外伝 紫と藍と幻想郷
外伝です。紫と藍の過去と幻想郷の成り立ちを自分なりの設定で組み立てたお話なので、太助が見たい方と原作至上主義なお方はご注意を。
ん? 今更?
妖怪である自分。優れた力・能力を持つ自分。先を予測する事が得意な自分。
八雲紫と言う自分。私は自身を特別な存在だと自認している。唯一の存在であり、私の能力を持ってすれば干渉出来ない事の方が圧倒的に少ないと言う自負がある。
改めて、私は特別な存在である。逆に、他人も特別な存在だとも認識している。
過去に“我は世界で唯一つあり、尊い存在である”と聞いた事がある。
『自分と言う存在は世界中探しても一人だけであり、故に尊いのである』と言うその言葉。それを聞いてから私は驕りながらも見下さず、謙遜しながらもなびかない様になった。
私は特別な存在と認識し、他者もまた特別な存在なのであろうと言う考えがいつの間にか身についていた。
そんな私は……いや、他を認める私だからこそ自身の存続の可能性を考えた。
そして、たどり着いた答えは消滅を避けえる『楽園』だった。幻想の『桃源郷』だった。
現実を認めつつも理想を求め続けられる『幻想郷』だった。
幻想郷を実現させるにあたり、どうするか考える。必要な者・物は何か。
まずは土地でしょうね。郷と言いながら土地が無いなんておかしな話。とりあえず、妖怪を退けられる者が少なく寄りづらい山奥等の僻地を探しましょうか。
次に必要なのは友。独りで生き延びた所で退屈でしょうがないし、何よりも寂しいもの。自分で言うのも何だけれども……数少ない友人である萃香に声をかければ、そこから水面に出来た波紋の様に様々な妖怪仲間へ話が広まる事でしょう。
思い立ってから私はすぐに行動に出た。そして、それなりに歩き回ったと思う。妖怪である私ですら大変だったと思う位に歩き回ったのだから、人間だったらとっくに疲労に耐え切れず投げ出していたか、過労で倒れていたかもしれないわね。
そして、私の中の条件に沿う僻地は見つかった。寧ろほぼ理想的な僻地。
山奥なので山がある事は当然としても、恵みが素晴らしい。実りはじゅうぶんあるし、山から流れる川の先の大きな湖には魚も豊富。平地も中々広く小さいながらも人里がある。
贅沢を言わなければ全く問題の無い良い土地だった。
萃香と言うか鬼達は山に拠点を置いた。私も住居として狙っていたけれども、早い者勝ちだから素直に諦めよう。決して鬼の大群と争うのが面倒だったと言う訳では無いの。
元々、萃香単身と友人関係になれていたおかげで、その萃香経由で単純に力が私より上である鬼達とも悪く無い関係を築けたし、とりあえずは居住地も見つける事が出来た。
並大抵の相手ならば能力戦で負けるつもりは無いけれども、絶対は無い。目に見えない脅威の内は最低限の警戒をしながらこの地に腰を据えようと思った。
暫く過ごしていくと、段々と妖怪が増えてきた。初めは弱いモノが主立ったが、いくつかそれなりに強力な存在も増えてきた。萃香に聞いたけれど、どうも力試しに挑んでくるモノが増えた様である。
力試しもある一方、住みやすさもあって人間から逃げる様に来る妖怪もおり、強弱関わらず妖怪が集まる土地となった。
初めは人食い妖怪の数が増えて小さな里の人間が消えてしまわないかと少しは不安に思ったけれども、今度は妖怪退治を生業とする人間が集まってきた。
そして退治屋を金づると考える商人も増え、商人の警護として雇われる形で退治屋が増える。妖怪を超えるペースで人間が増えてきてしまった。
このまま人間が集まれば妖怪の存続が厳しくなってくる。遠い地の出来事ならば対岸の火事と言えたけれど、ここは私が安住を求めて来た土地。
適度の広さとは言っても、人間の勢力が増え続ければ妖怪としては住みづらくなってしまう。妖怪が駆逐されきる前に一つ結界を仕掛けよう。妖怪を惹きつける結界を張り、増える人間に負けない様に妖怪も増やす。
この時、私は幻想郷の管理者になる決意をした。……けれども、確かに私は自身を優秀だと思っているがやはり妖怪一匹では範囲に限界があった。
実行してみようとすれば、幻想郷における人間と妖怪の数の把握と調整の確認が追いつかない事に気付いた。北と東を終わらせ南に行けば、北の数が変動していて、西に行けば東の数が変動。
そう、先程も言った通りに私一匹では間に合わないと気付いた。方法が確立されれば良いのだろうけども、方法を確立させる以前の状態である。
何モノか……助手になってくれる誰かを探そう。何、管理する能力が足りない程度ならば私の式で強化すれば良いだけの話。問題は私に付いて来てくれる性格かどうか、それだけ。
広範囲の把握に長けている友人が真っ先に頭に浮かんだものの、幻想郷の管理となると一時的なんてとても言えない。恒久的な仕事。それ相応の対価が用意出来ない。
最近鬼達の縄張りで見かける天狗。あの集団を活かせれば可能だろうが、私への忠誠心と言うか同僚意識と言うか、そんな物が全く無いので隙あらば牙を剥いてこようとするだろう。面倒だから相手にしない……弱いくせに野望だけは一丁前な連中だと思う。
一瞬で思いつく存在は幻想郷の管理には向いていない。性格が良くて、私の話に理解を示して、素直に従ってくれる存在ねぇ……。自分で言っていて、何とも都合の良い存在だこと。
と言うかここで悩んでいても仕方が無いので、現状用意出来る最高のお酒を、数を揃えて手土産にし友人に何かしら情報が無いか聞いてみよう。
そう簡単にはいかないだろうなとは思っていたが、いざ聞いてみたら良い情報があった。お酒の質をケチらないで出来るだけ用意して持ってきた私大正解!
