プロローグと言う名の第一話
|゜Д゜))) こっそり投稿。
高層ビルが立ち並ぶ中。激しい雨が降っていた。
ザーザーと激しく振るその雨は、視界の範囲を狭めるには十分すぎる勢いと量だった。
「ん? 紫?」
交差点ですれ違った人物は見覚えのあった姿だった。思わず振り返ってみたら先程の姿は無く、すれ違う人達だけが目に映った。
「気のせいだったかな?」
いつまでも立っていてもしょうがない。他の人の邪魔になるし時間の無駄だろう。それにあれは、僕が見せた幻覚だったのだろう。
出来るものなら、また会いたいものだ。……幻想郷の皆に。
そのまま自宅に帰ってきた僕は、目の前のボロアパートを見上げる。幻想郷で僕には危険な事が起こると紫と藍に幻想郷から外の世界に脱出させられた時に用意されていた住居だ。
外に付いている階段を上がり、三つ目の部屋の前で立ち止まる。傘の水を切ってたたみ、玄関の鍵を開けて……開いている? 少し緊張しながら中に入った。
「? 気配?」
玄関に入ってすぐ気づいた。人が居る。それも懐かしい感じの気配だった。
誰かまでは判らなかったがこの気配、邪念が無くどこか楽しそうであった。気配のある台所を覗くと、そこには過去に別れた見知った後ろ姿があった。
「! ら、藍?」
「ん? おお、帰ってきたか。積もる話もあるだろうが、もう少しでお昼ご飯が出来上がる。座って待っていておくれ」
「あ、うん」
優しい笑顔を見せてまたこちらに背を向ける藍。どうしたものかと思いながらも、する事が無いので言われた通り居間のちゃぶ台を前に座って待つ事にした。
暫く藍の後ろ姿を見ていると玄関の外に気配を感じた。その気配は何の躊躇もせず扉を開いた。
「ただいまー。藍、あの子帰ってきたー?」
その入ってきた人物を見ると今度こそ驚いた。その人物は先ほど幻覚かとさえ思っていた人物だったからだ。
「ゆ、紫?」
「あら、帰ってきていたのね。久しぶりだわ。それに呼び捨てだなんて……昔みたいに紫お姉ちゃんって呼んでほしいわ」
「いや、僕ももう十七歳だよ? お姉ちゃんって歳じゃないよ」
「寂しいわね。ねぇ藍? 貴女もそう思わない?」
「そうですね。先ほどは流したが藍お姉ちゃんと呼んでくれなかった事は些か落ち込んでしまう出来事だったぞ?」
そう言って鍋を運んで居間まで歩いてくる藍。紫は僕の隣に座っている。急いで鍋敷きを用意して藍に鍋を置いてもらった。
藍はそのまま踵を返し、食器を並べ炊飯器を片手に僕の隣に座った。
「そんなに、お姉ちゃん……が良いですか?」
「そうね。その方が若返った気持ちになれるし……後、遠慮気味に話すのも無ぁし。距離を感じちゃうわ」
「そうですね。お姉ちゃんは置いておくとしても、喋り方だけは元に戻してくれないか?」
「……うん、判ったよ。後、お姉ちゃんの件も。ちょっと久しぶりで恥ずかしかっただけだって訳だし」
そう言うと藍お姉ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。紫お姉ちゃんはと言うと……。
「もう! 可愛いんだからー」
「ちょっ! や、やめてよ恥ずかしいよ」
って具合に僕の頭を胸に抱きしめてきたのだ。嬉しい様な恥ずかしい様な。
しかし、妖怪である紫お姉ちゃんには力で勝てる訳もなく、気が済むまでされるがままになってしまう。藍お姉ちゃんに助けを求める事にしよう。
「藍お姉ちゃん助けてっ」
「ああ。紫様、嬉しい事は判りますがもうその位してはいかがでしょうか。折角の昼食も冷めてしまいます」
「んー? しょうがないわねー。また後でね」
そう言って紫お姉ちゃんは僕を離して座り直す。また後って、またやる気なんですか……。
なんだかんだ言いつつ、藍お姉ちゃんが作ってくれたおかずを頬張る僕は二人の様子に辟易する。だって、一つ一つの動作に嬉しそうに笑うからだ。居心地が悪いったらありゃしない。
「で、今日はどうしたの? 五年も放っておいてさ」
「そう言われるとごめんなさいとしか言えないわ。だけど、もう大丈夫だと判断したから今日は会いに来たの」
「大丈夫?」
「ああ。博麗の巫女、覚えているか? 霊夢が異変を解決出来る力を身につけ、妖怪への抑止力として十分の効果を持った」
「へぇ、あの霊夢ちゃんがそんなに強くなったんだ」
「そうよ。だから、太助に帰ってきてもらおうと思ってね。どうかしら?」
紫お姉ちゃんがこちらに期待を込めた眼差しを向けてくる。いや、紫お姉ちゃんだけでなく藍お姉ちゃんもだ。はあ……。
「判ってるくせに」
「じゃあっ」
「うん、帰るよ。幻想郷に。だって、僕のふるさとだから」
ビクビクしながら過ごしてます((((;゜Д゜))))