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第一章 その希望は絶望に塗り替わった現実の未来  3

 学校までの道のりは徒歩5分といった程度の、割と近場に家があって俺は本当にラッキーだった。



 時刻が時刻だけに、近所の柴犬を散歩しているアフロヘアの知りたがりババアもいないし、いつも登校時間には家の前のなにも落ち手も汚れてもいない玄関先を竹ぼうきでわざとらしく掃いているハゲ爺もいない。



 近所での同い年の友人連中はもうすでに朝練とかで学校に行っているし、変な歌を歌いながら色とりどりのランドセルを背負って俺の行く手を阻むガキンチョ小学生どももいない。というか、最近の小学生のランドセルの色のあのバリエーションは正直異常だと思う。



「あー。なんて満ち足りて幸せな時間なんだー。今日はもしかして最悪の日じゃなくて、人生最良の日かも知れねー」



 俺は兄貴に命中させられたひどくくたびれた黒い鞄を片手に持ったまま、感慨深げに両手を空に広げて深呼吸でもしてみた。9時前の朝の空気というのは自由と開放感にあふれている。そんな気さえする。



「あとはもう、俺の予約したDVDをゲットして、くっそつまんね学校なんてフケて近くのマン喫にでも行って、俺の時間を満喫しちゃうかぁ? シッシッシ」



 漫喫だけにと、もう一度心の中で会心のギャグを思い浮かべ、俺はブロック塀が立ち並ぶだけの十字路をまっすぐ進んだ。



 ところどころひどく傷んだ電柱には「探しています」の張り紙や、明らかに犬のおしっこがかけられた跡などが何となく目についた。



 車もねぇ。人もいねぇ。


 

 今日は人生最良の日。


 

 俺のラッキーDAY!!



「ふっふふ~ん。ふっふーん!」



 俺はもう、この時ばかりは上機嫌だった。



 そうだ、家に兄貴が陣取っているから家に帰って俺の至福の時間-漫画とアニメに溺れる現実逃避-はほぼ不可能となった。だからと言ってそこで諦めては男がすたるし、何せ今日発売のDVDは特別なのだ!



「くぅうう~。発売延期を繰り返し、4か月も辛抱して待ったかいがあったぜ! まじクソ死ねやエリクソンフィギュア製作所!と思ったが、もはや問題ではないのだよ。フアハハハハ!! 肝煎り封入限定お色気フィギュア付。俺の愛しのレイティアちゃん」



 説明しよう。レイティアというのは、エロゲすれすれのアニメ「レイティアの涙」そして第二クルーに当たる「レイティアの涙。再来」に登場する主人公、アリスティア=レイティア・バーン・レイタークという巨乳系ツンデレ美少女戦士のことである。身長は162センチで俺と同じ、瞳の色は神秘的なヴァイオレット。白磁の陶器のような肌に桃色の唇。薄桃色のツインテールの髪の毛はまさにツンデレの王道!



 アニメ自体はファンタジー要素の濃い幻想系の内容だ。魔王がいて、魔物がいて、あちこちの町や村で悪さをしていてそれをレイティアちゃんが倒していくんだが、生い立ちの不幸さや生き方の不器用さと感情の揺れ動き具合がマニアの心をぐっとつかんで放さない。



 レイティアちゃんがこの世にいるなら、「結婚してください」ってマジ言うね、俺は。





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