戦争(弐)
何が悲しいって、必要とされていない事だよ。
爆弾魔―アリシェラは語る。
元々、私はスラム街の出身。人として存在していない。誰も私に目もくれず、大通りに出れば石を投げられる。悲しいかな―それにも慣れてしまったよ。痛みなんか、私にはない。麻痺してる。痛みを感じないから、〈生きてる〉気がしない。けどね。私に光を見せてくれた人がいた。私に、生きてるって教えてくれた人がいた。その人のためなら、この〈貰った命〉を使っても良い。そう思えた。だから―私は。戦うよ。
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彼らに理解できるはずも無いのに、何故か語る。それは、きっと、彼の為。
それは、きっと、彼女の為。
仲間の為。
爆弾が爆ぜる―その刹那、爆煙に紛れて殺人鬼が特攻する。
基本、アリシェラの爆弾が命中する事はない。爆発した時の衝撃で殺す。それが彼女のやり方―殺り方だから。
勿論、彼女は帝都を震撼させた爆弾魔。破壊のみに特化した爆弾もないわけではない。しかし、その爆弾は滅多に使わない。その爆弾は、破壊に特化したモノ。
〈破壊〉を追求したモノ。破壊などという、生温い世界ではない。〈崩壊〉と表現してもまだ足りない。帝都の様な、一都市など、刹那で破壊出来てしまうほどに、強力だから。
彼女にはリミッターという概念がない。世の中は、彼女にとって〈価値〉が有るか無いかのどちらかでしかない。ゼロか、イチか。彼女を認めなかった世界など、彼女を許さなかった世界など、彼女を許容しなかった世界など―無意味。
だから、壊す。破壊する。
時限爆弾を、霰のように落としていく。
〈血雨拡散弾〉アリシェラが編み出した、爆弾専用魔法。爆弾同士を、絶対に〈1メートル〉の間隔で落としていく能力。派手さもなければ実用性もない。けれど、それは、殲滅するには強すぎる力だった。彼女の投げた時限爆弾の爆破範囲はおよそ30センチ。それを一メートル間隔で落としていく。ぴったりと計算された異能だった。
「ハッハァ!!」喜び勇んで爆発の中へ突っ込む殺人鬼。停滞者の腕をもぎ取り、爪を剥ぐ。その爪を剣のようにして停滞者を切り捨てる。そして爪を投げ、アリシェラの背後に回った停滞者を貫く。同時に、自身の背後にいた停滞者を後ろ向きのまま、蹴り飛ばす。飛ばした先には、抜刀術の構えをした剣豪が待っていた。剣豪は一閃―剣を抜き、仕舞う。その仕草は視認不可。
さらに、剣豪の背後を守るは、忍者。彼らを遠くからサポートするハッカー。ハッカーを守るのは、詐欺師。トリガーハッピーがヤシロと共に遊撃。科学者と医者は持てる限りの知識を使い、トラップで1体ずつ、確実に〈仕留めて〉いく。
誰が指示をしたわけでも無いのに、皆がやるべき事を理解している。加えて、第一部隊は〈特定の条件下では不死身〉である。精鋭部隊が入る隙も無いほどに、完璧だった。ルナはその光景にもはや、疑問も感じない。しかし、ヤシロが笑っていることに疑問を抱く。普段なら敵を見据えて睨みつけるはずの彼が。
〈笑って〉いる。
その理由など、ルナには知るよしもなかった。
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TO BE CONTINUED......




