番外編 それは過去の思い出話
2015年最後。今年はまぁまぁ投稿した年になりました。
来年も宜しくお願いします。
2016/11/23 加筆と後々の矛盾になる所を修正。ストーリーに変化はありません。
それは太助が十二歳になる頃。
幻想郷と呼ばれる結界に覆われた土地の創始者であり管理者である八雲紫、その式である八雲藍が二人涙を目に浮かべ空を飛んでいた。
「これは仕方の無い事なの。もう泣くのは辞めなさい、藍」
「……紫様こそ、私の事が言えないと思います」
そうね……と紫は正面を向いたまま苦笑する。
幻想郷にとって、重要な役割を持つ巫女が住む神社に向かって飛ぶ二人が何故涙するのか。それは至極簡単。
これからスペルカードルールを導入する為の活動を本格的にする為に自分らが自身よりも大切に大切に。それはもう大切に我が子の様に可愛い弟の様に恋人の様に伴侶の様に愛を持って育ててきた少年、八雲太助が自分達と離れて居る間に反抗的な魑魅魍魎に襲われる可能性から遠ざける為に幻想郷の外に避難させた為である。
寂しいのである。恋しいのである。いじらしいのである。別れ際の今にも泣き出しそうな太助の顔が脳裏から離れず今すぐに引き返してその身を力強く抱きしめたい。
それを必死に堪えているのである。やらなければいけない事に対して彼女達の心情にシリアスは無かった。
所変わってあるアパートの一室。紫に用意された部屋で寛いだ少年が居た。
「ふわぁ……眠い」
先ほどから眠気に勝てずに目元に涙を浮かべてあくびをしていた。彼の保護者が見た涙は、あくびを原因としたものだった。
因みに、時刻で言えば朝の五時の出来事であった。
それから太助が幻想郷の外で暮らす様になり一ヶ月はすでに超え、外の住民達の無駄に高く根強い警戒心からご近所付き合いの大変さを学びそれでも何とか溶け込み始めた頃。
ある神社の境内で太助はどことなく懐かしい気配を感じながら茜色になり始めた空を見上げていた。
空に何かがある訳でもない。昔ながらの知り合いが近くに居る訳でも無い。
素人が見ても立派な作りだと判る神社の境内の、その真ん中に太助は立っていた。
「…………」
気配が近づいて来た事が判る。
見上げていた顔を正面に降ろし、そして振り返る。
そこには外の世界では珍しく、幻想郷の中では違和感の無い格好をしていた女性が居た。
逆光がある訳でもないのに、若干の眩しさを感じる女性。
それは神聖なもの。だけれども、半分は妖怪の血が流れている此の身である筈なのに、その神聖さが全く苦にならない。
そのよく判らない感覚に首を傾げる太助に神々しさを放つ女性は首を傾げた。
「お前は、何者だ」
すんなりと心に染みる声。
「僕は八雲太助です」
「いや、違う。そうじゃなくてだな……僅かながらも妖力を持つ者が、私を前にして……いや、寧ろ安らぎを感じるお前は何者だ?」
何者か。生まれてすぐ捨てられ、名前だけを残し消えた両親。
そんな太助を育ててきた八雲家。その主である八雲紫ですら太助に流れる妖怪の血が何の種族か、過去はどうあれ太助が元気ならそれで良いと調べていない現状。
そして、日頃は無意識に意識せず考えていなかった、それでも心の奥底で本当はずっと知りたかった事。
「僕は僕です」
本人としては謎の妖怪の血を継ぐ半人半妖の少年と、導きの意味を込められた名を持つ一柱の女性の初の出会い。
八雲太助が、外の世界で初めて出会った人外であり神である。
私が確認出来る範囲の情報では神奈子って二次創作でよく見る軍神だとか明確に表記されてるのを見ません。寧ろ農業の神じゃ……?
さすがに手元に無い資料の情報は判らないので、神奈子=軍神を明確に判断される物があれば教えて下さると嬉しいです。
2017/07/01 ハーメルンさんの感想の方で教えてもらえましたが、諏訪大明神から軍神ではないかと判りました。ここでではありませんが情報ありがとうございました。




