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8話 杞憂

頭が上手く回ってなくて、今日は少し短めです。

2000文字を目標に頑張ってるんですが……。


翌日、いつもより早く学校に行くことにした。

昔はユウと一緒にいつも遅刻寸前に通学していた。遅刻寸前の理由は、ユウがいつも寝坊をするからだ。だがもうユウはいない。ユウを待って遅刻寸前で通学する必要がないのだ。

俺は割と早起きの性質で、7時には起きていたから朝ごはんさえ食べてしまえば早くに通学することも大変ではなかった。

7時に起きて1階に行く。すると父親と母親が朝食をとっているので、15分ほど一緒に食事をした。

父親が先に朝食を食べ終わり、


「タカシ。今度、お前が学校に行って

 どんなことをしているのか教えてくれ。

 雑談程度に教えて欲しいんだ」


それだけ言うと、ビジネスバックを持って玄関を開けて出て行った。


「あの人ね。あなたと話す時間を今までろくに

 作ってなかったな。って昨日言ってたの。

 深く考えなくても大丈夫よ?」


父親の発言の理由を母が教えてくれた。

父親も今回のことをきっかけに変わろうとしている。きっとそういうことなんだと思った。そして本当に迷惑をかけた、とも。


7時に食事を食べ、7時15分に準備をする。7時30分には家を出る。

玄関を出る時に行ってきますと伝える。母親からの返答はないが、大きな声で伝えたので間違いなく聞こえたはずだ。

7時半では、まだ通学路を歩く生徒の数は少ない。

ただ部活の朝練に出るのだろう女生徒二人が並んで歩いていた。


「でね、その猫は思うの。

 もし空が落ちてきたらどうしようって。

 それを他の猫たちが笑うの」


女生徒の片方が話している内容が聞こえる。


(杞憂だ)


言葉には出さずそう思った。

俺も以前経験したことがあることだった。だからなおのことわかる。

杞憂と言うのは悩んでいる人が誰にも悩みを話せなかったことで起きる現象だ。

自分一人では解決できないことなのだ。だから、その猫の悩みはもう杞憂ではなくなるに違いない。


「何それ?

 その猫はそんなのありえないってことにも

 気づけなかったの?」


「うん。でもね、他の猫たちも空が落ちて来るとは

 思わなかったけど同じようなことを思ってたの。

 例えば、自分たちがたまり場にしている公園が

 いつか壊されてしまうのではないか、とか。

 確かに20年後、50年後、いつかは壊されてしまう

 のかもしれないけど、今考えても仕方ないって

 さっきの猫に言われるの。

 そこでみんなで笑いあって、その猫はその公園の

 猫たちと仲良くなれるんだよ」


大事なのは、それを誰かに話す勇気。他の者と触れ合う一歩。

俺はその話を自分に置き換えた。

自分も他人と触れ合わなければならない。

気づかせてくれたのは当然……。


話をしている女生徒は楽しそうに話すが、聞いている方の女生徒は、何それ変な話。と言った感じでしかめ面である。

女生徒を追い越して少し経つともう話し声は聞こえなくなった。

学校までは後数分だ。


知ってる者と会うことなく教室にたどり着く。ドアを開けようとするが早く来過ぎたせいか鍵が閉まっていて開かなかった。

一番早く教室へ来たことなかったから忘れていたが、一番早く来た者が教室のドアを開ける担当だった。

職員室へ行き、教室の鍵を受け取って教室のドアを開ける。そしてまた職員室へ行き鍵を返す。


朝の教室はとても静かだ。なんとなく早くに来たものの、誰もいない。

ガラッ。

ドアが開いた。


「あれ? 佐藤じゃん。

 こんなに朝早く来るなんて初めてじゃない?」


クラスメイトの……名前を忘れてしまったが、勉強ができる委員長タイプの女性だった。

髪の毛は真に黒く、メガネを掛けていて真面目そうな雰囲気が見て取れる。


「うん。初めて職員室に鍵を取りに行ったよ。

 けど、朝早くきたけどやることないね」


「へえ、余裕だね。昨日出てた宿題終わってるんだ?」


そう言われて気づく。昨日宿題が出ていたのを全くやってなかった。


「あー……やってない。そっか。やらなきゃ。」


「じゃあ、私と一緒にやらない?

 今日は朝学校でやる予定だったんだよね。

 家だと集中できないし」


この委員長タイプの女性は、きっと俺に勉強を教えてくれるつもりなのだ。

今まではそんなこともなかったし、そんなこともわからなかっただろうけど、正直嬉しかった。

頷くと、女生徒の隣の席を借りて一緒に勉強をした。

生活の色んなことが変わりつつあった。


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