鬼の上層部は天狗と言う集団を従え報告を受けたりしてそれなりの情報を持っていた。萃香も暇があれば辺りを漂い噂を聞きつけたりと個人的な情報力を正直甘く見ていた様だった。
何でも、瑞獣と言われ王室で働いていた九尾の狐が海を渡って日本に来ているそうだ。
瑞獣と言えば瑞兆の化身とも言える存在。更に言えば私の知識が間違っていなければ徳のある主の元でならば九尾の狐は守り神とさえ言われる瑞獣。逆に徳のない主ならばその者にとって凶獣にもなる。まぁ、苦しんでいる民の事を考えれば結局は瑞獣だろうと思う。
そんな縁起の良い妖怪が何故、宮中から離れて日本へ来たのだろうか。自分から離れたにしろ、追い出されたにしろ権力者達にとっては勿体無い事をしたものである。
どちらにせよ、九尾の狐が日本に来たと言う事は私にとっては最大の好機。萃香には感謝を込めた礼をして狐を探す旅に出る。たぶん、狐探しも萃香に頼めば何かしら結果を出してくれるだろうが対価を用意する元手がもう無いので残念だが自力で探すしかない。
さて、瑞獣としての九尾の狐は王室の守り神。存在意義とも言える本能で都を目指すかもしれない。予想が当たっていた場合人間達の下に就く前に出会い勧誘しなければいけない。
最速で京都へ向かう為に能力を使う。空間に広がる亜空間への穴に飛び込む。
京都のど真ん中に出てもしょうがないので人間の居住区域と都の内側と外側の境へ出ると、外の方から妖怪退治屋らしき集団が歩いて来るのが見えた。
私は人間と妖怪の境界を弄り人間の振りをし、集団を待ち構える。暫く待つと向こうも私の存在に気付いた様で目が合う。一般的な人間を演じている以上立場は向こうが上なので退治屋達へ頭を下げる。必要な事とは言えこう言う時に下手に出れる私は世渡り上手だと下らない自画自賛をしてみた。
さすがに京都に移動してきた私の妖力に気付いての集まりだとは思わないが、退治屋がこれだけの人数でどうしたのかと聞いてみた。
そしてまたも私大正解! 退治屋達はただならぬ気配の狐が居たと言う情報から狐の妖怪が現れたと判断して退治に向かったとの事だったが、いざ向かえば出会ったのは昔農民が使っていたのだろう廃屋で休んでいた美女だけだったらしい。
私を前にして例の美女を褒め称える退治屋達に、内心、外見に自信があった私は妖怪とは言え女でもあるので敗北感を抱えながら話を聞かせてくれた礼をし歩き出す。
さて、十中八九その美女が例の九尾の狐だろう。人間を誑かす事もある為妖怪の女は基本的に美人が多い。そして例に漏れず『妖怪の女は美女』に該当する私を前にして尚言われる美貌の持ち主となればその者も同じ妖怪の筈。
どちらが美しいか等と勝負をするつもりは全く無いが、九尾の狐……非常に楽しみである。
どこかのブログで見た八雲紫はルシファー(サタン)説は凄かったので、紫の元ネタ考察に興味があるお方は『八雲紫 考察Ⅳ』で検索してみたら面白いかと。




