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「私、ソウ様とお出かけできますか?」







その日、オープンしたばかりの洸と華乃の店・縁は繁盛していた。どんな状況であっても女性と言うものは強く、そして占いが好きだった。今日だけでも既に十を超えるソウジロウ=セタ相手の恋愛に関する占いにはさすがの洸もうんざりし始めていた。ハーレム体質の彼は常に女性を侍らせていてそのポジション(いわゆる親衛隊)に就きたいと願っている者は多く、自分も彼の近くに行けるかどうか占ってほしいという者が多いのだ。もちろん占えと言われれば占うが、余りにも同じ内容が続くものだからなんとコメントすればよいものかと語彙の枯渇に悩んでいたのだ。




「そうですね、占いの結果を見ると…。うん、あなたは彼との相性はまずまずといったところです。ただあなたは奥手のようですが自分で行動を起こすことが必要のようです。ただし、水との相性が良くないようなので水関係の場所に誘ったりするのは控えた方がいいですよ。もっとも、これは今週を対象期間にして占ったので来週のことはわかりかねますが」

「ソウ様に自分からお誘い、私にできるかしら?」

「大丈夫ですよ、そうだ甘い物を食べるのに誘ってみたらいかがですか?そこの大神庵のあんみつが評判ですよ?」

「あんみつ、誘ってみます。ありがとうございました」

「いつでもご利用ください、それではお代は金貨2枚になります」




お客の女性が席を立てばまた次のお客。どれも同じような内容であるのだが最後に大神の店を勧めることや、料理人であればカイルの野菜や要の包丁の宣伝も怠らなかった。これで上手い事転べばそれぞれの店に恋愛成就の噂が流れることを想定しているのだ。





「こんにちは、お久しぶりです洸さん」

「あれ、ソウジロウくんじゃないですか。いらっしゃいませ」

「占いのお店始めたんですね。ボクも占ってもらえますか?」

「もちろんいいけど、今日は一人で来たの?」

「いえ、みんなはあっちで食事してますよ。それより、最近ボクへのお誘いに大神庵へのあんみつを食べるデートが多いのは洸さんのせいですよね?お出かけするのはいいんですけど、毎日毎日大勢で並ぶわけにいかないじゃないですか。責任取ってくださいよ!」

「え?あぁ、ごめんね。みんなソウジロウくんとデートしたいみたいだったから自分のおススメをアドバイスしてあげたんだけど」




営業時間最後のお客は占いの相手方No.1のソウジロウ=セタ本人だった。いつもの親衛隊たちは大神庵で食事をして待っているようで売り上げに貢献してもらっているらしい。洸としてはソウジロウ=セタがまさか来るとは思っていなかった為驚いたものの、内容が占いでなく抗議という名の相談だった為に少し気が楽になった。ゲーム時代から知り合いであり大災害後も念話では何度か会話をしていたものの、考えてみれば会うのは久しぶりだった。話を聞けばやはり相変わらずのハーレム体質で毎日女性たちとどこかしらに出掛けており大神庵も何度か利用してくれているようだった。とは言え、オープンから一か月が経っても未だに行列が出来ることも多い大神庵にソウジロウ=セタと複数人の女性が毎日のように並べば売り上げは上がるが回転効率が良いとは言えないだろう。




「嫌いではないですけど、毎日毎日あんみつはさすがにキツいですよ」

「なら、いっそのこと一気にデート済ませたらどう?このままだと一週間はあんみつのお誘い続くかもしれないんだ。今日も何人かに言っちゃったし」

「そうなんですか?確かに、少し悪い気もするけど一回あんみつデートはリセットしたいですからね。でもどうしたらいいんですか?」

「一日貸切、でどうかな?もちろん会場料は取らないし、あんみつとかは事前に言ってくれれば用意はするよ。お会計は基本的に料理の分だけでいいし」

「いいんですか?一日貸切って営業どうするんですか」

「大丈夫、うちは一日おきの営業だから店休日にやればいいからさ。でも朝一とかは大変だからおやつの時間にしてくれると嬉しいけどね」




ソウジロウ=セタへの申し訳ない気持ちへのお詫びと同時に洸の中では別の考えもありこの提案をしていた。それは、店を貸切にして宴会を受けるという試みだった。各自のギルドホールで宴会をするのが今のアキバの街だは当たり前だったが、ゲーム時代は大規模戦闘(レイド)後に打ち上げと称してオフ会をすることが多かった。それをこの場所でも出来るようになればと考えたのだ。現在その手のことをしている店はない為いい商売になると見込んでいた。言い方は悪いがソウジロウ=セタで実験的し改良したいと考えてるのだ。これは営利目的というよりはそういうことを出来る場所を洸が作りたかっただけなのだ。みんなが騒げて片づけもいらない場所を。




「じゃあお願いしようかな。洸さんのとこの料理美味しいし。人数とか決まったら連絡しますね、あと料理も」

「お詫びの意味もあるからサービスするよ」

「よろしくお願いしますね。そういえば洸さんはなんで<円卓会議>に参加しなかったんですか?洸さんなら誰も異存はなかったと思うけどな」

「だって大変じゃない、色々と。シロエくんみたいに僕には出来ないよ。僕は僕の仲間(家族)を守ることで精いっぱいだしね。もちろん協力を惜しむつもりはないけどね。それに僕のギルドは両手で足りるくらいにしかメンバーが居ない零細ギルドだからね」

「零細って、十分すぎるくらいのスペックじゃないですか。ま、洸さんならいつでも助けてくれそうですし」

アキバの街(ここ)にいる人は決して敵ではないからね。ソウジロウくんだって僕の大切な人だよ?」

「それは光栄です、たまにはボクとも遊んでくださいね。シロ先輩のことは招待してるって聞いてるんですから」

「いつでも来てくれたらいいのに、ナズナさんとかなら一緒でもいいよ。じゃあ、今日はこんなところで。占いに来たのに相談になっちゃったね」

「そうですね、なんかすみません」

「いえいえ、僕も久しぶりで楽しかったし」




席を立ったソウジロウ=セタについて行けばもう帰ることにしたらしく、後について行く女性の数に驚かざるを得なかった。まさにぞろぞろとついて行く、という状況だったのだ。


三日後に開催されたお茶会は一度では入りきらない人数の参加となり、入れ替え制の二回となった。ちなみに、大神庵は50人程度入ることが可能である。このお茶会が好評で、SFCの情報網により噂が広まりその後も何週間かに一度大神庵で大規模お茶会(一斉デート)が開催されるようになった。







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