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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集 連載候補作品集

ゆめとうつつ

作者: navi

 練習作品です。

 これらの練習作品は皆様の評価次第では連載するかもしれません。しいて言うならお気に入り件数か、評価点の合計で決めます。

 この世界は狂気に満ちている。それこそ、深く強い狂気に。

 そのことを理解している人間はいない。いや、ただ気が付かないだけ。誰でも狂気は持っていて、いつもどこかで渦巻いていることに。

 だからからかな? 誰もがせめて夢の中では平穏を、と願う。

 『夢』と『現』・『幻想』と『現実』。

 それらは、違うようにも同じようにも見える。

 何が夢で、何が現か?

 それを決めるのは…………全て、その人次第。

 それこそ、その人の夢現。

 そう、それこそが『ゆめとうつつの夢現』の始まり。

 だからこそ、私は……それを壊す。

 …………そう……決めたのだから……。何があっても。





 僕、未来 鈴(みらい りん)には幼い頃から見続けている夢がある。その夢では、僕は賀古 美鈴(かこ みすず)という名の女の子になっているという夢。

 男である『鈴』としての1日を終えて眠りにつくと、女である『美鈴』としての1日が始まる夢。

 そして女である『美鈴』としての1日を終えて眠りにつくと、ようやく日付が進んで、男である『鈴』としての1日が始まることの繰り返し。実際には逆みたいで、『美鈴』の方が先らしいだけど。

 最初の頃、というより小さなころはただの夢としか思っていなかったけど、どうやらそうではないらしい。

 その夢はどれだけ歳を重ねても毎日見続けるし、何より、『美鈴』として目が覚めると、『鈴』として過ごした1日と同じ日付、そして同じ世界であることに気が付いた。

 それに気が付いたのは、あるとき、高校で同じ日に受けた某テストの模試の結果のある順位を見ると、『鈴』という名前も『美鈴』という名前も存在したし、名前の後ろに書いてある高校の名前もそれぞれの学校の名前だった。

 気になって、それぞれの電話帳を調べても、それぞれの電話帳に名前が載っていた。

 ここまで来ると何か怖いものだけど、唯一の救いは高校が別であることかな。もし同じ学校だったとしたなら、軽く発狂ものだったと思う。見た目はともかく、まったく同じ人間が2人いるようなものだし。

 まぁ、同じ高校だったらテストとかがカンニングに思えてならないから、気が楽だしね。

 そんなこんなで今まで生きて来たけど、このことは誰にも言っていない。言っても信じてくれる人はいないだろうし、頭のおかしい人だと思われるだけだしね。

 だけど、このことを唯一知っている人(?)がいる。それは、僕が私、つまり『美鈴』としての生活をしているときの私の保護者である霊堂 麗香(れいどう れいか)さん。

 なんで保護者か? っていうと、『美鈴』としての()の両親は、戸籍上では存在するのだが現実には存在していない、つまりは()の『美鈴』としての両親は行方不明というか、存在すら知らないのだ。

 あ、誤解が無いように言っておくと『鈴』としての両親は普通にいるよ?

 話を戻して、麗香さんは僕(この場合は私だね)がそのような現実を生きていると確信したため、保育所にいた()を引き取ったらしい。

 その経緯に、ふと疑問に思った()が話を聞いたところ、麗香さん自身も僕と同じ症状だったらしいが、今では1人の人間になっている。

 麗香さん曰く、「1つの意思・意識が、ある2つの体に宿る者たちを相対させ、2つの意思・意識を互いにリンクさせる必要がある」とのこと。

 つまり、今は()だけど、いずれ美鈴()に直接、面と向かって会う必要があるらしい。

 …………なんか気が進まないなぁ。だって見た目が違うといっても同じ人格・中身の人間に会うんだよ? 何か怖いじゃない。

 それに麗香さんの話を聞いて、もう1つ疑問がある。

 それは、麗香さんは『今では1人の人間(・・・・・)になっている』ということだ。

 何? それってどういうこと? 意思・意識をリンクさせたら、2人の人間が1人の人間になるの? もう1人の自分はどうしたの? 

