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第一章 その希望は絶望に塗り替わった現実の未来  1

第一章 その希望は絶望に塗り替わった現実の未来




 この日は本当に最悪だった。

 ツイてない時は本当にツイてない、とはよくいうものだが。この日の俺は、ツイていない以上に確実に何かが絶対誰に何と言われようとも、ツイて、いたのだと思う。


 両親が先月末宝くじを当てて海外に豪遊に出かけたのを皮切りに、すでに7歳年上で誰でも知ってる一流組織に入社しあくせく働いている兄が、珍しく実家に帰った時から俺の人生は絶対におかしかったに違いない。


 俺と違って性格が極端に几帳面でまあ、イケメンと言えなくもない兄がイチゴ柄のエプロンを着て鼻歌を歌いながら対面キッチンで料理をしていた時、俺はツッコめばよかったのかもしれない。



『兄貴、そのイチゴ柄どうしたよ』



 いやむしろ、イチゴ柄ではなく、どうしてウサギ柄にしなかったのだ、と問いただすべきだったのだろうか。

 俺は冷や汗をかきながら、リビングで兄が用意してくれたカフェオレをすすりながらテレビのチャンネルを変え「また不審死が出たんだ」と感想を漏らしたような気がする。そうしたら、兄貴が綺麗に焼けた卵焼きを皿に移しながら、



「物騒な世の中ね。最近このあたりも危険って聞いてるからメグちゃんも気を付けてね」



 と語尾にハートの見えるマーク付きで柔らかに答えを返された時、俺はこうツッコめばよかったのだろうか。



『それにしても兄貴。そのエプロンイカすね。それって東京の雑貨店のもの?』



 この辺に売ってんのかなー。HAHAHA。

 とでも俺は笑っておけばよかったのだろうか。



「さ、メグちゃん。朝ごはん食べなさい。朝はちゃーんと食べないと、おっきくなれないぞっと」


 兄貴が用意してくれた味噌汁とアジの干物、プチトマトとレタスサラダ。申し分のない味に舌鼓を打ち、俺はテレビの左上の画面に表示されている時計がすでに8時30分を回って一分経っていることに気づいて驚愕した。


 さすがに目を剥いて立ち上がり、きっと兄貴を睨み付けると。



「メグちゃん」



 うる、っと兄貴は表情を曇らせ巨体に似合わない清楚な女の子のようなポーズでまっすぐに俺を見下ろした。ちなみに兄貴の身長は193センチ。バスケットボールのセミプロの選手の代わりとして呼ばれたことがあり、空手4段、剣道5段、合気道4段の腕前の警視庁所属の現役警察官である。



「ちゃんと座って食べんといかんって、何度言うたらええんじゃー。ワレェ」




 すごみを利かせてくるお兄様が怖くて、僕は椅子に座った。



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