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すっごいキレイな、ヒューどっかーん!  作者: 健康っていいね
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第一話 「はじめまして」

美しすぎる花火は少女に夢を見せ、少年を絶望させる。



オリジナル小説シリーズ

【ぼくらは晴れて人生を卒業します。】

第一章『すっごいキレイな、ヒューどっかーん!』


第一話「はじめまして」です。


初投稿です。至らない点も多々あるかと思いますが、何卒よろしくお願いします。



挿絵(By みてみん)



ヒュ〜〜〜〜〜〜…………どっかーん!!!!!!!




「「うおおおお!!」」




「「「すごい!!」」」




「「「「「大きいー!!」」」」」




 花火が打ち上がると、みんなしてうれしそうな声を上げる。



 大きな火の花が開くと、みんなも花のような笑顔を咲かせる。






「2人にも、見せてあげたかったなぁ……」






 ……とある夏の花火大会のこと。






 大きな火の玉が打ち上がるたびに。




 大きな音の振動が、ぼくの感情をノックするたびに。




 大きな歓声が上がるたびに。




 大きな花が咲くたびに。







 ――ココロに貯まったぼくの寂しさは、しずくとなって目からあふれ出したんだ。







 ✩☆☆☆☆








 夏は終わり、運動は特にせず食欲もない秋が過ぎる。




 そして、ブルブルと身体がふるえるような冬から……。






「なんか、"始まり"って感じ!」






 ――春へ。




 気づけばほんのりとあたたかい風が流れてくるようになっていた。




 季節の変わり目に、ぼくはママと2人でこの町へ引っ越してきたんだ。






「なにそれ?」






 首をかしげたぼくを見て、ママはニッコリとする。






「『桜がキレイね』って言ったのよ」



 ん? そうは言ってなかっただろ。


 なんだ? どういうことだ?




