今日から大人で管理人の一人です
番外編に出てたオリキャラの霊歌、すでに霊夢の許に居る感じです。
真っ直ぐに空を昇る。
雲までなんて高さは目指さない。
八雲の家の庭から飛び立ち、幻想郷の端まで見えそうな位にまで。
屋根に上って朝日を見た時よりも高くから見る景色。
妖怪にとってはあっという間の歳月、人間にとっては短くも無い歳月。僕が幻想郷に帰って来てから三年は過ぎて、二十歳になった。
帰って来てすぐに風邪を引いた事や色んな友人達と再会し、新しい友人達と出会ってきた事を思い出しながら。
幻想郷を一望出来る程の高さにたどり着いた僕は上昇を辞め、ぐるりと東西南北を見渡す様に回転。
右手に持った、結界の札に気と妖力と霊力のハイブリットエネルギーを集中さて天に掲げる。
「今日から僕も幻想郷の管理人に仲間入りか……」
掲げた結界の札から放たれた光線が更なる上空へと走り、幻想郷を囲む結界に接触。結界と言う名の見えない壁に光線の接触部分を中心に幾つもの波紋が生まれ、その波紋は限りなく遠くまで広がっていく。
「管理人と言っても、僕の主な担当は有事の際に力を振るう事なんだけどね」
必要な知識は勿論覚えるけれど、頭の回転と言うか考える仕事はいつまで経っても紫姉さんと藍姉さんには勝てそうにないからね。
あの二人を相手にすれば、僕が脳筋寄りになるのもしょうがない。うん、しょうがない。
そこまで考えた所で、紫姉さんから結界へのエネルギーの注入はもう大丈夫だと念話をもらいエネルギーの放出を辞める。
地上……と言うか八雲邸の庭先に降りると、待っていてくれた紫姉さんが早速と言わんばかりに抱きしめてきた。
半人半妖に成長期があるのか知らないけれど、僕はここ一、二年でいっきに背が伸びた。
昔は紫姉さんの胸に顔が埋まる身長差だったけれど、今となっては殆ど頭一個分僕の方が背が高い。
「太助! 凄いわ凄いわ!!」
紫姉さんのはしゃぎようから喜んでくれているのだろうけど、何が凄いのか判らない。後、抱きしめたまま跳ねるものだから胸の感触が酷い事になってるよ?
え? 寧ろ当ててる? そう……。
「紫様、それでは何が凄いのか伝わらないかと。太助、お前が結界に注いでくれた力の量が私と紫様の二人がかりで注ぐ以上の量であり、いわゆる冬眠期間が激減する事実に紫様も喜んでいるんだ。勿論、私もだぞ」
「え? そんなに? 自覚が無かったんだけど……凄い事になっちゃったね」
「ああ、凄いぞ。よくそこまで成長してくれたよ」
紫姉さんと藍姉さんが本当に嬉しそうな笑顔を見せてくれて、僕自身も師匠こと美鈴さんと鍛錬を続けてきた甲斐があって嬉しいよ。
「ほえー。太助様凄いです……」
そして姉さん達に遠慮して少しだけ離れた位置に立っていた橙ちゃんも褒めてくれた。たぶん、具体的には理解していないのだろうけど。人間や半人半妖だけど成長期(?)だった僕と違って、橙ちゃんの容姿は昔から特に変わっていない。
そうそう、橙ちゃんだけど妖怪の山で面倒を見ていた猫達を使役出来るようになった際に八雲邸で一緒に住み始めたんだ。
何というか、おっちょこちょいな部分があって当初は笑いを堪えきれない事も多かったもんだ。
「さぁさぁ。名実ともに八雲家の一員だったけど、今日からは幻想郷の管理人の一員になった太助にご褒美も兼ねて大人になる儀式も済ませなきゃね」
「儀式? そんな事聞いてなかったけど」
紫姉さんの言葉に疑問を持った所で、藍姉さんが一足先に準備をして来ますと言ってから家の中に入っていった。ちょっとした事であるけど、僕や橙ちゃんはついつい縁側から屋内に入ってしまう事もあるけど姉さん達はしっかりと玄関から入る事を守っているから大人だなぁと思う。
「聞いてない事だからやらないとは言わないけど……儀式とはどう言う事をやれば? それに準備とかは?」
結界を維持する力の充填をやり遂げた時も嬉しそうだったけれど、今はそれ以上に上機嫌な様子に聞くと、そんな僕の質問にうふふーと嬉しそうに笑顔を向けてくる。そうだ、と一転まじめな様子に切り替えて橙ちゃんに紫姉さんは指示を出した。
「橙、これからやる儀式は貴女にはまだ早いわ。だからマヨイガに向かうなり人里で上白沢の所なり遊んでいらっしゃい。事が済んで落ち着いたら藍に迎えに行かせるわ」
「はい! 判りました!!」
元気に返事をすると橙ちゃんは頑張って下さいと僕に激励を一つし、飛び立って行った。
「さ、私達も向かいましょうか」
そう言って僕の手を掴み、歩き出そうとする紫姉さん。質問の答えがまだなんだけど……。
「まともに答えてもらえてないんだけど、どこで何するのさ? 僕が準備する事は無いの?」
「準備だなんて、邪魔されない空間とお布団があればじゅうぶんよ」
ふ、布団? 儀式だよね?
……。
…………。
………………。
橙ちゃんを迎えに行ったのは、翌日になりました。
大人になる儀式とは……!?(嫌いじゃぁ無いけどいざそれっぽい事書こうとすると恥ずかしかった私です)




