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友達として一緒に

 一瞬前書き後書きで補足説明しようかと思ったけれど、やっぱ必要な事なら物語内だろうなぁと思い直す。






「遊びに行ってくるよ、藍お姉ちゃん」


「ああ、判った。緊急時の為に迎えに行きたいから何処に行くのか教えてくれるか?」


「紅魔館。それと、泊まるかもしれないし、食べてくるかもしれないから僕の事は気にしないで良いよ」



 お昼過ぎ。昼食を終えて鞄にフランドールさんのお土産になりそうな本を詰め込んで最近お気に入りの書生服に着替えて、玄関に行く前に台所で片付けをしている藍お姉ちゃんに声をかける。


 近くに置いてあった手拭いで濡れた手を拭きながら応えてくれた。



「そうか、一緒に食べれないのは寂しいが……。まぁ迷惑をかけられたら私か紫様に言うんだぞ?」


「それ逆じゃない? 僕が相手に迷惑をかけちゃいけないよって言われるべきだよね?」


「太助は人様に迷惑をかける様な子じゃないだろう?」



 その信頼はどこから来るんだろう……。だけど。



「判ったよ。これからもそう思って貰える様に気をつけるよ」



 その信頼が嬉しくて、そう返事をすると嬉しそうに微笑んでくれた藍お姉ちゃんは、とても綺麗だった。


 その後、雪駄を履いて外に出た僕は前方に向かって妖力を込めた指先で線を引く。

 そして空中に出来た線を中心に円を作る様に世界に、僕が通れる位の大きさの穴が出来上がった。


 はてさて、長期戦になるかは判らないけど。決めたんだ。



「行くよ」



 そう呟いて僕は穴を潜る。


 目的地は、紅魔館の門を通り過ぎ、廊下を過ぎて階段も過ぎて、能力の干渉を弱める封印がされている扉すら越えて、フランドールさんの部屋。


 たぶん、紅魔館の皆は館の中に部外者の妖力が突然現れた事に気づいたかもしれないけど、誰かが来た時にはどうにか許してもらおう。


 そして、突如として目の前に穴が出来てそこから出てきた僕を丸い目で見ているフランドールさんに声をかける。


 前回来た時と同様に、殺風景で薄暗くて、それでも困らない程度に物が揃えられている部屋。


 粉々の玩具。ズタズタの人形。ぎっしりと本が詰まってる本棚。


 前回と違うのは、丸いテーブルに備えてある椅子ではなくベッドに腰掛けていた位。


 僕よりも随分長く生きながらも、まだまだ加減を知らない子供みたいで、それでも驚く程知識が豊か。

 実に僕の印象通りだなと思いながら。



「や。また来たよフランドールさん」



 そう言うと、彼女はどこか嬉しそうな、さりとて泣きそうな複雑な表情になって、そして笑った。



「本当に来たんだ。また来るって言った人間が本当にまた来たのって、貴方が初めて」


「そうなの? まぁでも、僕は約束は守る方だよ。フランドールさん」


「そうね。私と約束して守ってくれたのは貴方が初めて。ねぇ、フランドールさんって長いでしょ? 名前が嫌いって訳じゃないけど、フランって呼んで? 本で読んだけど、仲が良いと愛称で呼ぶんでしょ?」


「そうだね。判った、フラン。それじゃ、僕の事も貴方じゃなくて太助って呼んでよ。かっこつけたがりな人間の男の子は仲が良くなるとお前を認めたぞって意味も込めて名前を呼ぶんだ」


「判った。太助」


「うん、改めて宜しく。フラン」



 お互いに名前で、愛称で呼び合うとまた少し、僕とフランの心の距離が縮まった気がした。



「さて。それじゃぁ僕と勉強をしよっか」


「勉強? 何で?」



 和やかな雰囲気になった所で、本来の目的を告げるとフランは首をコテンと傾けて疑問を上げる。



「フランが色々知ってるのは僕にも判る。だけど、本を読んだ知識なんだよね?」


「うーん……それはそうだけど、太助は私の先生として来たの?」


「違うよ。僕はフランの先生じゃない。僕はフランの友達として、一緒に遊べる様に勉強をしようと来たんだ」


「友達……一緒に遊ぶ為?」


「うん。言っちゃ悪いけど、フランは本に書いてある事は知ってても、実際の遊び方は知らないよね? それを僕が教えて一緒に遊ぶんだよ」



 拒否されたらどうしようかと思った。


 それこそ、先生として来たのかと聞かれた時のフランは寂しげな雰囲気を出したけど、友達として、一緒に遊ぶ為、僕の気持ちを伝えてから何処となく目の輝きが強くなった気がした。



「うん、教えて太助。私も、太助と一緒に遊びたい!!」



 そう嬉しそうに言ってくれたフランに、僕も思わず笑顔で頷いて応えた。






 あ、勉強内容を期待してる方は居ないかと思いますがフランのお勉強は所々描写するだけで端折ります。

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