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Sランク以上の依頼

『ヴァン! レーダーに反応。何かが高速でこちらに接近しています』

「なんだって!?」

 外部に表示されたレーダーの画面を見る。西の方角から3機の飛行物体。しかし、その速度はガンシップなどのそれではなかった。

「早いな……まさか、ドラグノイド? ガイアの鋼竜騎士団(こうりゅうきしだん)か!?」


 鋼竜騎士団――国を、そして王を守護するために選ばれた十人で構成された特殊部隊の名である。そして、十人にはそれぞれ専用のドラグノイドとガンブレードが与えられている。

「もしかして、外界に飛び出したリリアを探しにきたのか?」

「わからない……。でも、こんなところで見つかって帰りたくなんかないわ」

 そう言うとリリアは、俺の事をまっすぐに見る。そして、信じられない事を口にした。

「ねえヴァン。今からあたしがあなたをボディーガードとして雇うわ! だからお願い。あのドラグノイドから逃げきって!」

「な、なにぃ!?」

「この機体もドラグノイドでしょ? なら、逃げ切ることも可能なハズ。ディオーネのギルドには後から正式に依頼を出すわ。きちんと報酬も用意するから」

 なんてことを言うんだろう少女は。あまりにも突拍子もない話に、腹を抱えて笑ってしまった。

 騎士団から逃げきれだって? それはガイアの鋼竜騎士団の全員を、ひいてはガイア全土を敵に回すに等しい。ギルドの難易度Sクラスに匹敵、いやそれ以上だろう。失敗した時のリスクが高すぎる。

 だからこそ、ひとしきり笑ったあとに俺は、はっきりと答えを言った。

「その依頼、乗った! 今から俺がリリアのボディーガードだ!」

「ほ、本当?! 本当に、こんな無茶な依頼を引き受けてくれるの?! しかも口約束なのに」

 その返事が信じられないのだろう。リリアは目を大きく見開いていた。

「ああ。こんな面白そうな依頼を逃す手はないさ!」

 リリアの表情が、パアッ! っと輝く。

 ハルは『また自分から厄介事に首を突っ込んで、どうなっても知らないぞ』とグチを言いながらも、いつでもアクションを起こせるようにドラグノイドをの出力を上昇させていく。

「ハル。リリアが振り落とされないようにハッチを閉めてくれ。操縦を外部に切り替え。普通に逃げきるのは無理な相手だ。ひとまずさっきの山に向かって飛ぶ!」

 ハルが応じ、外部操作に切り替わる。

 ドラグノイドの胴体内に入っていくリリアが「無茶はしないで」と言い、ハッチは閉じられた。

「よし、行くぞ!」

 進路を山に向け、機体の白い翼から青い粒子を放出させた。

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