絶対(弐)―攻防(伍)
中庭にいるのはアドルフ・グレオリウスと、絶対的な暴力の化身―否、化神。そいつが使うのは性能不明の拳銃と、禁忌の魔法[異界神]である。冷や汗が頬を一筋、伝う。「ゴクリ」誰かが唾を飲む。アドルフかもしれない。そいつかもしれない。あるいは、アドルフの空耳かもしれない。アドルフは目の前のそいつに尋ねる。
「お前、、、何者だ?」アドルフは、目の前の暴力に耐えられず、尋ねる。
「私は、停滞者であり、人間である」そいつは答えた。低く、低く、低く、低く―。それさえもアドルフを震撼させた。だがしかし、それが返って自信となったのも揺るぎない事実である。
中庭にいるのは、『二人だけ』―そう。二人だけ。本来ならばあれだけの音がしたこの場所に誰か来ても良いはずだ。それに気付かずに、アドルフは[イグアス]を構える。それを目の前の暴力―停滞者と人間の中間者に向かって撃つ。しかし全て消される。そんなことくらい解っている。だから彼は銃を捨て、徒手空拳の状態となり、構える。目の前の絶対的暴力、中間者に対抗する為に。
「行くぞ。消せるモンなら消して見やがれ」アドルフは、そう言って一歩踏み込み、そいつの腹部に拳を叩き込む。「ガハァッ!!」何が起きたのか解らない。そいつがアドルフの動きを最後に視認したのは、一秒前。(動いた)―そう思った時には拳がキマッていた。
「理屈は簡単だよ。あんたが消した物体は、本当は消えてなんかいないのさ。さしずめ、空間転移ってところか?つまり、消しているのは、『物体そのもの』じゃねぇ。周りの『空間』だよ。だから俺は空間が消える=『お前との距離が縮まる』と思ったのさ。それを利用すればこんな芸当誰にでも可能だよ。さぁ、タネは割れたぜ。まさか、テメェみてぇなザコが『異界神』なんて使える訳が無ぇからな。お前の魔法は『空間転移』だろ。その証拠に、俺がいくら乱射しても誰も来ないからなぁ!!」
「うるせぇ!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」ヤツは叫ぶ。空間転移の逆。今まで消してきたアドルフの弾丸を、放つ。劣化ウラン弾が、アドルフを襲う。
「俺がトリガーハッピーなのは、[可視域・遠方視認]が使えるからじゃねぇ。『銃撃では死なない』からだよ。テメェがいくら俺に撃っても死なないぜ?」彼は中指を立てて挑発する。そのまま、ゆっくりと中間者に近付く。『空間転移の逆』ならば、何も消せない。故に、彼はゆっくり近付く。そして、顔と顔が触れ合う距離にまで近付き、そっと腹部に『グロック18』を撃ち込んだ。
「ガァァ!!」背後から人ではない者の叫び声。さっきの停滞者だろうか。彼は、逃げない。停滞者が彼を殺そうと走って来る。振り上げた左手が、アドルフの顔面の右側を捕らえた。
その刹那、アドルフは自身の顔面を捕らえた左手を掴み、そのまま背負い投げを決める。そして馬乗りになり、そいつの頭部に、ゼロ距離で[劣化ウラン弾]―[イグアス]を撃ち込んだ。
「抗っても無駄さ。俺よりも運命に流される奴なんていないからな。つまり、俺は『運命そのもの』なんだよ」そう言って彼は、宮殿の中庭を後にした。
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TO BE CONTINUED.......




