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Night  ~Eternal friendship~  作者: karuno104
第11話 「ピンチ ピンチ? ピンチ!」
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11-2 ロウの翼を失くしたあの人みたいに

「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 我ながらみっともない叫び声だとは思う。

 けど、そんな些細なことなんて気にしてられない。

 なにせ俺は今――




 真っ逆さまに落下中だから。




 薄い雲が流れる薄紫色の空と、灰色の点と線が散らばる暗いピンク色の地面。

 黒い塊によって飛ばされた場所は、それだけが延々と続く世界の上空だった。

 故に、空を飛べない俺は重力に従って落ちている――というわけだ。


「マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 俺は思わず頭を抱えた。


「確かにスカイダイビングには興味あったけど! やってみたいと思ってたけど!

 さすがにパラシュート無しはノーセンキューだよ!」


 まだ大分距離はあるが、徐々に地面が近付いてきている。このままでは俺の死因が決まってしまう。


 ……どーでもいいけど、前回の鉄球といい今回の落下といい……なんでグロい死に方一択なのかね。妖魔は潰すのが好きってか? マジ趣味悪いな。


 落ち着くためにも、俺はなっがい溜め息を吐き、


「……こうなったら懸けるしかない……」


 ぼそっと呟き、一度目を閉じる。

 これだけの高さから落ちれば、肉体強化を使っても無事に着地出来ないことくらいわかっている。助かるためには他の方法を考えなければならないが……非常に残念なことに空中で出来ることなど何もない。

 ――となると、残る手段はたった一つ。


 すなわち、落下地点に期待する。

 例えば、地面に見えるピンク色が実は海とか。それなら、落ちた瞬間は痛いと思うけど、なんとか死なずに済むかもしれない。あとは、スポンジみたいな柔らかいもので出来てるとか、地面付近だけ重力が無くて浮けるようになってるとか。


 ……いや、自分でもわかってるよ……そんな都合のいい話あるわけないって……

 でもしょーがない。現実逃避したくなるのはしょーがない。

 前にも言ったし、何度でも言うけど、俺はまだ死にたくない。

 こんな絶望的な現実を素直に受け入れられるほど、俺は人生に満足してない。


 だってまだ、シンの力になってないし、リンさんの笑顔だって見てないんだぞ!

 だから諦めるわけにはいかないんだ!


「頼むぞ俺の強運……っ!」


 助かる手立てがあることを願い、風圧でちょっと目が痛いけど真下を見やる。

 まだ遠くてピンク色が地面なのか海なのかはわからないが、ところどころに混ざっている灰色の正体は見ることが出来た。


 灰色の点と線。

 それは一切葉の付いていない木だった。枝も幹も細長く、枝が十本くらいしかないところは同じだが、全体像はてんでばらばら。まるで見本のようにまっすぐ立っているのもあれば、小さい子供がてきとーに書いた線のようにぐねぐね曲がっているものもある。どの木も他の木とそこそこ距離を開け、ぽつんと立っていた。


 あの木を上手く使って落下の衝撃を和らげることが出来れば、助かるかもしれない。というかそれしかない。助かりそうな案が他に思いつかない。


 成功する自信はあんまりないけど……やるしかないよなぁ……


 見れば、幸いにも丁度真下に一本生えている。しかも非常に好都合なことに、その木はまっすぐピーンと立つタイプで、枝の数も、正確にはわからんが十本は超えている。つまりそれだけ減速するチャンスがあるってことだ。


 さすが俺の運、よくやった。


 ガッツポーズをつくり自分を褒めたところで、助かるための手順を考える。

 まず、このままでは完ぺき体にぶっ刺さる木のてっぺんを気合でかわし、俺から見て左側に伸びている枝(一番高い位置にあるように見えるから)を頑張って掴む。勢いがありすぎて、多分――いや、確実に手と腕がめっちゃ痛いと思うけど……まぁこの際仕方ない。痛いの嫌い、なんて言ってられないからな。

 で、枝を掴んだらそこを支点に半回転し、両足を地面に向ける。その時恐らく、衝撃に耐えられずに枝は折れると思う。木がしなやかタイプのやつだったら折れないかもしれないが、どちらにしろ一本目で止まれるとは思えないので――というか絶対に肩が外れるので、二本目三本目と掴めそうな枝に飛び移っていき、少しずつ減速していく。


 ――よし完璧! これならいけそうだ!


 助かる自信が出てきたところで、一面に広がるピンク色がなんなのか、はっきり見えるようになる。俺はてっきり、色が変な土だと思っていたが――実際はなんと驚き、水である。海のように波は立っていないが、プールのようにゆっらゆら揺れているから間違いない。ただ、透明度がほぼゼロのため、どれくらい深いのかはわからない。


 つーわけで、水だとわかっても計画は変更しない。足を付けてもくるぶしまで浸からないくらいすっげー浅瀬の可能性もあるし、どちらにしろ減速するに越したことは無いし。


 さて、そうと決まれば――

 俺はバッと両手足を広げ、体全体で大の字を描く。スカイダイビングやってる人はこうやって落ちてたからってのが理由。何の効果があるのかはわからないけど……まぁ、見よう見真似ってやつだ。

 それから約一分後、俺の心臓辺りに狙いを付けているてっぺんの枝が手の届く距離に入った。


 ――瞬間。

 左手を突き出し、てっぺんの少し下を掴む。そのまま全力で押し込めば、ぎりぎりだが左側へと逸れる。反動で傾きかけた体を根性で直し、目下に迫った横一直線の枝に両手を伸ばす。俺の腕よりやや太い枝をガシッとしっかり握り――

 うわくっそ手がいてぇ!

