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5話 お告げ

ようやく5話更新です。

実はこの恋愛小説を書くときは、デザートを食べ、コーヒーを飲みながらと決めています。

深い意味は……ないようである気がします。



あの日から二日、家から出なかった。気まずすぎる。

奈緒子は花言葉の意味を知っているのだ。純粋に愛しているなんて意味の花を渡したと言う事実が足を動かさなかった。


夕方に家族で揃って食事をしていた。

母親が父親に向かって今日あったことの話をしていた。


「ねえ、ちゃんと聞いてる?

 最近近所に引っ越してきた夫婦の旦那さんの方。

 この間奥さんの誕生日だったらしくて、でも

 薔薇の花をたった1本だけ買ってきたんですって。

 意味を聞いたらあなた一人を永遠に愛します。って

 花言葉があるからって言ってたらしいの。

 そんな凝ったことしなくても女は花を束もらったら

 純粋に嬉しいのにね」


「ああ、聞いているとも。

 サプライズならまあともかく、男はそんな凝った真似を

 しなくても純粋な気持ちだけでいいのにな。

 でも男がそんな器用な真似できないことなんて、

 女性なら気づいているだろうなのにな」


そのやりとりを聞いてハッとなる。今の自分と似たような話しだ。

思わず母と父の顔を交互に見ると、二人とも不思議になってこちらを見返してきた。


「なんだ、どうかしたのかタカシ」


「そうよ。急にどうしたの? 今の話に何か

 思うところでもあった?」


二人して質問を投げてくる。


「いや、なんでそんなことになるんだろうなと思って」


今の自分が陥ってる状況に対し、なぜそのようなことになってしまったのかを聞きたくてそんなことを両親に聞いてしまう。


「ふむ。そうだなあ……。

 きっと男が女性にいい顔をしたいからじゃないか?」


「きっとそうね。

 この話の大事なところは、女性は花束をもらったと言う

 事実であって、それに対する細かい意味はどうでも

 いいことだと思うの」


二人が答えをくれた。

俺の場合で言えば、奈緒子はああ言ったがお見舞いに花束をくれたと言う事実に喜んでいるのであって、俺が考えているほど深い意味で受け止めていないのだ。

なんだ、自分は勝手にそういう心理に陥ってただけか……。そう思った。

そう思ったら軽くなった。


「あ、そうそう。

 タカシ、あなたまた家から出なくなったわね?

 早く学校に復帰して欲しいけど、無理はさせたくないし、

 でも外には出るようにしてよね。

 あなたからも言って頂戴」


「タカシ、無理にとは言わないが。

 気晴らしに外に出た方がいい。引きこもっていると、

 1つの考えから抜け出せないからな。

 父さんも仕事でそういうことがある。そういうときは、

 思い切って気分転換をするものだ。

 毎日でもいいくらいさ」


二人とも自分を気遣って話してくれている。とても暖かかった。


「わかったよ。

 登校はまだきついけど、明日からまた外に出るようにする」


そう言い、夕食を食べ終わった食器を流しに置いて部屋に戻った。

明日はまた病院に行ってみよう。そう思えた。


翌日昼前から家を出た。母親からは、お昼は家にいないからどこかで食べてとお金ももらっている。

病院へ向かう道にはこの間の花屋もある。歩いて花屋の前に差し掛かろうとした時に、花屋のシャッターが開いた。

反射的に目を向けてしまい、シャッターを開けた店員さんと目があう。


「あら、この間の子ね?

 この間はちょっとからかっちゃってあんなことを

 言ってしまったけど、カスミソウは本当は純粋な

 気持ちを示す言葉なの。

 だから深い意味なんてなくていいのよ」


そうフォローしてくれた。

できればあの時それを最初に言って欲しかったが、もうそのことは気になっておらず大丈夫です。と答える。


「また来ます。

 その時は、状況を伝えるのでふさわしい花を選んで

 下さい」


そう言っておじぎをして、花屋の前を去った。




「まあ……礼儀いい子ね」


そういえば、昨日もそんなこと言ったな。

花屋の店員として花を選ばせてもらえることはとてもうれしいことだ。

高校生からそんな言葉を言うなんて、と店員は嬉しくなっていた。




病院の前まで来て、深呼吸をした。

この間の恥ずかしいことは完全に頭から離れたわけではないが、気持ちの整理はついた。問題はない。


病院の入口を抜けて階段を上がり奈緒子の病室に行く。

ドアの前で立ち止まり、コンコンと軽く叩く。


「タカシくん、開いてるよ」


奈緒子には俺が来たことがわかっているようだった。

驚きながらドアを開けると、そこには笑顔の奈緒子がいた。


「フフフ」


俺が驚いた顔をしていることが嬉しかったようだ。

前回同様、ベッドの横の椅子に座る。


「びっくりしているみたいね?」


そう言う奈緒子に黙って頷く。


「さあ、どうしてわかったんでしょう。」


全くわからないので適当に答える。


「ブッブー! 違います!

 今日ね。タカシくんが来るよってお告げがあったの。

 夢の中で、神様が私に囁くの。

 タカシが今日来るよ。って」


そんなことを本当にうれしそうに笑顔で言う。

それを疑いの目で見ながら、


「やけに奈緒子にとって親切すぎる神様だな」


「なんてね。

 本当は、病院の前を歩いてるタカシくんを見つけたの。

 きっと女の子の病室に入るときはノックをするだろうと

 思ったから、言うタイミングを見計らってたんだ」


俺を騙せたことが本当に嬉しいらしい。 

タネがわかってしまえば、なんだと呆れた顔をするしかない。

けどそれさえもうれしかったみたいで奈緒子は満足顔だ。


弾んだ話も一旦落ち着いたので、奈緒子と別の雑談をする。

今日の奈緒子の話のメインは、美味しいスイーツについてだ。

母親が買ってきてくれたものや友達がお見舞いでくれたもの。どこどこの何が美味しいとか、すごい可愛いとか。

横文字がずらっと並んで覚えられないが、とても美味しそうだと言うことだけは伝わった。


「私が退院したら、一緒に行ってね?」


「わかった。でも……退院はまだなんだろ」


「そうね。歩くリハビリが2,3週間かな?

 最後にお医者様に診断結果をもらったら、

 高校に復帰できるの」


つまり、2,3週間後のデートの約束を取り付けられたのだった。

気づけば2時間も経過しており、帰ることを奈緒子に告げる。

そう……またきてね。と言われ、わかったとだけ返して、立ち上がる。


「絶対だよ?」


ドアを開けるときに、奈緒子は念押しするように言った。


「ああ、わかってる」


ぶっきらぼうにそう言うと、ドアを開けて出る。




タケシの足音が聞こえなくなるのを待ってから奈緒子は呟く。


「でもね。

 本当に夢の中に神様が現れたんだよ」


タケシが帰った後のドアを見ながらそう言った。


前話でも書いた花言葉は、自分はあまり詳しくなくてインターネットで調べて書いてあったことをまんま使っています。

もし意味が違うよ。なんて思ってる方がおられましたら教えてください。

よろしくお願いします。

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