしまうの?」




「…………うん。どこかわからない所に行っちゃうかもしれないんだ」




 ハナは、こっちを向いて少しさみしそうに笑っていた。




 しずかな波の音が、よく聞こえる。




「みんなとも、もう……」




「"ぼくが絶対にハナを守る”」




「!?」




「そう、約束したでしょ? 忘れちゃったの?」




「…………忘れてないよ。あの時、すごくうれしかったもん」




「ハナがどこか遠くへ行っちゃうのなら、ぼく追いかけるよ。君の元へたどり着くまで」




 ハナを悲しませたくなかったから、ぼくはニカッ!っと笑った。




「ヒビトくん……」




 そのつもりが、ハナは泣いてしまった。




「あぁゴメン! 泣かせるつもりは……!」




 どうしよう、なんで泣いちゃったんだろう!? ぼくはどうすれば……!



 あたふたしていると、いつのまにハナがすごい近づいてきていた。



「……おバカなヒーローさん」







 彼女の、やわらかいなにかがぼくのほっぺたにふれた。







「あ……え……ハナ?」




「お母さんが言ってた……初めての"ちゅー"は大切なんだって」




 あぁ、え…………"ちゅー"…………されたの……か…………今……マジか…………?




「えっ……えっ……えぇ!?」




「イヤだった……?」




 不安そうに聞いてくるハナの顔は、リンゴみたいに赤くなっていた。




「い、いや!イヤじゃないよ! ちょ、ちょっとびっくりしちゃって!」




 ぽふんっ。




 白くて小さい何かが、むねに飛び込んできた。




「バカ」




 そして白くて小さい手でぼくの身体をぽんぽん叩いた。




「バカバカバカバカ」




 ぼくは、彼女の白い身体をやさしくだきしめた。




「……うれしかったよ。ありがとう、ハナ」




 そういうと、ハナはその手を止めておとなしくなった。




「うん」




 1分くらいそうしてじっとしていると、おもむろに彼女がささやいた。




「…………今度は、ヒビトくんからしてね」




「……えっ」




 ぼくらはゆっくりと身体を離す。




「ねぇ、ヒビトくん、ちょっと歩こう?」




 そう言って、彼女は白い手を差し出した。




「うん、そうしよう」




 ぼくはその手をつかんで、二人でゆっくり歩き出した。






 一歩ずつ、一歩ずつ、歩幅を合わせて。






「ねぇヒビトくん、初めてあったときのこと覚えてる?」






 一歩ずつ、一歩ずつ、やわらかい砂浜の上を。





「うん、ちゃんと覚えてるよ。あの時、勇気をだしてよかった」







「わたしも、絵を描いててよかった」







 一歩ずつ、一歩ずつ、波の音を聴きながら。







「あの後すいとうを顔にぶん投げられたけど」





「あはははは……あの時は…………ごめんなさい」







 一歩ずつ、一歩ずつ、二人で歩いて行く。







「このまま時間が止まっちゃえばいいのに」









「ぼくもおんなじこと思ってた」







 横を見ると、嬉しそうに歩くハナがいる。




 ふいにこっちを向いた彼女と目が合って、なんかどっちも恥ずかしくなっちゃって、二人で笑っちゃった。




 しばらく歩いていると、彼女はいきなり足を止めた。







「ねぇ、ヒビトくん」





「なぁに? ハナ」





「おとといさ、どうして電柱の前で泣いたの?」




 あの時か……ついこの前のことなのに、ずいぶん昔のことに思える。





「うーん……"悲しかったから"? あっ!ハナあれ!」





 ふと目を向けた先には、真っ暗な夜空を切り開く太陽さんがいた。





 暗い夜と、まぶしい日の明かりの境目が見えて、とんでもないほどにすごい景色だった。





「ねぇ見てハナ! すごいよあれ!日の出だ!!」











「それなら、もしかして…………」




「ハナ……?」




 横を見ると、日に照らされ、目を大きく開けながら涙を流すハナがいた。









 そして彼女は、まるで手からこぼれ落ちる砂のように――――




「ハナ……? ハナ!!!!」





 ――――意識を失い、倒れてしまった。





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