 ママが言ってることの意味がよく分からなくて、ぼくの首はますます傾いた。




「あはは! あんたもいつか分かる時が来るかもね」




「ふーん」




 何があっても、毎年この時期は桜が咲く。




 前に住んでたところも、引っ越してきたこの町も。




 毎年毎年、ちゃんとピンク色の花を開いてくれるんだ。





「ねぇママ」




「なぁに?」




「桜って、なんで咲くの?」





 今度はママが首をかしげた。




「そうね……桜が『咲きたい!!』って思っているのと、桜に『咲いて欲しい!!』って願う人がいるからじゃないかなぁ」




「そっかぁ。じゃあぼくも……」




「『ぼくも』って、ヒビトは何もなりたいモノでもあるの?」





 夢というか、なんというか。




『ただ、そうしていたい! !』




 って、つよく思うことが一つだけある。






「笑ってさ、過ごしていたいなぁって」






 そう言うと、 ママはゆっくりとぼくを抱きしめた。





「じゃあママは、あなたがそうしてくれることを願っているわ」






 ぼくらは、しばらくそのままでいた。





 ツヤツヤしているママの黒い髪からは、シャンプーの優しいにおいがする。





 抱きしめていた手をほどいて、ママはぼくの目を見て言った。




「でもねヒビト。私達が『何かをしたい』とか『何かに成りたい』って思った時は、自分が動かなくちゃ何も始まらないのよ。ちゃんと覚えておいてね?」




 真剣な顔をしているママに、ぼくは答える。





「ちょっと、よく分からないなぁ」





「んーー!!!! 急に意味深なこと言うから変なモノでも食ったかと思ったけど、ちゃんといつも通りのヒビトでママは嬉しいわ!」





「……どういたしまして? うーん、なんだか今バカにされたような気が」




「そんなことないわよ! んじゃ、買い物行きましょっか!」





「うん!」





 手をつないで歩く、なんでもない道。




『今日の夜ごはんはなんだろうな?』なんて考えていると、ふと掲示板に貼ってあるチラシが目に付いた。




「まだ春なのに?」




 今年の夏に、となり町で行われる花火大会のチラシが貼ってあった。




「おーいヒビト! 置いて行くわよー?」




 気がつくと、ママは大分先まで歩いていたようだ。




「あっ! ちょっと待ってー!」





 今年の花火、ちゃんと楽しめるといいなぁ。



 せっかくだから、ママじゃない誰かと見に行きたいな。





 …………。






 新しいともだち、ちゃんと出来るかなぁ……。







 ☆☆☆☆☆







 目的地の商店街にはいろんなお店がならんでいる。




 "いろんなお店"なんて言っても、お菓子とか食べ物がたくさん売っているスーパーにしかぼくは行ったことがないんだけれど。




 そこはいつもたくさんの人でにぎわっていて、それを見るとぼくはフシギとワクワクするんだ。




 商店街を歩いていると、ママがぼくにたずねてきた。



「ねぇ、今日の夜ご飯は何が……」


「ハンバーグ!!!」




 ぼくは、ママが全て言い終わる前に答える。




「即答すぎてちょっとビックリしたわよ?」




「横の野菜はコーンね!! にんじんはイヤ!!」




 "横の野菜"とは、ハンバーグの横にいつも付いてくる野菜のことだ。




 あれ、ゼッタイいらないと思う。



 ハンバーグだけでいいじゃないか。




 何年か前に、いっしょに出てきたにんじんを泣きながら食べた日を未だに思い出す。




 ママは何が何でも野菜を食べさせたいみたいだけど。




「ところで、この前ハンバーグに入っていた小さいオレンジ色したあれ、なんだったの?」




「あぁ、あれは魔法の調味料よ。入れるだけでハンバーグが3倍美味しくなるわ」




「そうなんだ。なんて名前なの?」




「名前……名前はねぇ……"ヒトサン"っていうのよ」




「へぇー!すごいねヒトサン!」




 あんなにハンバーグが美味しいのは"ヒトサン"のおかげなのかぁ。




「ん? あれは……?」




 ふと、横を見るとそこには小さな白い子猫が歩いていた。



 その子の小さなカゲは、たくさんの人の波にまぎれて見えなくなる。




「たいへんだ……!」




 あんなに小さいと、だれかにふまれちゃうかもしれない!




「どうしたの? ヒビト」




「ママごめん! 先に買い物行ってて! 」




「え!? ちょっ、ヒビト!?」




 ぼくは急いで白い子猫を追いかけた。




「見つけた!」




 歩く人たちの脚をすり抜けて走る子猫の姿を見ると、あぶなっかしくてヒヤヒヤするったらない!



 それによく見ると、短くて小さくて白い子猫の後ろ足は、ケガでもしたのか引きずっているように見えた。




「まっ、まって!」





 小さなタバコ屋さんの角を曲がって行く白いしっぽを追いかける。



 進んだ先の路地裏は人がいないから、商店街とは違い、すごく静かで変な感じがした。





「まってって!」





 その奥、大人1人ギリギリ通れるくらいのすき間をこえた先には、白い子猫が待っていた。




「みゃ〜」




 そこはもう行き止まりで、子猫は大人しくくつろぎ始めている。




「やっと追いついたぞ……えーっと……」




 こいつの名前は……ちっこいから、"チビ"でいいか。




「チビ!」




「にゃぁ〜……」




 歩き疲れたのか、チビはねむたそうに鳴いた。




「やっぱりケガしてる……」




 チビの後ろ左足に、赤い腫れが見えた。




「このままにしておくのは、ちょっとかわいそうだよな……なんかないかな」




 ぼくのポケットをまさぐると、一枚のハンカチが入っていた。




「これは……みんなから貰った……」




 星のような模様とたくさんの名前が書いてあるこのハンカチは、引っ越す前に友だちから貰った大切な宝物だ。



 いきなり引っ越すことになっちゃったぼくを、笑顔で送り出してくれたみんなの顔を思い出すと、ちょっと涙が出てくる。




「にゃあ〜」




 チビはケガ気になるのか、腫れたところを舐め始めた。




「よし……」



「にゃ?」




 やっぱり、そのままにしておくのは良くないよな。




「おいチビ! よく聞け、今からお前につけるこのハンカチは"ともだちのあかし"だ!! 大事にしろよな!! 」




 ビシィッ!