 慌てて麗香さんにそう問い詰めたところ、2人の人間が1人の人間になることは確定で、1人の人間になるにはなるのだが、男と女、どちらの姿が一般的な姿になるのかは、2つの意思・意識をリンクしてみないことには分からないそうだ。

 ちなみに麗香さんは見ての通り、女の方の姿になったようだ。

 ()からすれば、できれば男、つまり()としての姿になりたいものです。男の方が気が楽なんだよね。女って怖いし。

 あと、今となってはどうでも良いけど、私の方の両親がいないことについては、行方不明ではなく、もともといないらしい。

 どういうことかというと、意思リンクした後は()が1人の人間になることは話したよね? つまりはそういうこと。

 この症状は、元々1人だった人間の魂が、何らかの現象の影響を受けて分離を起こしてしまい、その分離した魂が、これまた何らかの現象の影響で具現化してしまう、という現象であって、具現化した方は突如として現れたようなものであるとのこと。

 ()としては、その『何らかの現象の影響』の『何らかの現象』というところが1番気になるところなんですけど…………まぁ、今はどうでも良いかな。それよりも、今のことだね。憂鬱です。

 なぜかって? 前前回の『美鈴』としての現実の方で、麗香さんが僕のいる学校に私を転校させるということを聞いたからだ。

 まだ心の準備がまともに出来ていないというのに、もうその転校当日なんですよ。すごく緊張しています。

 ――――――もちろん別の意味で、ね。

 あ、ちなみに今は美鈴()で、()がいる2-1教室の前に立っています。できればもう少し心の準備をする時間が欲しいですが、うちのクラスのあの担任のことですから、もうしばらくかかるでしょう。

 なのでほんの少しだけ時間がありますから、少し心と状況の整理をしますか。

 調べた(どちらかというと実感したがいいのかな?)結果、先ほども話した通り、美鈴()としての1日の後で()としての1日があるみたいだから、この場合良かったような気がするけど、よくよく考えたら、この後の()のリアクションをそっくりそのままとる必要があるってことだよね? ……いろいろと面倒だなぁ。よし! さっさとリンクを終わらせてしまおっと。

「…………では~、入ってきてくださ~い」

 うん、それが良い。いくら自分だとしても相対しにくいし、何より、この2重生活がめんどくさいと感じてきたころだ。麗香さんの話では、リンクした時点で周りの人の認識が変わるみたいですし、認可もされるみたいだから、うちのクラスのお気楽軍団に囲まれる前にさっさと意識リンクしてしまうのがいいと思う。

「……お~い? 賀古さ~ん? ど~したの~?」

 それよりも意識の問題です。何故ならリンクした後、()美鈴()、どちらになるのか分からない以上、男と女のどちらでもいられなくてはならない、ということです。

 ……まぁ、今までの16年間、ずっと両方として過ごしてきたんです。大丈夫でしょう。……きっと! たぶん。うん、そう信じたい。

 ――――――流石に女の子の日は慣れませんでしたけどね。ですが、他の人に比べて軽い症状だったので助かりましたが。他の人はすごく辛そうでしたし……。

「賀古さ~ん?

 …………はっ!! もしかして先生のことが嫌いなのかな~?」

 さすがにあれはねぇ……。慣れる慣れないの問題じゃないですよ。実は先日が……っと、危ない危ない。あまり脱線するのは良くないね。軌道修正軌道修正っと。

 まぁ、大分気持ちも落ち着いたし、これで何とかなるかな? って、うん? 視線?