 作戦通り、鉄棒をするつもりで足を振り下ろし、両手を支点に半回転。全体重が腕にかかるその前に手を離し、正面の腹辺りにある次の枝に掴みかかる。同じように枝の下まで回転し、しかし今回は手を離さずに両腕に力を込める。


 をぉぉぉぉいってぇぇぇぇ! 肩外れるぅぅぅっ!


 痛みを気合で我慢して、数瞬後には手を離す。ちらっと下を確認すると、およそ三メートル下に他よりちょっと太く長い枝があり、その向こうにはピンクの水が見えた。つまり、使える枝はあと一本。この二本目で大分減速出来たはずだから、あとはあの最後の枝を軽く蹴ってクッション代わりにしてから落ちれば――


「……っ!」


 そう考えた途端、背中がぞくっとした。

 俺は慌てて計画を変え、最後の枝に着地した。半端ない痛みが両足を襲ったが、幸いにも骨は折れなかった。ついでに枝も折れなかった。かなり頑丈な木のようだ。

 それから俺はしゃがみ込んだそのままで、すぐ横の幹に右手をかけ、下に落ちないよう体を支えた。次いで少し集中し、じんじん痛む手と腕と肩と脚に回復をかける。徐々に引いていく痛みと、死ななかったことに心底安堵した。


 そして全身から痛みが消えた後、俺はなっがい息を吐いてゆっくり立ち上がった。

 一階分くらい下にある水面をじっと眺める。


 なんだろう……すっげー嫌な感じがする……


 突然異世界に飛ばされた時のため、物質召喚でしまっておいた着替えの黒いティーシャツを左手に現し、なんとなーく落としてみた。すると――


 ぼわっ


「げっ」


 水に触れた途端、まるで炎に突っ込んだかのように瞬時に燃えて消えてしまった。どうやらあの水、火の液体バージョンらしい。さながら熱くない溶岩ってとこか。岩とか鉄なら大丈夫そうだが、人間は確実に燃えるだろう。この変な木だけが燃えないのは、きっと相性かなんかがぴったり合っているんだろう。


 あーよかった、落ちなくて。ナーイス俺の勘。


 ほっと胸を撫で下ろし、同時にフィルを庇って良かったと思う。

 俺は運動神経も勘もかなり良いからなんとか助かったけど、フィルは俺とは違うからな。もしここに飛ばされたのがフィルなら、きっとなす術もなく死んでいただろう。


 ……いや、別にフィルをバカにしてるわけじゃないぞ。単純に、フィルが『僕は弱いよ』って言ってたから、そうなるんじゃないかなーって思っただけ。まぁ、もしかしたら頭の良いフィルなら、万が一を想定してパラシュートみたいな物を持っているのかもしれないけど。

 でも、水に落ちた時点でアウトだからなぁー……やっぱ代わっといて良かった。


「さーてっと」


 気持ちを切り替え、きょろきょろ辺りを見回す。

 異世界か異空間かはわからないが、ここがさっきまでいた世界でも要塞の中でもないことはわかる。広さてきに。


「どーやって戻ればいいんだ……?」


 遠い目をして呆然と呟いた。

 周りには燃える水と、大体五十メートルずつ距離を置き、孤独に生えている木しかない。

 転移が使えるならあっさり戻れると思うんだけどな。残念ながらまだ使えない。

 俺は幹から手を離し、腕を組んで首を傾げ、うーん、と唸る。

 しばし悩んだが、良い考えは何も浮かばなかった。


「……しょーがねぇ」


 ふうっと息吐き、腕を解く。

 正面方向に立つ木を見据え、肉体強化を使って勢いよく跳ぶ!

 そして目測通り、二本目の木のてっぺんに近い枝に着地。幹を掴んでバランスを取る。


 ふふふ……どうよ、凄くね?

 術を使えばこれくらいの距離、余裕で飛び移れるんだぜ。

 つっても、一週間前までの俺なら出来なかったけどな。精神世界でたまたま最大ジャンプ距離が測れたから出来たんだ。


 ――とまぁ、そんなことより。

 今度は正面右にある木に目をつけ、同じように飛び移る。

 なんも思いつかなかったからな。とりあえず、てきとーに移動することにしたんだよ。木が無くなったら終わりだけど、立ち止まってるよりはいいだろ。


「出口とかあるといいんだけどなぁ……」


 淡い期待を抱き、俺はひたすら真っ直ぐ進んだ。

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