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「なら、その日は俺らも宴会すっか」






洸が大神に伝言を伝えると、自分たちの宴会を提案された。考えてみれば、女性陣が自由にのんびりするのであれば自分たちも同じようにしたって構わないだろう。その日の夕食が男性陣だけになるのであれば、いっそのこと最初から宴会にすると割り切って準備をした方が大神の負担も多少減るだろう。その提案はすぐに残りの二人にも伝えられ、大神が料理を、月代が飲み物、御神は自分のとっておきを用意すると張り切っていた。洸は部屋の提供を命じられ、自分はそれだけでいいのかと思いつつもこれ以上何を用意すればいいのかもわからない為甘えることにした。














「それじゃあかんぱーい!」



御神の音頭で始まった宴会は、それぞれが楽な格好で集まっていた。御神がどこで調達してきたのか、茣蓙とちゃぶ台を用意してきたため男性陣の宴会は胡坐を掻きながらのものになった。御神の用意したのは茣蓙にちゃぶ台に赤ちょうちん。洸の部屋に真っ先に乗り込み、一人楽しそうに準備している御神の姿を洸は横で見ていた。洸の部屋は今夜限りの居酒屋のような風貌へと変化していたのだ。



「それにしても、今日の料理も美味しそう。兄貴の特製ダレに付け込んだお肉もあるみたいだし」

「お前らから聞いたリクエスト以外は居酒屋メニューで作ってみたんだぜ」



今日のメニューは大神特製ダレに付け込んだシカ肉、酢の物、焼き鳥、干物の焼き物に枝豆。他にも用意されているが、どれもこれも男受けは良く女受けはあまり良くなさそうなものばかりだ。いつもであれば女性陣のことも考えバランスの良い野菜多めのメニューだが、今日ばかりは自分たちが思い切り楽しめるようなメニューを大神は用意していた。月代の用意したお酒はどれも料理に合いそうで、女性陣とは違いちびちびと呑み進めるようなものばかりだった。男性陣は意外にも全員呑兵衛で、オフ会でも日本酒やウイスキーなどを各々飲んでいた。



「あれだね、大地人の技術も上がってきて洋酒に近いのも楽しめるようになってきたね!お酒の種類が増えるのはいいことだよね、ほんと」

「御神は洋酒の方がどっちかって言えば好きだもんね。でも、月代さんよくこんなに揃えましたね」

「あぁ、実はいい店を見つけてね。店主とも親しくなったので、とっておきを譲ってもらったんだ。なるべくそれぞれが好きそうなものを選んできたつもりだったから、喜んでもらえて良かった」



普段は口数の少ない月代も、飲んだ時はいつもに比べて饒舌になる。恐らく女性がこの姿を見たら普段とのギャップに、好意を寄せるものも少なくないだろう。







「は、お前マジか!なんで早く言わねぇんだよ!」


大神の大声の原因は御神であり、当の本人は耳をふさぐ仕草でおどけている。実は、カンナの部屋で尊が交際宣言をしたのと同じ時、大神もその事実を告げたのだ。もちろん、御神も隠すつもりなどなかったのだが気恥ずかしくなってしまったのだ。今おどけてみせているのも照れ隠しなのだろう。

大神に根掘り葉掘り聞きだされている間、洸と月代はこのギルドにも新たな春がやってきましたね、なんてのんきに話している。どちらも成人している為恋愛に口を出すつもりはないが、それでも仲間のめでたい話に喜んでいる。公私共に(もっとも、此処での暗殺者の仕事を公とするかは定かではないが)良いコンビが誕生したのだ。



「はぁ、しかしなんだ。お前も洸も近くにパートナーがいて羨ましい限りだぜ。俺も彼女に会いてぇよ」

「それは僕も同感ですね。もう何ヶ月も会えてないですから」

「そういえば、二人も彼女居たんですもんね」



大神の彼女は建築家であり、こちらはまさに文字通り公私共に良きパートナーである。既に相手の両親にも挨拶を済ませている間柄である為、正確には婚約者である。オフ会以外でも頻繁に連絡を取り合っていた洸は何度か顔を合わせたことがある。もっとも、大神の携帯電話の待ち受けは彼女の写真に設定されているので他の二人も顔は知っている。どこか大神に似た雰囲気の女性で、大神によれば少し気が強いらしい。

一方の月代の彼女は保育士であり、大学時代に出会った仲である。元々月代には許婚が居たのだが、あくまでも家同士が決めただけの関係であったため彼女ができたときに正式に断ったという。許婚の相手側も貰い手が無かったら程度にしか考えていなかったようで、月代の申し出を承諾してくれたらしい。彼女とは結婚も考えているようだが、お互い仕事がもう少し慣れてからと決めていると言う。



「たまに考えねぇか、あいつ今頃どうしてんのかなって」

「もちろん、考えますよ。でも、彼女はきっと強く前に進んでくれているんじゃないですかね」

「それは俺んとこもそうだろうな、あいつ俺よか強ぇんじぇねぇかと思う」

「兄貴も王子も、なんかなんかいいね!大人の余裕的な?俺もそんな大人になりたいんだけど!」



多分ずっと子供のままなんだろうと三人が思った瞬間だった。もっとも、大人な三人は口にはしなかったが。



「僕、時々思うんですよカンナと結婚するんだろうなって。でもそれが何年先かわからないし、二人の話が羨ましいんです」

「お前らなら確実だろ?だってお前らお互いに理解し過ぎってくらいに理解しあってるじゃねぇかよ」

「そうですよ、洸くんとカンナさんは心配する必要ないですよ」



洸もカンナとの将来を時折考えることがある。ずっと一緒だったからこそ、このままずっと一緒にいることを強く望んでいる。この先、カンナが隣に居ることが今までのように当たり前ではないときが来ることが洸にとっては怖いのである。

もっとも、そんな不安もカンナが隣に座り笑顔をみせてくれるだけで吹っ飛んでしまうのだが。









「よし、明日の朝飯は各自でってことになってんだ!今日は潰れるまで飲むぞ!」

「そんな飲み方は久しぶりかもしれないですね」

「いいね!今夜は盛り上がってこー!ほら、洸くんも!」

「そうですね、こんなことなかなかできませんからね」



次の日、ダイニングで潰れている姿を女性陣に目撃された四人だった。







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