「……御影先生? そんなに目に涙を溜めてどうしたんですか?」

 視線を感じたのでそちらを見れば、半分開きかけている教室の扉の中から、涙を溜めた目でこちらを見ている黒髪の女の人が見えた。

 何か不気味な雰囲気を醸し出しているこの人は、このクラスの担任、つまりは()のクラスの担任である御影 石菜(みかげ せきな)先生です。

 ――――――何というか、真っ黒な髪をホラー映画に出てきそうなくらい長く伸ばし、目はそれと同色の漆黒、肌はどうやって学校(ここ)まで来ているのか知りたいくらいの白さを誇る、もっともお化け役が似合いそうなのにお化けなどの類が苦手な先生です。

 …………そんな先生が、目に涙を溜めながら扉に半分隠れてこちらを見ている姿はちょっとしたホラーですよ?

 少し怖くなった私がそう問いかけると、先生は先ほどと似ては似つかない笑顔を浮かべて話し出しました。

「ほぼ初対面なのに嫌われちゃったかと思ったよ~……。でも~、大丈夫そうだし~、も~入ってきていいですよ~」

 ……相変わらずの見た目とは全く違った話し方ですね。ゆっくりというか、ぽわーんとしているというか。それと先生、ほぼ初対面と言いましたけど、教室(ここ)に来るまでに職員室で十分話したでしょうに。

 先生は、心の中で突っ込みを入れている私にそういうと、自分の身体を教室内にひっこめさせてピシャリっと扉を閉めた。

 ……御影先生。扉を閉められたら教室に入れないですよ? 

 そう心の中で、今はこの場にいない先生に突っ込みをいれてから、中から喧騒の聞こえてくる教室の扉の掴みに手をひっかけると、扉をスライドさせて1歩踏み出す。

 …………教室の中に入った瞬間、視線が集まるのが分かる。男子からは何か嫌な視線、女子からは憧れに近い視線を感じますね。

 まぁ、気持ちは分からないでもない。()からしても美少女だと思うよ? ……第1印象、つまり外見だけみれば、だけどね。

 16年も女の子もやってきたはずなのに、何故か中身はバリバリの男だし。でも、両性について性的な興奮は覚えたことはまったくと言っていいほど無い。と、いうよりは興味ないね。

 とりあえず、この奇怪な視線は好きになれない。私は憧れるような存在でもなければ、惚けるような存在でもないと思うよ。

 様々な視線の所為か、なにか気分悪いからさっさとリンクを終わらせてしまいますか。早めにしないと後が怖いですしね。

「は~い皆さ~ん、こちらが~転校生の~賀古 美鈴さんですよ~。わ~、ぱちぱちぱち」

 ――――――その前に御影先生の洗礼がありましたね。と言いますか、手拍子を口でいうのやめませんか? まぁ気を取り直して、

「今日転校してきました、賀古 美鈴です。

 …………何か期待しているようですが、以上です」

 私の簡潔、かつ瞬間的な挨拶の所為で、クラスのみんなが何かすごく不満そうだけどどうでもいいや。特に仲良くなろうとか考えてないしね。それよりも――――――、

「さっさと終わらせようかな」

「え~と、賀古ちゃん?」

 ――――――私の発言を疑問に思っている先生や生徒を無視して、窓側の1番後ろの席にいる、散々見慣れたもう1人の自分へと歩み寄っていく。表情を見ると、鏡で良く見ていた、いつも通りの無表情が貼り付けられている。私が教室に入って、最初に目を合わせても、微かに眉が動いた程度だった。

 というか、自分でいうのもなんですが、相変わらずテンションというか、リアクションが薄いね。もう少しは反応しようよ。

 てか、こうやって客観的に見ると、本当に女の子に見えなくもないね。こちら()のほうの幼馴染の主張もあながち間違っていないね。

 まぁ、自分に突っ込んでも仕方がないとは思うけど。

 そう考えながら足を進めている間に、もう1人の自分の前にたどり着いたので、とりあえずは話しかけるとしますか。

「やぁ、調子はどう?」

「微妙なとこだね。

 それよりも……待ってたよ」

 私と僕の意味深な会話に教室にいる全員が首を傾げる中、美鈴()()の手を取ると、指を絡ませる。

「「あーーーー!!!」」

 手を握った瞬間、このクラスの男子全員と()の方の幼馴染が驚いているけど、そんな些細なことは気にせずに、麗香さんに教わった通りに指を絡ませ、離れないようにしっかりと握る。