 と、勢いよく指をさした先に居る子猫は退屈そうにあくびをした。




「ふにゃ〜……プルゥ……」




 ビッシィ!!!



 もう一度指を指しぼくは言った。




「これはな!! ホントに大事なやつだからな!! ゼッタイ無くすなよ!!」



「ムニャア」



「……はぁ」




 ハンカチを構え、今にも寝そうなチビにそっと近づく。



 よし。 いけるぞ。



 ハンカチをいい感じに畳んで。



 いい感じに……そーっと…………。





「みぁ!!!?」



「わっ!?」




 チビがとんでもない勢いで飛びはねやがった!!!



 めっちゃびっくりしたもうーー!!!!




「び、びびらせるなよな……」




 チビは小さな身体でぼくをイカクした。




「ヴゥぅ……!!」




「はぁ。 長い戦いになりそうだぜ……」




 何かのアニメで見たセリフを口に出し、ぼくとチビの熱い戦いが始まった。






 ――――それは、まさに熱戦。






 白熱したぼくとチビの攻防は、チビの気替わりにより30秒で幕を閉じたのであった!




「どっ……えっ、なんで?」




 威嚇ポーズをとっていたチビはぼくが2回目に近づいた時には、猫が変わったように大人しくなった。




 そのまま、チビの後ろ足にハンカチを取り付ける。




「なんで大人しくしてくれるんだ? もしかして、ぼくのココロがわかったのか? 」




「みぁう」




 チビの協力もあり、むき出しになっていたケガはハンカチでイイ感じにかくれてくれた。



 やっぱり、何もしないよりかは全然良くなったように思える。




「んにゃ……」




 どうやらチビはまだねむたいようで、壁に寄りかかって目を閉じた。




 付けたハンカチがジャマで気に入らなかったらどうしようかと思ったけど、あまり気ならないようで何よりだ。




「コイツ……ぼくの家で飼えないかな……」




 小さくて、小さくて、とてもかわいらしいぼくのともだちは、気持ちよさそうにスヤスヤねむっている。




「またねチビ。おやすみ」




 この街に来て、初めてできたともだちにそう告げて、ぼくは商店街へ向かう。




 近いうちに、また会いに行こう。




「あっ、やべ」




 商店街にある大きな時計を見ると、どうやら思っていた以上に時間が経っていたようだ。



 急がないと、まずい!!







 ――――スーパーの前で待っていたママはあまり怒ってはいなかった……ように見えた。




 けれど、その日の夜ご飯でハンバーグの横に付いてきたにんじんを、ぼくは泣きながら食べたのでした。





 めでたしめでたし?








 ☆☆☆☆☆









 今日の天気、晴れのち晴れ。





 ここ最近、太陽さんはガンバりすぎなんだよな。少しくらい休めばいいのに。



 じりじりじりじり射してくる日差しがイヤになる。



 神さま、もしいるのなら今日だけ冬にしてください。お願いします。




「はぁ……!!はぁ……!」




 真夏の太陽が町を照らす。




「「「ミィィイイイアイイイアイイイン!!!!!」」」




 セミの合唱コンクールが開かれる道を、ぼくはバックを背負い、牛乳の入ったすいとうをぶら下げ走っている。




「はぁ……いつもにぎやかだなぁ……」




 いつも通りたくさんの人が行き交う商店街の中を走っていく。




「いってぇ!」




 通りすがったおじさんのヒザに、すいとうが当たってしまった。




「あっ!すみません!!!」




 悪いなぁ、痛いところにぶつけちゃったかなぁ。



 心配になったけど、急いでいるので走りながらごめんなさいする。




「前気ぃつけろぉ!クソガキ!!」




 いや、ホントにすみませんでした……でも速く行かなくちゃ……ってヤバイ前ヤバ電柱あるけど止まっ!!!!



 ゴンっ!!とニブい音が鳴った。




「いってぇっ!!!」




 後ろを向きながら走っていたせいで、今度はぼくが電柱にぶつかってしまった。



 ヤバい、頭がめっちゃクラクラする!!



