表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

AtoZ短編集

研究の成果

作者: 原雄一

 星新一さまのショートショートを参考にしてます。かなり近い時もあります。


 感想、アドヴァイスあったらください。作者は決して怒ったりしません。むしろ、力になります。

 どうぞよろしく。

 あるところに、花好きのA氏という人が住んでいた。彼はとても花が好きで、いつも花のことを考えていた。

 また、A氏は博士でもあったので、花に関する研究の第一人者として名を馳せていた。

 ある日A氏は、花作りをより楽しむことはできないだろうかと考えた。そのためには、花作りにおいての苦痛を取り除かなければならない。A氏にとってそれは、花が咲くまでのもどかしい時間だった。

 花好きの人の中には、A氏の考えを邪道だと思う人もいるかもしれない。確かに邪道である。しかしA氏は、花が好きなのであって、花を育てるのが好きなのではなかった。だからである。

 A氏はその研究に没頭した。そしてそれは、案外簡単にできた。

 A氏の発明は粉末状で、それを肥料代わりに一度振りかけてやることで、あらゆる植物の成長が著しくなり、超高速で花を咲かせるというものだった。

 A氏はさっそくそれを試してみた。庭の隅にアサガオの種を埋め、それに発明品を振りかける。

 すると、見る見るうちに芽が出てきた。すぐにたくさんの葉が付き、花が咲いた。

「おお、これは素晴らしい効き目だ」

 A氏は喜んだ。

 しかし、喜んだのも束の間、その花がどんどんしぼんでいくではないか。そしてすぐに枯れた。

「ははあ、どうやらこの薬は、育つのも早くするが枯れるのも早くしてしまうらしいぞ」

 A氏は新たな開発に取りかかった。最初に作った粉末とその設計図は、庭の隅に捨てた。

 つぎにA氏が作ったのは、四角い形をした機械だった。赤い大きなボタンが一つ付いており、先にはアンテナのようなものが生えていた。

 これは、赤いボタンを押している間だけ粉末と同じ成分が照射され、植物の生長を促進する。そしてボタンを離すと照射をやめ、成長が普通どおりのスピードに戻るという仕組みだった。

 A氏はこれも試してみた。庭の隅にアサガオの種を埋める。そして機械を向け、赤いボタンを押した。

 ところが、何も起こらない。

 A氏は首をひねり、アサガオの種を掘り起こしてみた。そして直接成分を照射する。

 すると、アサガオは芽を生やし、やがてきれいな花を咲かせた。A氏がボタンを離すと成長は止まり、アサガオは見事な一輪の花となった。

 つまり、成分が悪かったのではなく、成分を照射するパワーが弱すぎて土を貫通しなかったということなのだ。しかし、パワーを強めるにはこの機械は小さすぎ、一から作り直さなければならなかった。

 A氏は新しい研究に取りかかり、この機械と設計図はまた庭に捨てた。

 A氏は次々と発明を重ねていった。しかしそのどれもがA氏を満足させる機能を持たず、そのたびにA氏はそれと設計図を庭に捨てた。

 ある日、A氏はまた新たな発明品を生み出した。しかし、庭にはもはやアサガオの種を埋めるだけのスペースがなかった。今までの失敗作で埋め尽くされていたのである。

 A氏はこれらを、きちんと廃棄することにした。かなりの大荷物であるが、頑張れば何とかなるだろう。

 A氏は失敗作をゴミ捨て場まで引っ張っていき、まとめて捨てた。

「ふう、これで新しい発明品を試すことができる」

 A氏は鼻歌交じりに帰って行った。


 一方、A氏の捨てた失敗作たちはゴミ処理場で焼却されていた。しかし機械なのであまり効果は得られず、その機能は維持されていた。

 それらはそのまま、埋立地に運ばれていった。


 ある時都心では、埋立地に芝生を植え、その上に公園を作ろうじゃないかという話が浮上した。これにはだれもが賛成し、早速作業に取り掛かった。

 芝生が植えられ、ほかにもきれいな花が植えられた。花畑ができ、木陰ができた。人々はそこに集まって来、自然を楽しみに来ていた。

 今日も開園時間が近付いている。外では人々が、今か今かと待ちわびていた。やはり、疲れた都心の人々を癒すのは自然に違いない。

 ところがこの時、大きな地震が起こった。これにより公園は甚大な被害を受けることになるのだが、この時それに気付いた者はいなかった。

 通常通り開園された。人々は待ってましたと言わんばかりに駆け込んでいった。

 ところが、中に入った人々はみながっくりと肩を落とした。自然がすべて枯れ果てていたためだ。この原因はいまだに解明されていない。


 しかし、読者の皆さまならわかるだろう。


 そう、公園中の自然を枯らしたのはほかでもない、A氏の失敗作だった。開園直前の地震によって起動し、植物の成長を早めてしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