 う~ん、こうやって女になってわかるけど、男の手って骨とかこんなにごつごつしてたんだなぁ。()の場合は他の人よりは女みたいな華奢な手だけど、それでもある程度固い。今の美鈴()に比べると、手の表皮も硬くて丈夫な感じがする。

 こんな華奢な体型(むしろ……男の娘? {幼馴染談})だからひ弱に見えるけど、一応鍛えてたからかな。

「じゃあ……いくよ?」

「いつでも」

 周りの喧騒を無視して、そう言って両手を繋ぎ合わせてからお互いの額をくっつける。たしかあとは、

「「意識リンク!!」」

 2人でそう唱えた瞬間、目をつぶっていたため真っ暗だった視界が真っ白に変わると同時に私の意識は薄れていった。 


 目が覚めると、偶にお世話になっていた天井が目に入った。それに加えて、何故か頭がガンガンする。

「…………うっ……ここは……?」

「目が冷めたか?」

 そういって微笑みながら語りかけてきたのは、この学校の保険教諭であり、()の所属している『サイエンス部』顧問でもある白莉 魅久利(はくり みくり)先生だ。名字名前ともに、どちらが名字でも名前でもいけるような名前である。ちなみに女だよ?

 ん? それよりもさっきの私の声……私のまま? それにしては微妙に高い気がする。それに先生がなにかよそよそしい気がするけど。

「どうしたんだ? お嬢ちゃん」

 挙動不審な私に、先生が不思議そうに問いかけてくる。でも今は……、

「お、おい。まだ動かない方が……!」

 先生の制止を振り切り、未だガンガンと痛む頭を押さえながら、なんとか保健室の隅にある姿見の前まで辿り着いた。

 そこには――――――、

「……え?」

 ――――――美鈴()でも()でもない女の子が映っていた。

 肩ほどまで伸びる()の時と同じ色の薄い青髪。目は少したれ目がちで、虹彩は美鈴()の時と同色の赤。肌は御影先生の如く、太陽を知らないようなくらい白い。背は155くらいだろうか。

 言ってしまえば、()美鈴()を足して2で割ったような姿ですね。

「一体どうしたんだ?」

 私が姿見の前で呆然としていると、私の行動(端から見たら奇行)を不審に思ったか、心配そうに私の顔を覗きこんできた。

 ど、どうしようかな? むしろどうしたらいいのかな?

 そう言えば、リンクすると周囲は私のことを勝手に認識・認可するんだっけ? なら、今の自分がどういう立場になっているのか調べてみますか。

「え、え~と……私は誰でしょうか?」

「うん?」

 私の言ったことに頭が着いて行っていないのか、頭を傾げる先生。

 うん、我ながら頭の悪い方法だと思う。でもこれしか思いつかなかったというか、思いついたのがこれだというか。

 というか私は誰に言い訳しているんだろう?

「!!……まさか…………記憶が無いのか?」

 驚愕といった表情でそうたずねてくる先生。

 ほら! 変な誤解されちゃったじゃない! 私の馬鹿! って、あれ? 『私』って単語が意識しなくても出てくる……?

「あ、えっと……その~……」

「……これは不味いな。やはりあの時、頭を強く打っていたようだ。……さて、どうしたものか……」

 考えがまとまらず、私がしどろもどろになっていると先生が気になることを呟いた。

 頭を強く打った? 何があったんだろう私?

「え~っと、よく覚えていないんですけど……何があったんですか?」

 騙しているようで悪い気がしますが、とりあえず、情報を聞き出しましょう。私の今の状況は全くわからないですから。

 私がそういうと、先生は話しずらそうな表情を浮かべ、頭をボリボリと掻き始めた。

 これは先生が迷っているときの癖ですね。この先生()は何か誤魔化そうとするときに頭を掻く癖がある。

 ってことは、私はそんなに話しづらい状況に置かれてるってこと?

