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戦争

水の都―そう呼ばれる都市が、ある。

通称〈水都〉―正式名称を〈水都・アクアリウム〉と言った。その街は川が流れ、噴水が至る所にある、正しく水の都だった。〈だった〉のだ。

それが、今―。透き通った水は赤く染まり、噴水は破壊されていた。所々に転がるのは死体。兵士から大人子供関係なく、全員が、生命活動を終えていた。代わりに闊歩するのは、停滞者。そう、この日、この場所で、何があったのかは容易に想像できるだろう。


その日から、水都は、〈紅の都〉と呼ばれるようになったのだった。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


可能性―。その言葉は麻薬である。否、劇薬か。


人は可能性を信じ、努力する。可能性は人を奮い立たせる。可能性は人に希望を与える。しかし、可能性―それは、時に不可能として型を変える。

人は絶望するだろう。怒るかもしれない。けれどそれは不当だろう。その怒りを向けるべきは、可能性を信じ過ぎた、その人なのだから。この場合、一番この〈可能性〉に絶望するのは―誰が相応しいのか。


誰が、



〈絶望すべき〉


なのか―?



その答えはとっくに出ているだろう、とヤシロは鼻で笑い、皇帝を見る。そして、窓の外にいる、ルナを見る。


絶望とイコールで結べるのは案外―存外、ヤシロ自身なのかもしれなかった。


それは、ヤシロの本体が、証明していた。


「な―!?」ヘンゼルは驚いた表情を浮かべる。


ドロドロのそれは、見慣れたモノ。

ドロドロのそれは、いつまでも慣れないモノ。


それをまるで崇拝するかの様な眼差しで見つめるルナ。


「さて、終わらせよう」ヤシロはそう言ってナックル―ナイトメアを握る。そして、それごとヘンゼルの腕を砕く。


「ガァ!!」ヘンゼルは砕かれた腕をどうする事もできずに悶え苦しむ。その痛みはまるで―全身が切り刻まれたようだった―。


「―ッ」事実―ヘンゼルは、鉄扇で粉々に切り刻まていた。


「ヤシロ―。やはりお前は味方ではないのか?どっちなのだ?人類の敵か―停滞者の敵か―?どちらでもないのか?」


呆然と見ていただけのルナが口を開く。

「俺は、誰の味方でもない。エヴァの味方だ」言い切ったその姿は、とても勇ましかった。その、他人への揺るぎない愛を、ルナは―。


許せるはずもなかった。


「ルナ様!!」ルナ・フレデリカ。彼女の部隊の人物が、彼女の元へとよる。本部から走って来たのか、息が上がっている。そして、この場の惨状を見て、息を忘れる。


「何だ?」

ルナは、少しだけ強い口調で尋ねる。

それにハッと我に返り、その人は続ける。


「帝都南方20キロ―〈水都〉にて停滞者が街を占領したとの通達が届きました!!いかが致しましょうか?」ルナは、目を丸くして、沈黙する。しばらくして、答える。

「我々、進行軍は、〈水都〉を奪還しに行く。ヤシロ、付いて来い」


ルナは、否応なしに彼を連れていく。ヤシロは携帯電話で第一部隊のメンバーを呼び出す。ルナは、彼女が統括する進行軍の精鋭部隊、

通称―〈ネーム〉を率いて向かう。


「ヤシロ―すまないな。私はお前を信じきれていない。だが、私はお前を―」


はじめて、はっきりと、目を見て、伝える。

やっと言える。

今言わなければならない。

でないと、ヤシロが何処かへ行ってしまう気がしたから。

だから―言う。

「だが、私はお前を―愛してる」


永遠にも感じる刹那の間を置き、ルナは続ける。

「これで最後だ。これでダメなら諦めよう。私と―結婚してはくれないか?」


ルナは、言った。ヤシロは答える。


「、、、、、、だ」

「―ぇ?」ルナには聞こえなかった。だから尋ね返した。しかし、ルナのその声は、たった1発の銃声でかき消されたのだった。

その銃声の主は、いつか、乱射魔が対峙した停滞者と同じモノ。


「アドルフが言ってたのはお前か―!!」ヤシロは鉄扇取り出し、腰を落とす。その双眸で睨みつけ、深呼吸。

〈タンッ!!〉ヤシロが動くのと刹那の違いもなく、

〈ダァン!!〉ソイツは弾丸を放った。


〈キンッ〉と音がする。それは鉄扇が弾丸を弾いた音。ヤシロはそのまま進む。狙われないように、左右に、上下に、自由自在に蛇行しながら。


また1発、放たれる。

それを軽々と躱して近付いていく。その表情は険しく、けれど、笑ってもいた。


「お生憎様。俺はてめぇにやられる程に弱くねぇんだ」ヤシロは鉄扇を開き、投げる。それを避ける停滞者。

その避けた先には―


「ビンゴ!!」血に飢えた、殺人鬼―アミラル・ブラックがいた。彼女の腕が、停滞者の胸を貫く。ヤシロの鉄扇を拾い上げ、首を斬り落とす。


そして。

「お待たせ―、隊長」にっこり笑った第一部隊のメンバーがそこにいた。


★☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆★


「へえー、こりゃスゲェな」乱射魔―アドルフが兵士の死体に触る。硬く、冷たくなったそれを、何の敬意も感じずに、ぺたぺたと。

その間にも、停滞者はじりじりと詰め寄って来る。しかし、お構いなしに、周囲を見渡す。あるのは、死体だけ。その光景は、何度も見てきた。今更、何の感情も湧きはしない。冷めきった目で見下ろして、ようやく停滞者と対峙する。その両手に銃を握って、立つ。

「せめて―罪滅ぼしくらいさせろ。隊長」少し悲しげな表情を浮かべ、その銃口を停滞者へと向ける。笑う彼を、敵として判断した停滞者は、飛びかかる。

〈ガァァァ!!〉長い爪が目の前まで迫ったその刹那―劣化ウラン弾を放った。そのウラン弾は、いつかのそれと違う。この銃は、ダイヤルが付いている。その選択したダイヤルによって射出される弾が変わる。その武器の名を―


〈選択式変則銃―カタストロフ〉と呼んでいた。

「帝国は好きじゃねぇ。でもよ、お前らは、それ以上に〈大ッ嫌い〉なんだよ!!俺の親父は、てめぇらに斬り刻まれた!!お袋は俺の弟を腹ん中に抱えたまま、噛み殺された!!ざっけんな!!てめぇらみてぇな奴が、人間様の上に―この俺様の上に立ってんじゃねぇ!!」対戦車用ライフル―RPGを放つ。

「俺は銃が好きな訳じゃねぇ。親父もお袋も、銃殺されなかったからだ。俺が殺した人間は、親父とお袋を見捨てて逃げた奴らだ。そいつらへの復讐は終わったよ。だから―罪滅ぼしとして、テメェらを、〈ぶっ殺す〉!!」マグナムが停滞者を貫いていく。


荒れ狂ったその姿を見ながら、爆弾魔―アリシェラ・ハントは。


「待っててね。サレンテ。すぐ帰るから」クラッカー式爆弾を取り出していた。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★☆


TO BE CONTINUED……


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