お仕事一日体験をします
なんだかんだ五十話までもうちょい。それにお気に入り登録がじわじわと増えてて歓喜してます。
投稿ペースを考えると、登録解除しないで気長に待ってくれる皆様に感謝ですね。ありがとうございます!
人里のある一角の出来事。
「ぐぁぁああぁぁ!!!」
「お、おじいさぁーーん!?」
八百屋のおじいさんと僕の叫び声からちょっとした一日体験が始まった。
「あら、太助ちゃんじゃない。八百屋の店主はどうしたの?」
「開店準備中に腰を痛めた様でして。そこに居合わせたものでお手伝いです」
正直言って僕の方は覚えきれてないけど、人里のほとんどの人が僕の顔を知っている。特に悪い事でも無いからいつもの調子でお客様に対応。
内心、大人の対応で僕も成長したかなーと考えながら指定された野菜を慣れない手付きながらも包んでから代金と引換に渡す。
――霊夢ちゃんが。
「はい。人参と玉ねぎとジャガイモね」
「巫女様も、ありがとうね」
野菜を渡したお客さんが今度はお肉屋さんの方に行ったのを見た霊夢ちゃんが一言。
「今夜は肉じゃがかしら」
かもね。人里にはまだカレーは広まってないし、洋食は基本紅魔館とアリスの所で見かけるかくらい。
今度レミリアさんが紅魔館の収入源として洋食屋さんを出店する予定らしいのだけど、僕ならカレーを予想する具材でも洋食に触れる機会が無かった霊夢ちゃんからすると基本和食が想像される。じゃなくて。
「そう言えば霊夢ちゃん。気づいたら手伝ってくれてたけど、用事があったから人里に来たんじゃないの? どうしてここに?」
「あら、太助さん。博麗の巫女は基本神社に居るけれど、太助さんが居る所に博麗霊夢よ? 太助さんには悪いけど、その質問は愚問よ!」
「どう言う事なの」
「判らなかった? んん、太助さんを責めるつもりは無いわ。攻めるつもりならあるけど」
「ごめん霊夢ちゃん。本当にどう言う事なの」
霊夢ちゃんが嬉しそうにお店の中で両手を広げてクルクル回り始める。ああ、天井から紐で下げてるお金入れる籠に手が……ああ……お金がバラバラに! ってあれ? 落ちた筈のお金が消えた!?
「霊夢。何があったのか判らないけど、太助に迷惑をかけては駄目よ」
お金が!? って顔でキョロキョロしていた僕と霊夢ちゃんだったけど、かけられた声で地面や商品と言うか野菜を並べている台に向けていた顔を上げる。
「あ、咲夜」
どうやら咲夜がわざわざ能力を使って散らばったお金を回収してくれたみたいだった。お金を入れておく籠にまとめられていたのをチラッと確認してありがとうと一言伝える。
「あら、どこぞのメイドじゃない」
「買い出しに来たのだけど……どうして太助と霊夢が働いてるの? 店主も居ない様だし」
咲夜の疑問はもっとも。朝、八百屋のおじさんがぎっくり腰になって現場に居合わせた僕が予定も無かったから手伝いを申し出た事。そして気づいたら霊夢ちゃんが隣で一緒に接客をしていた事を伝えた。
何故か咲夜は呆れた視線を霊夢ちゃんに向ける。ひょっとしたら霊夢ちゃんの神出鬼没具合に呆れているのかもしれない。
「そうだったのね……。太助が店主の代わりに働いているのなら私も――と言いたい所だったけれど、お嬢様達を放ったらかしにもできないわ」
「咲夜には咲夜の仕事があるさ。手伝ってくれるなら、それはそれで嬉しいけどね」
「ふぅ……神社に居なくても問題無さそうな霊夢が羨ましいわ」
「今日の巫女の業務はお休みよ」
胸を張って応える霊夢ちゃんと、霊夢ちゃんに対してじとーっと視線を向ける咲夜。二人の様子を見ていたらついつい苦笑が。
僕の様子に気づいた咲夜が頬を少し赤らめ恥ずかしそうにして二人のやり取りは終わった。そのタイミングで営業スマイルを浮かべて改めて声をかける。
「それじゃあお客さん。今日はなんにしましょ?」
――咲夜が買い物を終えて帰った後、三十分もしないうちに何故かレミリアさんにフランが来た。疲れた顔した咲夜とパチェを連れて。
どうしたのレミリアさんにフランも。え? 総出で来てくれたって? あれ? 総出の割には美鈴さんとルビは? お留守番? いやまぁ確かに門番が居ないと危ないだろうし妖精メイドに指示する人も必要だろうけど……。え? 手伝ってくれる? え、いや、うん。ありがとう……。
それからレミリアさんとフランと霊夢ちゃんが役割分担を決める為に三つ巴の弾幕ごっこを始めたり、よろめいたパチェを支えていたらレミリアさんと霊夢ちゃんがパチェを連れていって二対一の弾幕ごっこを始めたり(パチェが何でよ!? って叫んでた)、フランが買い物に来たおじさんおばさん世代に可愛がられてたり。気づいたらすぐ傍に霊夢ちゃんか咲夜が近づいていたりした(時止めの咲夜と違って僕のけわいを感じ取る程度の能力でも気づけない霊夢ちゃんがたまに怖い)。
今日の八百屋さんはいつになく騒がしかったけれど、そのおかげか人が集まって八百屋のおじいさんが儲かった儲かったと喜んでくれた様で僕の方としても良かった良かった。
それからの事。毎日では無いけれど、パチェを引き連れたフランがおじいさんの手伝いと言って八百屋さんで働いている姿を見かける様になった。
うん、フランが楽しそうで何よりです。




