収束
例えば―。どこかで人が死んだとしよう。―ヤシロは語り出す。心のない、単語だけの文章。
けれど、それは他人だ。この先も絶対に関わりのないであろう人物だ。彼が死ねば、彼の周囲の人が泣く。それはおかしいだろ。だって、そいつが死んだところで俺には何も影響が無いんだから。だから俺は、そんな奴に涙は流さない。きっと、俺が死んだらそいつらは泣かない。だって―どうでも良い存在だから。誰が死んでも涙を流すか?そんな奴はいねぇだろ。もう、その時点で命は平等じゃねぇ。命は金で買える。命は平等じゃない。知ってんだろ。けど―。なんでこんな事してる?何で俺は進行軍にいる?
[闇]が
なんで
人の
命を
救ってる ?
苦しくて堪らねぇ。辛くて堪らねぇ。なんでこんな目に会わなくちゃならねぇんだ?
なぁー。
『俺は何だ?』
『俺は誰なんだ?』
『俺はどう見える?』
『俺には、何も、見えない』
胸を焼く様な悲しみが俺の中で毎日膨れていく。どうしたって俺は殺す事しかできない。だから俺は、〈停滞者〉なんだ。
人間が大嫌いなんだ。自分が大嫌いなんだ。何もかも俺は嫌った。あんたが俺の部下を嫌ったようにな。誰彼構わず殺してしまった俺は、『人』だと思うか?『人』ならば何故俺は罰せられなかった?それは、俺が〈停滞者〉だからだろ?知ってたんだろ?俺は気付いてた。あんたが俺に、〈本物〉の好意を向けてくれた事も。本気で想ってくれている事も。けど―俺は断ってきた。それはあんたが嫌いって訳じゃない。俺が、どうしようもないくらいに『ぶっ壊れて』しまってるから。壊れ過ぎて、他人まで壊してしまうのが怖かった。恐ろしかった。だから進行軍に入って停滞者を殺した。自分と同じ奴を殺して、俺の中の『俺』を殺した。殺してきた。殺し続けてきた。奴らを殺すとき、いつも俺は思う。
〈次はきっと俺が死ぬ〉って―。
命は平等じゃない。きっと俺はその考えを変えるつもりはない。だからさ―。
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「―っ!!」ヤシロは、自らの心臓に、刃を突き立てた。
「ヤシロ!!何をして―」止まる。留まる。ヤシロは、笑っていた。
「これで、良いんだよな?俺が死ねば、世界が変わるんだよな―?なぁ。ルナ。なぁ―エヴァ」その場に倒れるヤシロ。
「人の命は平等じゃない。俺の命に―価値はあったのかな…」ヤシロは、泣いていた。そして、生命活動の全てを終えた。
「―っ!!」エヴァは怒る。その対象はルナである。それは不当であり、正当だった。ルナは、細剣を仕舞い、帝都へと帰っていく。
「命無きモノに、価値はない。エヴァ、好きにしろ」そう言って、帰っていく。振り返る事なく、止まる事なく。その背中には、何かが見えた。けれど、例の如く、例によって、それが何なのかはわからなかった。
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TO BE CONTINUED……