 世界が回ってるぅ!!




「いっつぅ……」




「ほ~ら言わんこっちゃねぇ」




 さっきのおじさんがあきれた顔で近づいてきた。




「あのなぁクソガキ。元気なのはいいことだが、しっかり周り見て気をつけないと今みたいに自分が痛い目みることになるんだぞ。分かったか?」




「うわぁ!たんこぶになってる!!」




「人の話聞いてねぇなぁクソガキィ!!!」




 たんこぶなんて幼稚園ぶりだ。めちゃくちゃいたい。



 でも絶対泣かないぞ……泣かないからな……!!!!




「あ、すみませんでしたおじさん!では急いでいるので!」




「あっ!待て、オイ!」




 おじさんが何か言ってた気がするけど、ぶつけたところが痛くて、それどころじゃなかった。



 商店街にあるタバコ屋さんの角を曲がって裏路地に入り、進んで行く。





 路地裏の奥へ、さらにその奥へ。





「チビ~!お待たせ~!!」





 そこで待っていたのは、白い子猫のチビ。ぼくの、ただ一匹のともだちだ。




「あれ、返事がない」




 前へ進んでいくと、チビはダンボールの中にタオルを敷いた特製ハウスでじっと丸まっている。




「みゃあ~」




 この前ぼくが巻いてあげたハンカチは、チビの足についたままだった。



 ぼくはここに来る度に、チビに付けたハンカチを交換するようにしている。




「なんだ、居るじゃん!」




 チビに近づくと、「にゃぁ~ん」と小さな頭をぐいぐい出してくる。



 これは甘えたいときの合図で、おばあちゃんちのネコも同じ仕草をする。



 甘えたいというより、今は『はやくミルクよこせ♥️』と言っているのかもしれないけど。




「にゃぁ~……」気持ち良さそうに鳴いた。




「待ってろ、今日もミルク持ってきたからな」




 持ってきた小皿に牛乳をそそぐと、チビはダンボールハウスからゆっくり出て来て、そそくさとペロペロ舌でナメだした。




「もう、外して大丈夫かな、これ」




 ハンカチが巻いてあるチビの左足に手を伸ばす。




「いっ!」




 大人しくミルクを飲んでいたチビが、いきなりぼくのタンコブをナメてきた。




「みゃっ!」




 びっくりして頭をあげたぼくにびっくりしたのか、チビも1メートルくらい飛びはねた。




 そして「グルルゥ」と低く鳴き、いかくのポーズをとりだすビビりネコ。




「はは、びっくりさせてごめんなぁチビ」




 いかくのポーズをしていたチビをもう一度ナデナデすると、そのまま気持ち良さそうに目を閉じた。




 チョロい。




「お前もしかして心配してくれたのか? やさしいんだな。でも今は自分の心配をしろよ」




「みゃあ~」




 今度こそチビからハンカチを外すと、チビの左足にはまだ痛そうなケガのアトが残っていた。




「少しは良くなってるといいけど」




 チビは歩くとき、ケガをした足を引きずっているように見える。



 いつ治るんだろう?



 というか、ハンカチ巻いてるだけだけど意味はあるのかなこれ?




「ほら、今新しいのをつけてやる! 今日のはいつもと違うやつ……ってこら!逃げるな!」




 外すのは大丈夫だけど、つける時がイヤみたいだ。




「なんでぇ! 思い出のハンカチの時はあんな大人しかったのに!」




「みゃーヴゥ!!」




「なんでイカクするんだ……? やっぱいつもと違うからかな? 」




 今日持ってきたのは、『ぷいきゅあ』という女の子向けアニメのハンカチだった。




「みゃーー!!」




 チビVS魔法少女ぷいきゅあ。



 両者の仁義なき戦いが今ここに――――!!







