対峙(参)
抜かれた鉄扇が勢いよく開かれる。飛んで来る雷撃を受け止める。それを見て〈雷帝〉―パトリア・イージスは察する。鉄と言えど、電気を通さないのだと。彼には〈恐れ〉がなかった。進行軍1の恐れ知らずとして有名な彼は恐れない。確かめる事に、恐怖を感じない。だから、特攻する。〈ガチャンッ!!〉という機械と鉄扇のぶつかり合う音が響く。ぐにゃりと鉄扇が曲がる。それを見たヤシロは1回の跳躍で十メートル程距離をとる。
「なぁ。ヤシロ。ヘレンの能力であるあの霧は何だったのだ?」ルナが機会を伺い、質問してくる。
雷撃を素手で握り潰して答える。
「俺と同じ―不死身の能力。霧の中にいる限り、死なない。それどころか、怪我すらしなくなる。俺がコイツの頭をぶっ叩いたのに、〈今〉ここにいる理由がそれだよ。その能力名は―」
一発、雷撃を躱して答える。
〈ミスト〉
「ミスト、、、?それはわかったが、テレポート能力はなんだ?まさか、セフィロスの能力か?」ルナは二つ目の疑問をぶつける。それに対して、高速で雷帝と拳を交わしながら答えるヤシロ。
「その通り。アイツの武器は〈雷豪〉。その弱点は間合いだ。遠くにいる敵には当たらない。だから、〈魔法〉で〈引き寄せる〉って訳だ」パトリアの拳がヤシロの水下にキマル。ヤシロの拳がパトリアの顔面に直撃する。両者共に後退する。ヤシロは腹部を抑える。パトリアは恐らく折れたであろう鼻骨を抑える。雷帝の機械が起動する。ヤシロは鉄扇を直し、構える。
〈タンッ!!〉跳躍は一回。動いた―そうパトリアが認識するのは、遅すぎた。
「なっ、、、!?」暗くなる視界の中、最後に見た彼は、ヤシロは―。楽しそうに、笑っていた。
〈バン!!〉と背中で爆ぜる。それに覚えがあった。
「ヘンゼル・リムウェア―推して参る!!」衝撃式爆破型ナックル―ナイトメア。その程度では意味が無い。彼の心臓に、届かない。触れる事は出来ても、殺せない。
振り向き様に一閃。鉄扇がヘンゼルの頬を切る。血が伝う。ヘンゼルは、ナックルをいつもよりも強く握り、息を吐き切る。
呼吸―それは案外体力を使うのだ。酸素何かが体内にあるから、臓器が〈活動せざるを得ない〉のだ。ならば、それを変えればいいだけのこと。
実際、クジラ等の水棲哺乳類は深海に数時間潜って居られる。それは、〈体内に酸素がない〉からである。ペットボトルに空気があると沈まない。だが、中身が全て水―あるいは真空ならば、沈む。それと同じ事が、水棲哺乳類にはできる。同じく哺乳類の、ヘンゼルにそれが出来ない訳がない。だが―!!決定的に違う点があった。それは、彼の肺活量。クジラはその〈戦法〉で数時間潜って居られる。しかし、こちらは人間だ。せいぜい、数十分程度。その間、ヤシロを捉え、攻撃し、ヤシロの攻撃を躱さなければならない。よって、数分が限度。それを知っていながら、ヘンゼルは相対する。敵を殺す為に。
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〈宮殿―皇帝・玉座の間〉
「よう、おっさん。元気?」失礼にも程がある口調で入って来たのは、戦闘中であるはずの、ヤシロだった。
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TO BE CONTINUED……




