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すっごいキレイな、ヒューどっかーん!  作者: 健康っていいね
13/23

第十三話「おねがい」

思い出を作った。


他の誰でもない、ぼくらだけの思い出を。

同じ時に、同じ場所にいて、同じことを思う。


それが、ぼくらのともだちとしての絆を深める。


それは決して無くならない。

いつになっても。どこにいても。何があっても。


決して、決して無くならない。


すっごいキレイな、ヒューどっかーん!

13話「おねがい」です。


大変長らくお待たせしました。よろしくお願いします。



 


 花火大会まで、あと5日。





 太陽さんはとっくに顔をかくして、辺りはもう真っ暗だ。




 明かりのないひよこ公園では、お昼にあれだけ動いていた遊具たちも、おやすみしているように見えた。





「さぁ……着火するぞ……?」




 そんな夜の公園で、シショーはチャッカマンを持ってワルそうな顔をして言った。





「ば、バッチこい!!」





 ヒカリは息をのんで火を待つ。




 見ているぼくたちまでドキドキした。





「3……2……1……」




「「「「ファイヤー!!」」」」





 みんなのかけ声といっしょに火がついた。





 シュー……シュボボバチバチバチ!!!





 線香花火は、気持ちの良い音をたてて火花を散らす。




 真っ暗だった公園をともす小さな光のつぶ達は、ぼくらをめちゃくちゃコーフンさせた。





「わぁぁあ……!! 炎上してる!!!」





 感想はひどいけど、花火を持っているヒカリが一番楽しそうだ。





「ぼくもやりたい!!」





「オレも!!」





「わたしもー!!」





 ぼくたちはそれぞれ花火を持ち、シショーの前にならぶ。





「ハイハイ、花火を人に向けちゃダメだからな!」





「「「「はーい!!」」」」








『線香花火をしよう!』




 始めにそう言い出したのはシショーだった。




 それを聞いて、ハルヤはフシギそうな顔をしていた。




『今度花火大会行くのに、線香花火すんの?』




 その声に対し、シショーはこう続けた。




『打ち上げ花火と線香花火は、全然違うからな!それに、線香花火はめっちゃくちゃ楽しいぞ???』




 "めっちゃくちゃ楽しい"とまで言われて、ぼくらがことわる理由はなかった。






「なんだ、この……すごいぞこれは!!!」




「ボキャ貧かよヒビト」




 ヒカリの言った意味はよくわからなかったけど、いい意味では無いだろうから気にしないことにした。




 手に持っている細いボウから、たくさんの火が出てバチバチと音を鳴らす。




 ぼくとハナが持っているのは、キレイな赤色の線香花火。




「まるで赤いウニみたいだね!」




 キレイな青空色の目をさらにキラキラさせるハナを見て、ぼくはなんだかすごくうれしくなった。




「そうだね! って赤いウニ!? たしかに見えなくも……ないか」




 だんだんぼくも花火が赤いウニに見えてきた。





「アブラ・カブッタラ!!!」




「エクスペアリブアームス!!!!」




 ハルヤとヒカリは何かと戦っている。




 二人が持っているのは青や緑のカラフルな花火で、この前見た映画にでてきたマホー使いみたいだ。




「あっ」




 ほとんど同時に、ぼくらの魔法のつえは力を失う。




 火花はとぶのを止めて、また公園は少し暗く、しずかになった。




「"あ"あ"あ"あ"わ"た"し"の"魔"力"が"っ"」




 その代わりにヒカリがうるさくなった。





 さっきまで明るい花火を見ていたからか、周りがぼんやりして見える。




「まだまだあるぞー! 使い終わった花火は、ちゃんとバケツの中に入れてな!」




 シショーは持ってきていたバケツに水を貯めた。




 ぼくらは言われた通り、ガンバった後の線香花火をその中に入れる。





「次はどれにしようかなー!」




 赤やオレンジ、青や緑とカラフルで、しかもいろんな形の花火があり、選ぶのも楽しかった。




 そしてみんなで思い思いに2本目の花火を手に取とって、チャッカマンで火をつけた。







 ☆☆☆☆☆







「ハルヤ、火」




 ヒカリはウデを組み、ひとさし指と中指で花火を持っている。




「はいよー! ってタバコじゃねぇんだからちゃんと持てや!!」




「フゥー……スゥー……」





 ハルヤは自分の持っている花火で、ヒカリの花火に火を着けた。





「ヒカリちゃん、わたしも火ちょーだい!」




