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二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す   作者: SO/N
七章 蒼色と金色 (仮面編)

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七十五話 胸騒ぎ




「……………はぁ。」


 夏の大会、学院長……そして、ルリアとの戦い。それらが全て終わり、やっと一息つけるようになった俺は授業終わりに例の広場のベンチに座っていた。





『…………そうやって、()()()()()?』




(…………俺は、逃げていた……のか。)


 太陽に照らされ夏風に揺らされながら、数日前に受けたルリアの言葉を思い出す。

 

 逃げる、こと……その行動自体、俺は悪いことだとは思わない。以前にフィーリィアにも言った通り、『逃げてしまいたい』と考えてしまうことは自衛的・人間的な意味でも、決して悪ではない。


 だが、問題なのは…………







「……逃げてることに、()()()()()こと………」

「……あれ、ウルスくん? こんなところにいるなんて珍しいね。」



 ………この声はっ。



「……ラ、ライナか?」

「……? そうだけど……もしかして何かしてた?」

「い、いや……ちょっとぼんやりしてただけだ。そっちこそどうしてここに?」

「私? 私は今から1人で特訓しようかなって。いつもの場所は人がいっぱいいるし、たまには誰もいない所でやろうと思ったんだ。」


(……全然気づかなかった、考えすぎて魔力感知を忘れていたか。)


 動揺する心を鎮めていると、何故かラナが少し距離を空けてベンチに座っていた。


「……特訓するんじゃなかったのか?」

「…………せっかくだし、少しお話でもしようかなって。こうやってウルスくんと2人きりで話すのは意外と無かったしね。」

(……俺が避けていたからな。)


 なんて言えるはずもなく、今更離れるのもおかしいので渋々ラナとの会話を続ける。


「……大会は惜しかったな。やっぱり首席は強かったのか?」

「そうだね……アーストくんは確かに強かったけど、ここだけの話ウルスくんの方が強いなって思ったよ。」

「……いやいや、それはないだろ。現に俺はライナに負けてるし、さすがに思い違いじゃないか?」

「うーん、私も変だと感じるんだけど……」


 ラナは目を瞑って難しい顔をしながらも、ポツポツと語り出す。


「何というか……アーストくんと戦った時は普通に今までやってきたことをぶつけ合っただけ勝負だけど……ウルスくんとの勝負は、こう………今までやってきたこと、普通にしてきたことをぶつけるのが当たり前、みたいな……でもそれだけじゃないというか…………」

「……ふわふわしてるな。」

「ご、ごめん……なんて表せばいいのか分からなくて。」


 アハハと照れ臭そうに笑いながらも、ラナは言葉を絞り出そうとしていた。


「応用的……? 実戦的……? どれも……違う………よう、な………」

「……まあ、単純に俺との相性が悪かったんだろ。自分で言うのも何だが、俺は相手の裏を……?」


 

 途端、肩にぽんと何かがもたれかかった。その何かを見てみると…………


「………すぅ……………」

「……寝てる?」


 何故、今なのか…………ラナは俺の肩に頭を乗せ、小さく寝息を立てていた。


「……おい、起きてくれライナ。特訓するんじゃ……」

「うぅん………まだぁ………」

(……夢でも見てるのか?)


 軽く体を揺らすが、微塵も起きる気配を感じられない。多少疲れていたのかもしれないが、こんなどこでも寝るようなタイプじゃないは………






『ウルくん、今日はお昼寝しない?』


『お昼寝……? ラナ、今日は遊ぶんじゃなかったの?』


『え〜ダメ?』


『だ、ダメじゃないけど……どうしてお昼寝するの?』


『だって今日はいい天気だし……たまにはこうやってウルくんとのんびりしたいの!』






「…………ウルっ……くぅん…………」

「…………ラナ……」



 伸びた手を、引っ込める。



(……俺に、資格はない。)






「…………早く、起きてくれ。」




















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

























 


 一度目も、二度目も…………









 俺の力不足で、全て消え去った…………








 大切な人たちが、消えていった…………











 三度目は、許さない………………















 罪を、赦さない…………



























 呪え。
















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



























「………ス、ウルス……ウルス!」

「ふぇあっ!!?」

「………………」



 俺を呼ぶ声に、誰かが素っ頓狂な声を上げた。




「……あれ……フィーリィアさん、どうしてここに……?」

「……ここ、私がいつも使ってる場所。」

(……ああ、俺は……眠って…………)


 俺は目を無理やり開ける。すると目には紅い夕焼けと……桃色の髪をした少女が映っていた。

 その少女……フィーリィアの顔は何故か不満そうな表情をしており、俺のことを睨んでいるように見えた。


「……フィーリィアか、何でそんな顔を………」

「2人で、何してたの。」

「何、を…………?」


 ()()()がまだ頭に残っているせいか、未だに思考が纏まらない。確かラナが寝た後、俺は…………


「……寝て…………たな。」

「見たら分かる。何で、寝てたの?」

「き、今日は天気が良かったの! だからついうっかり……ねっ、ウルスくん!!」

「あ、ああ……?」


 何故かラナは焦りながら俺に同意を求めてくる。


(……頭がよく働かない。何なんだ、あれは…………)



 以前にも、何度か似たような夢を見たことがある。おそらくこんな夢を見るのは、俺の『強くなる・守る』といった思いから来ているんだろうが…………今回のは何か()()()()()…………



「フィ、フィーリィアさん。本当にたまたまだから……」

「……………そう。」


 未だ不機嫌なフィーリィアに、ラナは立ち上がって慰めている。やはりこのお気に入りの場所を使うのはやめて置いた方がいいのか……?


「……フィーリィア、何か嫌なことでもあったのか?」

「……別に。」

「………なら、どうしてそんなに……?」

「……………むぅ。」


 ますます不機嫌になっていくフィーリィアだが、ついに何かが我慢ならなかったのか………突然、俺の隣にズガっと座った。


 そして………俺の肩に、自分の頭を躊躇なく乗せてきた。


「……………………」

「………えっ?」

「ど……どうしたんだフィーリィア?」

「…………私も、寝る。」


 ………………今から?


「私も、眠たくなった……だから寝る。」

「……いや、もう夕方だぞ? いくら夏とはいえ、流石に冷える。」

「そ、そういう問題じゃないと思うけど……って、本当に寝ちゃ駄目だよフィーリィアさん!?」



(………………)




 ラナとフィーリィアがわちゃわちゃとしている中、俺はさっきの夢を思い出す。





【呪え。】





「寝るったら寝る……また後で起こして。」

「今寝たら夜中に起きちゃうよ!? 私が悪かったから、風邪を引く前に早く帰ろう、ねっ?」







 …………何なんだ、この胸騒ぎは。



 嵐の前の静けさとは言いますが、大体嵐の前も煩いですよね。


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