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Night  ~Eternal friendship~  作者: karuno104
第7話 「フィルの困惑」
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7-3 特別  - No side -

「……意外だったな」


 華月が部屋を出て行った後、しばらく経ってから矢鏡が言った。

 フィルは軽く首を傾げ、


「何がだい?」

「お前は実験以外に興味を持たないと思ってたから……"特別な相手"がいるとは思わなかった」

「それくらいいるよ。僕も人間だったんだ。好みだってあるさ」

「…………」


 矢鏡は疑うような眼差しでフィルを見つめた。

 フィルは少し考え、


「……そんなに意外だったの?」

「あぁ」


 矢鏡は即答した。

 フィルは再び考えて、それからふふっと小さく笑った。


「変なことを言うね。好みが無いなら、君達を友人だとは言ってないよ」

「……それもそうか」


 矢鏡は素直に納得した。

 それから間もなく、部屋の扉がノックされた。二人は扉に目を向けて、数秒後に銀のトレイを左脇に抱えたクラウスが部屋に入ってきた。矢鏡に許可を貰ってから空いた三人分の食器を片付け、一礼して出て行った。

 しばらくは静寂が続き、ふと、あることに気付いた矢鏡が口を開いた。


「――そういえば、フィルはなんでここに来たんだ?」


 言って、不思議そうな顔をフィルに向ける。


「お前、一人が好きだろ? 華月が心配だったのか?」


 そう尋ねると、フィルは左右に首を振った。


「華月じゃない。僕が心配しているのは――君だよ」

「……俺?」

「そう」


 フィルはにっこり笑い、一拍の間を開けてから言った。


「精神的な話だけど――

 君は華月と違って、あまり強くはないからね。その上すぐに無理をしようとするから、止める人と支える人と、理解してくれる人が傍にいた方がいい。――とは言っても、その役目はエルナの来世である華月にしか務まらない。でも今はまだ、彼は君を理解しきれていないから……それまでの代わりになればいいなと思ってさ。僕では力不足だろうけどね」

「…………」


 矢鏡は十秒ほど固まって、


「……俺はそこまで弱くないよ」


 そっぽを向いてから蚊の鳴くような声で呟いた。

 フィルはふふっと言って、にぃっと笑った。

 矢鏡はその笑みに気付かなかった。

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