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外伝 紫と藍と幻想郷・続

 今回は三人称のつもりで書いてます。






 紫は海を渡ってきた九尾の狐と思われる美女(退治屋曰く)に会いに、妖怪退治屋に教えられた野道を移動していく。


 人違いならぬ妖怪違いならば力量次第で勧誘、求める力量が無ければ幻想郷に向かわせるか性格が最悪ならば即消滅か。そして念願の相手ならば第一印象は大事だろうな……等と考えながら歩いていたら、件の廃屋を見つけた。


 退治屋の農民が使っていたのだろうと言う言葉通りか、朽ち果てた畑が家の近くにあった。そして家の外見や乱雑に放置されている周辺の光景は正に廃屋。人が住んでいる様には見えなかった。



(ふむ……ちょっと霊感が強い程度の人間では気づけない程には隠せては居るけれど……確かに、中に妖気を感じるわ)



 そう内心で確信した紫は家の中から感じる妖気以上に、気持ちが惹かれるものに気付いた。


 朽ちた家の窓は開かれっぱなしで、そこから何やら美味しそうな香りが漂ってきたのだ。



(そう言えばお昼時かしら……萃香から情報を貰ってから時間何か全く気にしないで行動していたわね)



 そんな事を考えながら、妖怪である紫が少し力を込めれば容易く壊れそうな戸を叩く。すると中から返事が聞こえてきた。少々お待ちをとの声の通り、少し待てば戸が開かれた。


 紫の眼前に現れた女性。なるほど確かに、退治屋達の言う通り中々お目にかかれない美女だ。紫は内心納得した。決して、負けたとは思っていない。勝負しようと思っていなかったのだ。勝負もしていないのだから負けてなんか無い。気持ち涙目である。



「おや、この様な場所に女性が一人で如何しましたか?」


「ええ……妖怪退治屋に女性が一人、廃屋に居たと聞いて来ましたの。私も目的有っての旅のモノ。どうかお話しませんこと?」


「目的有っての旅ですか……。まぁ何、こちらも不都合ではありません。貴女が言った通り、退治屋が先程まで居た為に食べ損ねた昼食を今用意していたのですよ。良ければ、ご一緒に食べましょう」



 自分も食べ損ねていた紫は断る理由も無く、ありがとうと一言礼を言うと女性は笑顔で中に通してくれた。


 外見は朽ちた家。廃屋。なれども、中に入ってみれば古く傷んでいるものの人が過ごすには問題が無い以上には綺麗にされていた。


 靴を脱いで土間から上がれば、鍋を火にかけている囲炉裏がある間と、隣にもう一部屋あった。今居る部屋よりも綺麗にされていたのを見るに、そちらは寝間だろうと判断する。


 囲炉裏を中心にして座ると、女性は早速とばかりに紫に声をかける。



「もう少し煮詰めたい所ですので、先にお話をしましょう」


「ええ、全く異論は御座いませんわ」


「目的有っての旅との事で、それがどんな事か聞いても? この地に来て日が浅い私が力になれるか判りませんが」


「大丈夫ですわ。目的とは、貴女に会うこ」



 紫が最後まで言葉を紡ぐ事は無く、女性は紫の言葉を最後まで聞かず勢い良く距離をとった。それこそ、人間らしからぬ動きで。


 隠していた妖気を爆発させ、鋭く睨み、次へすぐに動ける姿勢をとり、狐の耳と九本の尻尾を生やし紫へと威嚇する。


 それは暴力的な力。それは抗えない恐怖。紫の判断からして少し力がある程度の先程までこの場に居た退治屋の人間達ならば意識を手放すか、まともな思考も伝える為の言葉も手放している程。圧倒的な存在感を発していた。



「……私が目的か。なるほど、人間の振りで騙せていたかと思っていたが先程の退治屋。正体に気づいて刺客を寄越したか……しかし!! 私はそう簡単にはやられはせんぞ!!」


「彼らは騙されておりましたわ。そう、しっかりと貴女を人間だと思っていた」


「何!?」


 対する紫。声を荒げる女性とは対照的に落ち着いた声で話す。この場を例えるならば、静流と激流。しかし、決してぶつかり合っていなかった。囲炉裏を挟む形でお互いに唯々片や気を荒らげ、片や気を落ち着かせていた。



「彼らは私にそう、これまでに見た事も無い絶世の美女が居たと言ったわ。他にも出来れば求婚したかったけれども、仕事の用向きを伝える事で精一杯な程に上がってしまったと落ち込んでおりましたわ。私だって妖怪とは言え一人の女性。私の目の前で違う女性を讃えられてしまっては、自信を無くしてしまう話ですわ」


「……何……だと……?」


「今、貴女は、自分から、私に正体を見せた。このドジっぷりには流石に驚きましたわ」



 ガックーンと膝をつく女性。シリアス等始めっから無いのである。



「改めて自己紹介をしましょう。私の名は八雲紫。境界の妖怪ですわ……貴女の名は伺っても?」


「……私は個人的な名を持っていない……生まれて暫くの間は御使いと呼ばれ、王に招かれてからは妃殿下(ひでんか)と呼ばれていた……嫁入りした訳じゃないのに……妃殿下扱いでしたよ……誰にも捧げていないこの身なのに……好きでも無い男の妻扱いされて……王は否定せずにニヤニヤしていて……それが嫌になってこの地に渡ってきました……」


(……何か急に愚痴が始まったのだけど)



 手をつき膝をつき、合わない焦点で床を見つめながら答える女性。紫はどうしたものかと視線を漂わせたが、とりあえずは気が済むまで愚痴を聞こうと判断する。


 腹の内に溜まった嫌の事を吐き出させるのも、協力を受けやすくなるだろうと考えながら。






 (前書きの続き)つもりですが三人称で書くと自分が想定していた以上に話が長くなったのでキリが良い所で区切らせてもらいましたー。(実は一話分で終わるつもりで外伝を書き始めたとは言えない……)

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