1/1
1.ナツノソラ
蝉が泣き叫ぶ8月。
こんなに夏を鬱陶しく思ったことはあっただろうか。
友達とちょっと遠出して遊びに行く者
馬鹿みたいに髪を染め出す者
ここぞとばかりに増え出すカップル
どれも俺達には縁のない話だ。
ふと隣に目をやるとそこには君がいた。
夏らしく、後ろで高くまとめた髪。
白くて細くて、綺麗な手足。
うっすら桃色の唇。
大きな瞳に長いまつげ。
彼女の視線の先にはカメラ越しに見た空。
それは手を伸ばせば届きそうな空というありきたりな例えを使いたくなるような美しい空だった。