殺人鬼(弐)―攻防(漆)
喜々として爆発の中に飛び込んで行ったのには、対して理由など無い。唯の衝動に駆られただけである。強いて言うならば、相手の戦意を削ぐ為である。強いて言わなければ、突発的行動である。それは、中間者―イオ・ビアンカに対しての挑戦でもあった。そんな事など知らないイオは更に魔法を重ねる。
[爆段]に重ねて、[地雷原]を放つ。目の前の死なない殺人鬼を殺す為に。しかしそれは悪手だった。絶対的な中間者を遥かに凌駕する殺人鬼―アミラル・ブラックは、地雷のある地面を悠々自適に歩き回る。これが、強いて言うならば殺人鬼の狙いだった。
爆炎と爆煙による視界を塞ぐこと。それが狙い。殺人鬼はここで魔法を使う。[拍手喝采]―それは。どんなに不利な状況でも自分を有利な状況に変える能力である。すなわち、今の彼女はイオに対して絶対的な優位に立っているのだ。
同じく視界の悪いイオに比べると見通しの良い彼女は、爆煙に紛れて背後をとった。そして―イオが使っていたはずの爆発する魔法を撃った。
その事実に対しての驚きもあったが何よりも魔法をコピーされた事に対する驚きがあった。それを隠すことなく出してしまった。
『出してしまった』のだった。
「なぁっ!?」
「私の力は単純だよ。分かってるくせに。そう、私の魔法は―」彼女は少し勿体ぶるように間を置く。そして口を開けて、魔法の名を叫ぶ。「私の魔法は[支離滅裂]だよ。わかるだろ。この力は、相手の攻撃を無効にして、それを逆に私が使えるようになるんだ。テメェみてぇな奴に負ける訳がねぇだろ、アァン?」そしてアミラルは、もう一度爆弾を叩き込んだ。
「ガハァッ」イオは血反吐を吐く。こんな、こんな。自分からすればまだまだ小娘のアミラルに負ける訳が無い。しかし現実は甘く無い。イオは自分のズボンのポケットからナイフを取り出す。「いくら攻撃を無効にするからといっても心臓を刺せば死ぬだろう!!」そう叫び振り向く。
太刀筋の見えないナイフにアミラルは一瞬迷う。しかしイオの目の動きから予測し、右手でイオの左腕を掴む。そのまま掴んだ腕を左へと払う。イオはナイフを何処かに飛ばしてしまった。すると必然、イオの胸部を守る物がなくなる。そこを見逃す訳が無く、払ってから流れるような動きで心臓に肘をキメる。そこから更に右膝で蹴り上げて一旦右足を着く―が、今度はその右足を軸に左脚に回転をかけながらイオの顔面に一発。そして左脚を着け、右脚で回し蹴り。その後両手を握り締めて精一杯の遠心力をかけて腹部に一発。
「グォ!!」再び血反吐を吐き、腹部を抑えて下を向く。けれど殺人鬼は容赦しない。膝蹴りを腹部に入れると、イオが中に浮いた。その隙に左手の拳で更に上へと飛ばす。その後落ちて来ると今度は上を向いてるイオの腹部に踵落としをする。そして顔面掴み、トドメの一発。頭部を、アミラルは全力で地面に叩きつけたのだった。
★☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
TO BE CONTINUED.......