 ☆☆☆☆☆







 約15分。やっと終わった。




「はぁ……どうにかつけられた……!」




 家で冷やしてきたハンカチは、少しだけぬるくなってたけど、気にしない、気にしない。




「この作業も、もう何回目になるのかなぁ」




 チビが大人しかったのは初めての時だけで、2回目からはすこぶる暴れるようになった。




 ウロチョロしているチビを横目に、ぼくはカベにもたれかかるようにして座った。




「さて、今日はなんの話をしようか」




「みゃーう!」




 チビはめちゃくちゃ遊んでほしそうにぼくを見つめている。




「そういえば、ぼくがなんでこの街に引っ越して来たかって、言ってなかったっけ」




 道中で拾ってきた猫じゃらしで、チビと遊んでやることにした。




「みゃ?」




「……やっぱやめとこ。それよりさ、ママがうるさいんだ。『ともだちを作った方がいい』ってさ」




「にゃー!!」




 チビはケガをしているのにも関わらず、元気に猫じゃらしを追いかけ回している。




「べつにいいじゃんね? ぼくにはお前がいるんだからさ」



「にゃぁー!」




 チビは目に見えないくらいの速さで猫じゃらしをパンチした。




「ってこの話も、チビはもう聞きあきてるか」



「ナァー」




 さっきまで猫じゃらしに夢中だった小さなともだちは、てくてく歩いて段ボールハウスに帰ってしまった。




「さて、ぼくもそろそろ帰ろう。 宿題やんなきゃ」



 よいしょと立ち上がって伸びをする。



 空をよく見ると、もうすぐ暗くなる時間だということがわかった。



 あっ、そうだ。



 一応最後に伝えておかなくちゃ。




「チビ! そのピンクのハンカチさ、ぼくのじゃないんだ。大事に使ってな!」




「にゃーう!」








 ☆☆☆☆☆








「ただいまー!」




「おかえりなさい!!」




 家に帰ると、キッチンの方からママの元気な声が聞こえた。



 さっそく洗面所に向かいながら、いつもの質問をした。




「今日の夜ごはんなに~?」




「今日もカレー!」




 まぁ、ニオイがして来たからなんとなく分かっていたんだけども。



 だけどこれで5日目だ。


 美味しいけど、流石に飽き……



「べ、べつに飽きてないよ、カレー美味いから!」



「まだなにも言ってないのに……母に気をつかってくれてありがとうよ……」



 洗面所のカガミで、自分のタンコブがどうなっているのか見てみると、コメカミ辺りがハッキリと赤く腫れていた。




 少し目立つなぁ、これ。




「ところでさ、ヒビト……って、えぇ!? なにそのたんこぶ! ちょっと見せて!」




 いつの間に横に!!




「いっ!!」




 急に痛いところに触りやがって……。




「血は出てないみたいね、これどうしたのー? ケンカでもした?」




「よそ見してたら電柱にぶつかっただけ!」




 すると、お母さんは大笑いしだした。




「あっははは!バカねぇー!これに懲りたら、もっと周りをよく見るようにしなさいね!」




「バカじゃないし……」




 バカと言われて、何か言い返したかったけど、言葉がなにも出てこないのが少し悔しい。



 そんなことを思ってると、お母さんはしゃがんで、ぼくの目を見て言った。




「考えてごらん?もしも、ぶつかったのが電柱じゃなくて、怖~いヤンキーとか、ヤクザのおじちゃんとかだったらどうする??」




 やんきー……! それにヤクザ……!!?


 そんな人にぶつかりでもしたら!!