「おっ! ヒメも吸うかい??」




 今度はハナがヒカリの花火から火をもらう。




「……すわないよ?」




「えっヒメ!? 今の"間"はなに!!?」





「ハナー! ぼくも火ほしい!」




「はいどーぞ! ヒビトくん!」




 今度はぼくがハナの花火から火をもらった。




「ありがとうハナ!」




「ほほほ、苦しゅうない」




「なんでヒカリがしたり顔してんだよ」




「あっ! 火きれた! ハルヤ火ちょーだい!!」




「もう!? いいけど、なんでオレが1本使ってる間に2本使い切ってんだよ……」




「わたしの魔力放出量に花火が耐えきれてないからな」





 花火から、新しい花火へ火をつなぐ。





 ダレかから火をもらうのも、火をわたすのも、なんとなくうれしいような気がした。





 そう思うのは、ぼくだけなのかもしれないけど。





 そうしていると、チャッカマン係りであるシショーさんの出番はほとんどなくなってしまった。




 ……ていうか、さっきからシショーさん居なくない?





「あれ? シショーさんどこいった??」





 ぼくがそう言うと、「あぁ」とハルヤが答える。




「パパなら、さっき飲みもん買いに行った……って、ウワサをすれば」





「おーーい!! 飲み物とか買ってきたぞー!!!」




 それからぼくらは、シショーさんが買ってきてくれた飲み物やアイスをえらぶ順番を決めるために、『だれの花火が一番長くもつか』ゲームをしたり、カラフルな花火で魔法使いごっこをしたり、みんなでねずみ花火からにげまわったり、うんこ型の花火を見てバカ笑いしたりした。







 ☆☆☆☆☆







「ふー! つかれた!」




「ふふ、おつかれさま! ヒビトくん!」




 一足先にベンチで休んでいたハナのとなりにすわった。




「一体なんで、ねずみ花火はぼくの方にばっか来るんだろうね??」




「アハハハ!! ヒビトくんのこと好きだったんじゃない?」




「えぇ!! 花火にモテてもなぁ……」




 ぼくはさっき勝ち取ったポカリスエットを一飲みする。




「なんか、夢みたいだ」




 ぼくの言葉に、ハナは首をかしげた。




「夢??」




「うん。花火が明るいからかな、みんながすごいぼんやりして見えるんだ」




 花火をして笑っているシショーさんたちを見ながら言うと、ハナもうなずいた。




「あぁたしかに、分かる気がするなぁ。なんだか、ずっと見ていたい夢だね」




 こっちを向いてはにかむハナを見て、ぼくも彼女と同じことを思った。




 ぼくがうなずくと、ハナは話を切り出した。




「夢で、思い出したんだけどさ」




 将来の夢のことかな……?




「うん」




「この前、イヤなユメを見たの」




 そっちかーい!!




 よそうが外れて、ぼくは頭のなかでズッコケた。




「イヤなユメ??」





 気を取り直して彼女の話に耳をかたむける。





「そう。ユメの中にイヤなヤツが現れて、"わたしの見ている世界は全部ウソなんだ"って言われたの」





 見ている世界がウソ……???





「なんじゃそりゃ!」





「よく分からないでしょ? でもそのあとね、ソイツから助けてくれた人がいたの」





 ユメの中でハナを助けた??





 その役、ぼくか?





 ぼくだろ。ぼくであってくれ……!





「それって、もしかして……」




「オバケさんが」




 ズコー!!!!!




 予想外過ぎる答えに、ぼくは本当にベンチからコケ落ちてしまった。




「だいじょーぶ?」





 そんなバカなことをしているぼくに、ハナは笑いながら手をのばしてくれた。





「ありがとう。ぼくはだいじょーぶだから、話をつづけて?」





 やさしいなぁハナは。




 白くてキレイな彼女の手を借りて、ぼくはベンチにすわり直した。




「それでね……あれ、どこまで話したんだっけ」




 さっきのせいで、話がとんでしまったみたいだ。




 ぼくは頭のなかでごめんなさいをした。




「えーっと、オバケさんが助けてくれたとこ!」




「そうそう! それで、オバケさんはイヤなヤツが言っていたことを"気にしなくていいよ、大丈夫だよ"って言ってくれたんだけどさ」




「そうなんだ!オバケさんやさしいね!」




 こわいからゼッタイ会いたくないけど!




 ユメの中にオバケさん出てくるとかサイアクすぎるけど!!





「そうなの。でもそれから、少しだけイヤなヤツの言ってたことが気になっちゃってさ……」





 ところで、ハナの言う"イヤなヤツ"ってダレなんだろう??




