爆弾魔と棒アイス
確かこの爆弾魔は爬虫類が苦手なはずだ。早速魔力を具現化させてヘビを作る。それを、上機嫌でアイスを食べているアリシェラに投げる。
二秒間の絶句
十秒間の絶叫
そして―履いているスカートの中から[朱竜]と本人は呼んでいる手榴弾を取り出し、おもちゃのヘビに向かって投げはじめる。僕がやったこととはいえ、部屋を壊されるのも他のメンバーが傷付くのはゴメンだ。破壊された箇所を魔力で直していく。そう考えると魔力というのは万能なのかもしれない。(さてと、、、どうやってこいつを止めるか…)少し迷ったが素直にアイスをあげることにした。途端に彼女は爆破をやめてアイスを食べ始めた。
「あ、隊長さん!!私の為にアイス買って来てくれたの!?」いや、冷凍庫の中にあったやつだが。まぁいいや。僕は力無く「そうだよ」と答えた。
「そういえば。なんでそんなにアイスが好きなんだ?」僕は訪ねた。
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十年前―[帝都]―[ウィンダライ区]
このウィンダライ区は差別された人物たちが最後に行き着き、最期を迎える場所。帝都民ですら名前を聞いたことの無い場所だ。簡単に言うならば[スラム街]だろうか。私はそこの出身だった。生まれた時から、人生の負け組。勝ち組の人間の奴隷。友達も、親も。みんなーみんな。奴隷市に売られていった。ある日仲良しだった[サレンテ・フライト]という女の子が私に言った。「このウィンダライ区を無くせば私達苦しまないはずだよね?」と。私にはこの不条理を変える気などなかった。しかしサレンテは違った。一人で毎日何処かへと出かけ、毎日新しい傷を作って帰ってくる。それから一年経ったある日、サレンテがアルミホイルと塩、炭を持って私の元へ走って来た。やはり新しい傷を作って。「凄い発見をしたよ!!」力強く私に見せる。アルミホイルと塩、炭。これをウィンダライ区なら容易に入手できる麻袋に入れて、貴重な水を注いだ。しばらくすると、だんだん温かくなってきた。私は驚いた。サレンテが思いついた「これ」ではなく、自分の中にある何かが語りかけてきたことに。私は後にカイロと呼ばれるそれに、ウィンダライ区必須アイテムである、グリセリンを入れた。その瞬間―聞いたことの無い大きな音と、何かが焦げた香りがした。何故、この時の私は快感を覚えたのか。わからないが、後に爆弾魔となる私、[アリシェラ・ハント]が誕生した瞬間だった。
それから五年。私は爆弾魔となり、帝都中を震撼させていた。私が、隊長さんに出会う1ヶ月前。自分の爆弾で怪我して動けないところを帝都警備隊に捉えられた。
連れて行かれたのは地下牢獄。一千万円払えば釈放してくれるらしいがそんな大金持っている訳が無い。投獄され、二日。カツン、カツンという靴の音。それが私の牢獄の前で止まる。その足音の主は誰でもない。ヤシロ・ラングラー隊長だった。「食うか?」彼はアイスを私に差し出した。一挙一動、一言一句。その全てが私を威圧した。けれども、私は隊長に惚れた。生まれてはじめて持った恋心。私は隊長の差し出したアイスを食べ始めた。それから毎日隊長はアイスを持って来てくれた。そして―。「僕の力になって欲しい」彼は頭を下げた。私は、即答した。「ハイ!!」
保釈するための一千万円は隊長が払ってくれたらしい。私はアイスを食べながら、お礼を言った。
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「だって、隊長が私にあの時アイスをくれたから、ね」彼女はそう言って笑った。「すまない。なんのことだ?」僕は、僕は。何も思い出せなかった。「ナイショですよ」彼女は。そう言って二本目のアイスに手を伸ばしたのだった。
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TO BE CONTINUED.......