対峙(弐)
ガチャリ、と背後で扉の開く音がする。入って来たのは、各部隊の隊長達だった。そして、彼らは。天獄を突きつけているルナと、絶対的な[闇]に、ある種の畏怖を覚える。
「ヤシロ、貴様…!!」雷帝の叫び声がする。彼のルナに対する心酔は異状である。異常な程に―異状。
すぐにその身に纏った機械を起動して、雷撃を放つ準備をする。
「うるせぇ起動音だな」と、一言。そう言って振り向き機械を握り潰す。その握力に雷帝は唖然として砕け散った機械―[雷填]を見つめる。
周囲の部隊長達も一歩後退して様子を伺う。
彼にとって、それは弱さの現れ。彼らにとっては意地の表れ。そして、ルナにとっては。
恐怖のあらわれ。
一歩下がった彼らにヤシロは見向きもせずにルナを見る。その真っ直ぐな視線は、普段のヤシロと何ら変わりない。しかし、漆黒の瞳が紅く滾っている。彼が怒っている証拠。ルナにはわかる。ずっと見ていた彼の事が。けれど、エヴァよりも、彼の部下よりも。ルナは。
何も知らない。
出身地も知らない。好きな食べ物も知らない。好きな曲も知らない。わからない。知らない。彼女にとって、彼は。憧れだった。此処に彼が赴任してきたときからずっと、ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
―見ていたのに。
彼の事がわからない。悔しい。彼が死んだって、どうせ生き返る。彼が死んだってこの悔しさは消えない。だから、彼女は。自殺を選んだ。なのに彼はこう言った。「自殺がこの僕に脅しとして機能しない」と。何もできないじゃないか。あんまりだ。だから、ルナはこう、命令する。
「各部隊長に告ぐ。ヤシロを殺せ」と。その命令を聞いても尚、薄ら笑いをしているヤシロは、その手に[鉄扇・火衣]を持って、一番近くの〈雷帝〉に振り下ろした。
刹那、彼の頭部が原型を留めぬ程に破壊される。脳が飛散し、脳漿が撒き散らされる。体液が辺りに滴る。血が、ヤシロの頬に付く。それでも首から下は未だに意識があるかのように動き回る。
各部隊長達が感じたのは、圧倒的な〈死〉だった。この状況で、ヤシロの事を倒せる者はいない。解っていた。いたからこそ、次に名乗りを上げたのは。
「第三部隊長。〈ヘンゼル・リムウェア〉―推して参る!!」その両手に、ぶつかった瞬間に爆発する、〈衝撃式爆発型ナックル〉―〈ナイトメア〉をはめて。ヤシロに。[闇]に対峙した。
「、、、。意味がわからないんだが…。何故、アンタらはルナに従う。人類最強だからか?笑わせるな。最強はこの俺だ。、、、じゃあなんだ?本部長だからか?、、、違うよな?怖いんだろ?この、最強が。だったら、俺に従えよ。俺ならアンタらを認めてやる。許容してやる。テメェの全てをな」
そう言った彼の瞳は。
紅く、紅く―滾って。
―はいなかった。
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TO BE CONTINUED……