「見ている世界が、ウソだって?」




「うん。少しだけだよ? ほんの少ーしだけ!」





 そう言うハナは、何かをごまかしているような気がした。





「それでさ……ヒビトくんは……わたしにウソなんかついてないよね……??」





 そう言ってぼくを見つめた彼女の顔は不安そうで、青空色の目は少しだけクモがかかっているように見えた。





 きっとハナは、ぼくの知らないところで、いろいろむずかしい問題をかかえて、たくさんなやんでるんだろうなぁって、いつも思ってたんだ。




 その一つを今、こうしてぼくに話してくれてる。





 それなら、ぼくはハナにほんとうの気持ちを話さなくちゃならない。





 そう思って、深く息を吸った。




「ぼくは、みんなに全くウソをついてないとは言えない」




「……!」




 ハナは少し、ぼくの言葉におどろいているみたいだ。




 それでも、何も言わずに言葉の続きを待ってくれている。




「この前さ、みんなでキライな食べ物の話してたじゃん」




「……うん?」




「あのときぼくは『キライな食べ物なんてないよ???』ってフツーに言ったけど……」




「……言ってたね」




 ぼくはもう一度深く息をすって、ハナの前にヒザをつき頭を下げた。





「本当はニンジンとカリフラワーがダメなんです!! あと牛乳も!!!ウソついてごめんなさい!!!!!」





 言って……しまった…………。





 バレたくないヤツを、言ってしまった。





 ていうか、なんか言ってくれハナ。





 なんでこんな静かなんだ。





 カッコ悪いって言われた方がまだマシだ、たのむ、何か言ってくれ……。




「ハナ……?」




 頭を上げると、ハナがベンチの上でうずくまってふるえていた。




「ハナ!?だいじょう……」




 ぼくはあわててハナにかけより顔をのぞいた。




 ……めっちゃ笑ってんじゃん。




 声でないほど笑ってんじゃん。




 そんな笑う???




 ぼくそんな笑われること言った???





 その後も5分くらいハナは笑いころげていた。






 ☆☆☆☆☆






「ふーーー!つかれた!!」




 ハナは一息ついて、オレンジジュースをのんだ。




「うん……おつかれさまです……」





「カリフラワー、ダメなんだね」





「ダメだね。あれは一生食べれないと思う。ニンジンは、ママにムリヤリ食わされて最近なれてきたけど……」





「そっか、こくふくできるといいねー!こんどわたしも手伝ってあげる!!」





 ハナはそんなことを言って笑っている。




 よく分からないけど、悩み事はもういいのかな。






 ……それならホントによかったと思う。





「ねえ、ハナ」





 ウソの話が出た時に、ぼくは上級生たちとケンカした時のことを思い出したんだ。




 でもその話題は、ハナにとってイヤな思い出だろうし、あまり話したくない。





「なぁに?ヒビトくん」





 けれど、どうしても伝えたいことがあった。





 あのとき、ぼくはぼくにウソをついたんだ。





 ケンカなんて、したくなかった。





 相手がどんなにイヤなヤツでも、痛い思いをしたりさせたりするのはゼッタイにイヤだった。





 でも、みんなを助けたくて、自分のキモチにウソをついて、上級生たちに立ち向かった。





「ダレかにウソをついたり、何かを隠すのは、多分しょうがないことだと思う。ともだちでも」





 その時に、分かったことが一つある。




「けれど、ハナや、みんなにはさ」




 ぼくは、ガンバってハナのキレイな目を見つめて話した。




「…………」




「ココロがすごく、痛くなるから、自分の気持ちにだけは、ウソをつかないでほしいんだ」





 ぼくが思いを伝えると、ハナはしばらくビックリしたような顔をしてから、目を閉じて笑って言った。






「じゃあ、今から泣いていい??」





 ……えっ!!?




 な、泣く!?




 なんかぼく、傷つけるようなこと言っちゃってた!!?




 ウソ!えっ、うーんでも……。




「いっ、いいよ!」





「……ブッ!!アハハはははは!!!!」




「は、ハナさん……??」




「ごめんごめん!ジョーダンで言ったら、ヒビトくんすごいあわててるもんだからつい……アッハハハは!!」





 ……ハナのウソは、ホントに心臓にワルい。




 悲しんでいるワケじゃなくてよかったけど!!




「はぁ……びっくりした。じゃあ、そろそろもどろっか!」




 ぼくが立ち上がると、ハナに手をつかまれた。





「もうちょっと、休みたい」





 青空色の目をそらしながら、白くてキレイな顔を少し赤らめて、そんなことを言うハナにさからえるワケがなかった。





「……うん」





 ベンチにすわり直したぼくたちは、何も言わずにベンチに置いた手を重ねて、気づいたらつなぎ合っていた。





 手をつなぎながら楽しそうに足をブラブラさせるハナを見て、"ずっと彼女の側にいよう"と、ぼくはココロに誓ったんだ。




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