「……あ~、じつはな……」

「誤魔化さずにお願いしますね?」

 私は先生の発言に割り込んでそう言っておくことにした。この人が大抵『じつは』何て使うときは誤魔化そうとしているに違いませんから。

 己の発言に割り込まれた先生は苦虫を噛み潰したかのような顔をすると、ため息であろう、大きく息を吐き出すと、ゆっくりと話し出した。

「……先ほど、といってももう5時間ほど前になるが、この学校にある『あるもの』を盗むため、この学校に強盗が入った」

 …………どういうことなの……? それよりも、

「何故学校に強盗が入るんですか……」

 そこが気になります。学校なんて人質の宝庫だけど、それ以外に役に立たないよ? ……ああ、あの校長のコレクションがあるか。

「私に聞くな。それに、その『あるもの』も私たち教員ですら何か知らん」

 やれやれと言った感じで首を横に振る先生。

 まぁ、そうだろうね。収集癖かつ貪欲のあの変人校長がその『あるもの』とかいうものについて他人に話すわけないし。

 でもそれと私のことはどう繋がるんだろう?

「話を続けるぞ? そこで校長からその『あるもの』を奪った強盗たちは、この学校にいるはずのある人物達を探し始めた」

「ある人物たち? 誰のことですか?」

 この展開はおかしいと思うけど、一応聞いておこう。

「ああ、今行方が分からくなっている2人だ。たしか今日転校してきたはずの賀古美鈴と、私の部活唯一の生徒にしておも……じゃなくて、可愛い教え子の未来鈴だ」

 ちょっと待て。今なんて言いかけた。明らかに玩具っていおうとしたでしょう。って、ん?

「賀古美鈴と未来鈴、ですか!?」

「知っているのか!?」

 思わず聞き返してしまった私に、座っていた椅子から立ち上がって詰め寄ってくる先生。

 …………私がその2人です! なんて言っても信じてはくれないでしょうね。さて、本当にどうしたものか。とりあえずは、

「いえ、今のは、その……ただ聞き返しただけ……ですけど」

 無難にこう答えておきましょう。

 私がそういうと、先生はすまないといって頭を下げると、先ほど腰を下ろしていた椅子に再び腰を下ろした。

 ……ふー、どうやら落ち着いてくれたようですね。

「すまない、取り乱したな。とりあえず強盗と+αが生徒・職員を襲いながら、その2人を探し始めたから、私は保健室(ここ)に隠れようと考えて移動していたら、お嬢ちゃんが何故か空から落ちてきて頭を強打したから、私がここまで背負って来た、というわけだ。……どうだ、理解出来たか?」

「無理です」

 うん、見事にわからない。空から落ちて来たってなんですか? それに、強盗と+α? また気になる単語が出てきましたね。

「強盗は分かりますけど、+α……ってなんですか?」

 私がそう聞くと、先生は答えづらそうに話し出す。

「それがなぁ……その、何と言ったらいいか……。言ってしまえば、この学校の生徒や教員たちだ」

「え?」

 まずい。本当に訳が分からなくなってきたよ。何で生徒や教員が?

「その気持ちは分かるが、私にも状況の理解は出来ていない」

 私の心を読んだかのように、そう答える先生。

 それはそうですよね。襲われたのもいきなりみたいですし。

「ただ……」

「ただ?」

 そう言って、言葉を区切る先生。

 よく分からないけど、何か心当たりがあるのかな?

「やつらに捕まったやつらは何処かに連れて行かれた後、目を虚ろにして帰ってくるんだ。おそらくは強盗の奴らに何かされたのだろう」

 その線が濃いだろうね。だけどこんなにも不可解な現象があるものなのかなぁ。まぁ、今の状況よりも不可解な生活を16年も続けてきた奴が言うなって感じだけど。

「……それよりさっきから気になってたんだが、お嬢ちゃん名前は?」

「はい?」

 今思い出した、という顔をした先生がいきなりそう聞いてきた。

 な、名前? 知らないよ!? どうしたら……!