「こ、ころされる……!」




 そ、それはたしかにおそろしい……チビの世話どころじゃなくなってしまう。




「あっはは! まあ酷い場合はそうなっちゃうかもしれないね! だから、これからはちゃんと気を付けるのよ? 分かった?」




「はい、気を付けます……」




「うん! いい返事だ、ちょっと待ってて!」




 ママはキッチンへ行き、そしてまたすぐに戻ってきた。




「ほら!これでたんこぶ冷やして、ソファで大人しくしてなさい!」




 ママは袋に氷水を入れ、それをタオルに巻いたモノを渡してきた。




「つめたっ!」




 言われた通り、リビングのソファの上で横になり、タオルを頭に当てる。




 腫れていたところがじんわり冷やされていくのはなんだかとても気持ちが良い。




 気持ちが良くて、だんだん……眠く……なって…………。







 ☆☆☆☆☆













 おもちゃ。





 ぱずる。 げーむ。


 小さな走る車。 つみたてブロック。



 ここには、わくわく、たのしいものが沢山ある。∠( 'ω')/




 小さい人形。



( ´,,•ω•,,`)♡ おままごとせっと。 まほう少女のステッキ。


 かわいいアクセサリー。


 \(o^^o)/


 サチも、すごい楽しそうにはしゃいでいる。






「もっと楽しいところ! つれていってあげる!」


 ≡┏( `Д´)┛


 サチ は、えがおの、お人形さんに、楽しいとこに、つれてってくれるんだって。 よかった。





「君もおいで!」(`・ω・´)/




「ぼくも?」(´・ω・`)



 しゃべるツミキが、ぼくに笑って言った。




「さぁ、ほら!」



( ̄ー+ ̄)


「ごめんね。ぼくはいいや。あまり遠くに行っちゃいけないって言われてるし、妹を見てなくちゃ」



「わかった! じゃあそこで見ててよ!」

( ̄^ ̄゜)




 プラレールの線路は大きくなって、道路ができた。



 それを囲むように、たてものがうかびあがった。




 道路の上に、小さな

 車


 が乗ると、


 それは次第に大きくなった。




「わぁ!すごい!!」


 \( ˙▽˙ )/


 車の中の、くまのぬいぐるみは、ぼくに手をふって車を動かし た。


( ▔•㉨•▔ )手三手




 道路の先 の方に、人形さんにつられてあるく サチ が居 た。




「あっ! あぶないよ!!」




 サチ は、 笑って、にんぎょうさんと、おいかけっこ。 だんすもおどるよ!






 車は、走り出した。 青しんごうで走り出した。






 まって! 止まって!!!





 声が、でなかった。







 行かなきゃ…… サチが!!!








 なんで、ぼくの身体が動かないんだ!!




 動けよ!!! おい!!!






