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僕らの仮想(ゆめ)は変えることのできない現実(リアル)に。










目を覚まして目に映る景色は、何年も見慣れた自室の天井とは程遠い。やはり目が覚めたら夢でしたなんてオチはないようだ。わかってはいたがやはり落胆してしまう。部屋を出て共有スペースに向かえばまだ誰も起きてきてはいないようだった。部屋を包み込む静けさは、洸に安らぎの時を与えると同時に得体の知れない恐怖もわずかに与えていた。



―――――コンコン




部屋に響くその音は入口から聞こえてきた。誰かがこのギルドホールを訪ねてきたとすれば、恐らくは昨日合流することのできなかった仲間だろうという想像は容易にできた。




「朝早くから申し訳ありません、やっとみなさんの元へ来ることができましたわ」

「やぁ姫、会えてうれしいよ」

「僕も居ますよ、洸くん」

「姫を守るのが騎士(ナイト)の役目ですもんね。こんな状況でも相変わらずの主従関係がしっかりしているんですから、二人とも」


目の前に立つ麗しい姫君(プリンセス)と凛々しい騎士(ナイト)に苦笑にも似た表情で言葉をかければ部屋の中へと通す。二人が並び立つとそれだけで絵になるのは今もゲーム時代(むかし)も変わらないようだ。

ソファーに腰掛ける姫君の名は眠り姫。美しく物腰が柔らかな彼女は名は体を表すという諺を地で行くような人物である。睡眠というものを非常に好み、21時には睡魔に襲われてしまうお子様体質。戦闘時には両手剣を振り戦う彼女は戦場の女神とも呼ばれ、ギルド内外でマスコット(アイドル)と認識されている。もっとも、戦闘力は高くないため剣を振るうことはほとんどない。

そして隣に立つ騎士は月代。姫をエスコートする姿は寡黙な騎士(ナイト)というよりは王子のような気品を持ち合わせている。常に彼女に付き従う姿は女性たちの噂の的になるが、現実二人の関係は血の繋がった兄弟である。兄として彼女を目の中に入れても痛くないくらいに溺愛している彼は誠実そのものだった。時として彼女のために敵を殲滅する姿は血に飢えた魔物と称された。

麗しの姫君(プリンセス)と寡黙な騎士(ナイト)はその主従関係(ロールプレイ)を仲良く楽しんでいた。



「昨日はすみませんでした、こちらの姫が既に就寝の時間を迎えてしまって」

「まぁお兄様ったら、ひどいわ。内緒にしてくださいってお願いしましたのに」

「これは失礼」



昨日この二人が合流できなかったのは、まさに姫の体質によるものだった。こればかりは誰にもどうすることのできないことだった。二人にホットミルクと蜂蜜を出せば、優雅に口にする。



「あれー、姫と王子だ!おはよう、相変わらずお似合いだね!」

「あら御神さん、いつからそこに?さすが暗殺者さんですわ」

「いやー、それほどでも!今来たばかりだよ、昨日はぐっすり寝れたからね」



起きてきた御神にも二人と同じようにホットミルクを用意する洸に大げさにお礼を述べる御神は平常運転のようだ。四人で会話を楽しんでいると再び入り口から聞こえてくる音。御神がすぐさま迎えに出れば、勢いよく部屋に飛び込んでくる影。




「たっだいまー!此処ってこんな感じなんだね!」

「わー、元気だった?やっと会えたね!」




御神に似た雰囲気を持つその人物は、叫ぶだけ叫べば御神と再会(?)のハグ。



「離れろ、カイル」

「そうよ、女の子なんだから少しはお淑やかにしなさい?」

「こんにちは、要さん華乃さん」

「私たちで最後よね?遅くなってごめんなさいね」



ようやく揃った最後の仲間たちは三人。最初に飛び込んできたのはドワーフの武闘家はカイル。最年少メンバーはやんちゃなボクっ子。若さ故か、はたまた持ち合わせた性格か、突っ走りがちのことも多い彼女ではあるが戦闘センスは高い。御神と似た彼女は田舎への憧れからサブ職を農家に設定している変わり者。

後からやってきたのは盗剣士の要。長身で細身で美形、しかし女性である。所謂男装の麗人である。一つに結われた漆黒の黒髪は彼女の妖艶な美しさを際立たせ、擦れ違う者を魅了した。彼女には多くのファンが存在し、アキバの街にはファンクラブが組織されているという。

最後は施療神官の華乃。最年長メンバーでありみんなの良いお姉さんであり、保護者であった。ちなみに完全回復(フルリカバリー)の令嬢という二つ名持ちである。のほほんとした性格で、彼女の周りの空気は浄化されているかのような感覚にさえなる。




全員が集合すればようやくいつもの〈追憶の彼方〉になる。

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