「ああ、すまない。記憶が無いんだったな……。まぁ、記憶が無いなら仕方がないが、それでも呼び名があった方がいいだろう?」  

 それはそうですね。中身が男なだけに、いつまでもお嬢ちゃんはちょっと……。

 ――――――その時だった。

「お困りのようね」

 そんな声が聞こえたのは。 

「「!?」」

 その声の主を見つけるため、私たちはこの保健室を見渡すが、何所にも人影は存在しない。

「何だあれ!?」

「はい?」

 そんな時、ふと顔を天井に向けた先生が、いきなり私の後ろを、いえ、正確に言うと私の後ろの天井指差して大声を上げた。それにつられた私が後ろの天井を見ると、

「……麗香さん何やってるんですか?」

 私が美鈴の時の保護者である、麗香さんが天井に張り付いていた。

 …………本当に何しているんですか?

「あら、何その顔? …………すごくいいわ!!」

 私が冷めた目で見返していると、すたっと床に着地した麗香さんがいきなり悶えだした。とりあえず言っておかなければいけない気がする。

「この変態」

「ああ! もっと!! もっと罵って!! お嬢様~!!」

 ……言わなければよかったと思う。

 この空気には関係は無いけど、後悔しないように、とかいう人が言うけど、後悔なんてやってからしか生まれないし、完璧にできる人は絶対にいないと思う。

 つまり、『私の後悔』絶賛後悔中です。同時上映の『変態の麗香さん』についても後悔していってね。

 ……私は何を言っているんでしょうね?

「なんだ? もしかしてあんた、このお嬢ちゃんの知り合いか?」

 今まで呆気にとられていた先生が、ようやく正気に戻ったのか、麗香さんにそう問いかける。

「ええ、そうよ」

 すると、今まで悶えていた麗香さんは急に冷静になった。

「今更クールキャラ装っても無意味ですよ」

 本当に今更ですし。

「まぁ、それはともかく、意識リンクおめでとう。はい、記念品」

「あ、どうも」

 笑顔でそう言うと、何かを手渡してくる麗香さん。私は癖で受け取ってしまう。つい受け取ってしまった物を改めてみてみる。

 それは鞘に入った小型のナイフだった。鞘から引き抜いてみると、刃は透明で刃渡りは投擲にも、単純に近接武器にも使えそうな長さ。初めて持ったはずなのに、なぜかとても手に馴染む。

 ふむ。

「なんです、これ?」

「ナイフだよ」

「そんなことは分かってます」

 私が聞くと、やってやったという顔で自信満々に答える麗香さん。

 そんなことは、私の手の中にあるこれを見れば誰でもわかります。

「やや、ごめんごめん。えっと、そのナイフは『魔装填装 虹翼』といって、お嬢様の専用装備だよ?」

「まそーてんそー こうよく?」

 余計に意味が分からなくなりましたよ、麗香さん。

「そう! これで夢現発現している奴らを斬れば万事OKだよー」

 胸を張ってそう言い放つ麗香さん。

 いやいや、それはこの武器の説明じゃなくて今の状況の打開法でしょう。それにまた知らない単語が。

「夢現発現?」

「それじゃあ、レッツゴー!!」

「「話を聞けーーーー!!」」

 



 よく分からずに始まった『夢現発現』という現象と学校への強盗事件、それに加えて、校長の持っていた『あるもの』の関係。

 この時はただ、変な現象としかとらえていなかった。それがのちにあんなことになろうとは、だれも思わなかった。いや思えなかったのだ。

 これが最後の始まりだということに。



 

 たぶん続かないんだから! コンテニューは……無いよ、たぶん。


この作品を含む短編は全て思いつきで書いたものですが、感想をもらえればうれしいです。

時間があれば他の作品を読んでいただければ、より嬉しいです。

この文が他の作品の文と同じなのは、何度も書くのが面倒だからです。

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