「どうしたんだ? ヒビト」





 パパが、動かないぼくに、声をかけた。



 パパは、泣いているぼくと、ぼくが見ていた妹を見つけて、走り出した。








 パパは、サチ、を、かかえた。


 そのままくま(´・(エ)・`)さんの、くる…………ま…………………にぶつかる。



 あぶない。




 ぼくが……たすけなきゃ。





 うごけ………動け……………ウゴケ…………………










 ☆☆☆☆☆









「――きて!ヒビト!」




 んん…………。




「ほらヒビト、起きて! って……」




「うご…………あれ……ママ?」




「大丈夫? すごい汗かいてるけど」




 目を開けると、心配そうな顔をしたママがそこにいた。




 どうやらぼくは、いつの間にか寝ていたみたいだ。




「なんか、ヤバいユメ見たけど思い出せないや」






 忘れたらいけないと思うけど、思い出したくもないような……そんなユメだった。







「とりあえず、これで拭きな」




 ママが渡してくれたタオルで、ぼくは自分の汗を拭いた。




「身体どこか悪いとか、痛いとかない?」




「ないよ。そんなことより、ぼくおなかすいた!」




 ぼくの答えを聞いて、ママは可笑しそうに笑う。




「そっか、よかった。じゃあ冷めないうちにカレー食べちゃおっか!」




「はぁーい! ふぁぁぁぁあ……」




 大あくびをしつつ、お皿にご飯とカレールーをよそった。



 ママもぼくもイスに座ったところで、手を合わせる。




「「いただきます!!」」




 5日目カレー、いただきます。



 流石にもう飽きていると思ってたけど、今日は疲れていたからか、なんだか美味しく感じるや。




「うん、やっぱトマト缶入れるだけでコクが出てくるわね!!」




「ママ、それ聞くの5回目だよ」




「そうだ、寝てる間に見たけどあんた、たんこぶ治ってたよ」




「えっマジ?」




 気づけばすっかり頭の痛みが無くなっていて、手で触ってみると、なんとたんこぶがキレイさっぱり無くなっていた。




「いやぁー子供って怪我が治るの早くていいわね。でも今だけだからね!年とると、怪我したらホント大変よ??」




「分かった分かった」




「ホントに分かっているのかしら?あ、そうだ。ヒビト、もう夏休み入っちゃったけど友達はできたの??」




 ギクッ。




「い、いや、それは、まぁ……てかさ!カレー美味しいね!コクがトマト缶だよ!」




「愛しい息子よ、流石に話をそらすのが下手過ぎて泣けてくるわよ?」




「と、ともだち居るし……」




「猫ちゃんじゃなくて人よ!人間! 人の遊び相手居ないとつまんないでしょ?夏休みなんて」



 クソぅ、ママめ。



 ママにチビの何がわかるっていうんだ。



 猫アレルギーのクセに……。



「それにね、学校でも大変なんだから。例えば授業とか遠足で、二人一組で~とか、仲いい人で班をつく――――」




「やめて!!!!泣きそう!!!!」




「えぇ!?嫌ねぇ、心当たりでもありそうな反応しちゃって。まぁそうはいっても、小学生なんて知らないうちに友達できてるものだから、そんなに心配してないんだけどね」




 テキトーだなぁ。



 けっこうひどい問題だと思うんだけど。



 そんなことを話しながら、お母さんは5日目カレーを完食した。




「ご馳走さまでした!っと。そうだヒビト、最近牛乳の減りが早い気がするんだけど、あんたもしかして牛乳飲めるようになったの?」




 ギクッ。



 チビにあげてるってことがバレたらまずい!!




「う、うん!そう!最近ようやく牛乳の美味しさがわかってきたんだよ!コクがいいよね!!」




 ぼくの苦しいウソを聞いて、ママはため息をついた。




「はぁ……猫のお友達にあげたいなら、せめてあなたもちゃんと飲めるようになりなさい。それならいいわよ」




 んな……!


 なんでバレたんだ!!?




「なんでバレたって顔してるんじゃないわよ。ママはなんでも知ってるのよ? ママだもの」




 ママって、こわいなぁ。



 あんまりウソつかないようにしよう。




 なんてことを考えてるうちに、ぼくも5日目カレーをキレイに完食した。




「ごちそうさま! ママ、今日もぼくが洗い物するよ!」




「あら〜エラいわね! でも牛乳の約束、ちゃんと守りなさいよ」




 ママの怖い笑顔を見て、ぼくは息を飲んだ。




 牛乳、飲まなくちゃいけないんだ……。




 でもチビのためだ。がんばらなくちゃ!!







 ☆☆☆☆☆







 次の日。



 いつも通りチビの様子を見に行ったその帰り道、ぼくはひよこ公園に立ち寄った。




 そこにはブランコ、滑り台、砂場があり、砂場からは点々と足場が生えている。



 見わたしてみると、ブランコは上級生たちが独り占めしていて、砂場では二人組の男子と女子が遊んでいる。




 上級生も砂場の二人も、笑顔で遊んでいた。




 いいなぁ、ともだち。前住んでた所には結構いたんだけどなぁ。




 あの二人に声、かけてみようかな。同級生っぽいし。




「よし!」





 ぼくは気合いを入れて、ベンチから立ち上がった。





 そしてベンチに座った。



 待て、落ち着こうぼく。なんて声をかけるか何にも考えてないじゃないか。




『ごめんなさい!一緒に遊びませんか??』




 違う。なんであやまってるんだ。




『へい!いっしょに遊ばない??』




 違う。へい!はなんか違う。



 困ったなぁ。友達を作りたいとき、なんてあいさつすればいいんだっけ。




『初めまして、ぼくはヒビト!いっしょに遊びませんか!』




 よし、これだ!





 顔を上げた瞬間、目があった。




 砂場にいたはずの女の子がナゼか目の前に立っていたんだ。




「初めまして!一緒にヒーローごっこやろ!キミ目付き悪いから悪役ね!!」




 ニコッとした笑顔でそう言って、女の子は手を差し出した。


すっごいキレイな、ヒューどっかーん!1話、見てくださってありがとうございます!


意見、感想、アドバイス等心よりお待ちしております!m(__)m


頑張って週1、遅くて月1ペースで投稿する予定です。


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