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二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す   作者: SO/N
十六章 期待  『pride』

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二百二十七話 凍てる月晶




「踏み台? ……踏めるものなら踏んでみなっ!!」

「っ……またあの風……!」


 確か、ストームガーデンと言う名前の魔法が無詠唱で発動され、私は吹き飛ばされないように縮こまってしまう。

 また、その範囲はこの舞台全体にまで広がっているのか、遠くに動いたはずのウルスも影響を受け、ミルの攻撃を防御する事を強いられていた。


(ミルは動けてる……そこだけ上手く風を消しているのか?)


 この範囲で、しかも細かい制御まで……やはり、上級生の練度は(やわ)じゃない。果たして、私の()()()()通用するのか……


「いや……やるんだぁっ!!」

(いさ)んでるが、ここから「ミカヅキさん!!」……っ!?」

(っ、クナイ……ウルス!)


 突如、ウルスが放ったであろうクナイがミカヅキさんの翼を破壊し、墜落していく。それによって暴風は止み、その間に体の魔力を高め始める。


「く、うぉ……!」

「……なんだ…………冷気か?」


 魔力暴走の時のような、薄い水色の冷気が体から溢れ出すが……まだまだその発動には時間がかかってしまい、やがてミカヅキさんが再び翼を生やして近づいてきていた。


(まだ、動けない……なら!!)

「……なっ、転けた?」


 下手に動くのは返って悪手だと判断した私は、攻撃が当たる寸前にその場で転び、苦し紛れに通り過ぎさせる。また、私が魔法の準備をしている事を悟っていたのか、その先にウルスが剣を持って待ち構えていた。


「そんなに心配かっ!?」

「心配? ……まさか!」

「はぁ……っ!?」


 ウルスはミカヅキさんの剣を受け流すと同時に、足を後ろに地面を削りながら動かして風の壁を作り出し、背後のミルが放ったムーンシャワーを破壊した。

 そして、私は完成するまでの時間を稼ぐため、再びアルスに向かってアイススフィアを発動した。


「『アイススフィア』……ウル、ス!!」

「あぁ……『雹風(ひょうふう)(まい)』!」

「「ぐっ……!!」」


 ウルスは瞬時にこちらの意図を把握し、体を翻して避けながらそれに手を伸ばし、刃の息吹との合体魔法として完成させた。

 刃に砕かれた氷は風と混ざり合い、広範囲に彼女らにダメージを与えていく。


「『グラウンドウォール』! ……よし、行きましょう!」

「ああ、『ロックストライク』!!」

「おらっ!! …………っ!」


 壁で風を防いでから、ミカヅキさんは最上級の岩石を飛ばしてきた。それをウルスはジェットを発動し、突進で壊すことに成功したが……その影に隠れて近づいていた彼女は彼の腕を掴み取った。


「掴むだけじゃ……!」

「……『()()()()()()()()』」

「「……!!?」」


 ウルスは一瞬驚いたものの、すぐさま切り替えて蹴り飛ばそうとしたが……本来、彼女が使()()()()()()()()()が使用され、彼の体は下に落ち、当たることなく空かしてしまう。

 また、ミカヅキさんは宙ぶらりんのウルスを地面に投げ飛ばし……その()()()でこちらを強く見つめてきた。


(あれは……確か、称号の……!!)

「がっ……解放で、魔法ランクを上げたか。」





名前・ルリア=ミカヅキ

種族・人族

年齢・17歳


能力ランク

体力・192

筋力…腕・189 体・207 足・201

魔力・195


魔法・18

付属…なし

称号…【解放される力】




「よく見てるな……まあ、別に使わなくてもできるように練習はしてたがな。」


 ……超級魔法を不自由無く使えるには、最低でも17は必要だ。それに対して本来のミカヅキさんのランクは16……他のステータスに比べて分かりづらいとはいえ、解放で2つも上げられるというのは恐ろしい。


「『レベル1・アクア』……はっ!」

「っ……フィア、その魔法は後どれくらいで完成するんだ?」

「あ、あと……20秒……!」

「分かった、それまでサポートする……『オーバージェット』!!」


 ウルスにはまだ、この魔法の詳しいことを伝えていないが……それでも疑う事なく、私を守るように動き始める。そんな気遣いに場違いにも高鳴りそうになったが、慌ててそれを抑えて魔法に集中する。


(恐れるな……信頼してくれてるんだ、暴走なんてしない……!)

「ミカヅキさん、フィーリィアさんが何か……うっ!?」

「優先順位が違うんじゃないか、ミル?」


 腕を大きく払い、空を飛ぶミカヅキさんと化身流を使うミルを同時に風圧で行動を封じ、時間を稼いでくれる。しかし、それぞれ特殊な魔法を使っている2人なため、少しずつ通り抜けてこちらに飛んでくる攻撃もあり、予想以上に準備が進まなかった。


「早く、はや……うぁ!?」

「フィア!! ……ちッ!」

「やはり過保護……タッグ戦は向いてないな、ウルス!!」


 その一つの水撃を掠らせてしまい、不安から声を上げてしまう。その声にウルスを反応させてしまった結果、ミカヅキさんが包囲網から抜けてしまい、こちらへ一直線に迫ってきた。


(私のせいだ……私が…………)

 




『……馬鹿だ、わざわざ人を庇ってこんな真似……自分が傷ついたら意味ないだろ?』













「…………うるさいっ!!!」

「……なに?」



 …………馬鹿なんかじゃない。



 自分が傷つくことより……誰かが傷つく方が、よっぽどダメなんだ。それを庇えるのならば、私は…………!




「『()てる月晶(げっしょう)』!!!」

「……これは、冷気か? だが……『フレイム』!」


 魔法を解放し、体から溢れ出る冷気を際限なく周囲に走らせる。そして、ミカヅキさんが放った火炎放射を……その冷気で一瞬にして()()()()



「……凍えてください、ミカヅキさん。」

「 …………ここからが、本番なんだな?」





 

 凍えていきます。

 

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