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少女の名は

主人公とヒロインが初めて会話をします。頑張って二人に会話してもらいました。

「ふぅ、一時はどうなるかと思ったぜ。おまえ、一体どこに行ってたんだ!?」

 モンスター群から離脱した後、ある程度の高度に達して安全を確認すると、飛行速度を落としてからハルに向けて言った。

 てっきりハルの無機質な音声が聞こえてくると思っていたのだが、だがしかし聞こえたのは有機質の、人間の声だった。

『ごめんなさい。あたしが向こうの川まで連れていってほしいってこの子にお願いしたの』

「え!?」

 外部スピーカーから聞こえてきたのは女の声だった。

 そのことに驚いて固まっていると、勝手にハッチが解放されていく。

 中に居たのは、例の気絶していた少女だった。

 俺と目を合わせると、少女は両の手を合わせ顔を下げた。

 どうやら、イタズラが過ぎてゴメンね?――という意思表示らしい。

「まずはお礼を言わせて。ガンシップでモンスターに襲われているところを助けてくれてありがとう。ハルが教えてくれたわ」

 少女は優しい笑みを浮かべながら言いい、そして手を差し出してきた。

 それに応えるように俺も手を差し出し、握手をする。

「いや、礼なんていいって。俺はヴァン・フライハイトってんだ。ヴァンでいい。ディオーネのギルドに所属する何でも屋だ。見つけた時は気を失っていたけれど、大丈夫? どこも痛くはないか?」

「あたしはリリア。どこもケガとかしていないから大丈夫よ。ガンシップの操縦ってとても難しいのね。しかもモンスターに追いかけ回されちゃって……どうやら彼らのテリトリーを侵したみたい」

 やはり、その話からしてこの子はパイロットではないのろう。

「無事なら良かった。だけど、じゃあなんであのガンシップに乗っていたんだ? それに、きみは何者だ? 一体何の目的で不慣れなガンシップを操縦して危険な外界を飛んでいたんだ?」

 途端、困ったような顔をして黙りこんでしまった。どう説明したものか迷っているようだ。

「えっと……そうね、簡単に言ってしまうと家出かしら。あのガンシップはその時に偶然あって、勢いで乗って出てきちゃったの」

「家出!? あの王家のガンシップで!?」

 思わず声に出し繰り返してしまう。

 そんな俺にリリアは「うんっ!」と元気に返事をする。屈託のない、太陽のように眩しい笑顔だった。

 それにしてもスゴいなおい。もう家出なんてレベルじゃないよそれ。壮大な脱国劇だ。ガンシップの持ち主さんも可哀想に……。

「えっと……偶然乗ったってことは、それじゃあキミは一般人なのか?」

 こちらの問いにことりと首を傾げるリリア。しかしこちらの質問の意味を理解したのか、リリアは頷いた。

「ああ、うん、そうよ。まさか一般人が王家のガンシップを盗んで家出なんて、誰もやらないでしょうね」

 そう言うと、リリアはいたずらっ子のように愉快に笑ってみせた。してやったりって感じなのだろう。そんな笑顔を見ていると、こっちまで笑ってしまう。

「それで、これからどうするんだ? 外界は危険だし、ガイアに送ろうか」

 そう言った途端、リリアはさっきまでの笑顔から脹れっ面に変わると、声を大きくして言った。

「嫌よ! 出たばっかですぐに戻るなんて。それにガンシップも壊しちゃったし、ほとほりが冷めるまで帰りたくないわ」

 おいおいマジかよ、わがまま言い始めたぞこの子。

「ううん、そうは言ってもなあ……これからどうするんだ? ほとほりが冷めるまで外で野宿か?」

「野宿なんて嫌! あたしが暴漢に襲われたらどうするの? はっ!」

 途端に顔色が恐怖に歪むと、俺をビシッ! と指差すと震える声でとんでもないことを言いやがった。

「ま……ままま、まさかあなた、この空の上で邪魔者が居ないのをいいことに、あたしを襲う気じゃないでしょうね!?」

「んなことするかああああ!」

 全力で否定した。

「本当に? あたしが気絶している間に何かしてないでしょうね? 男はみんな獣だって教えられたわ」

 疑いの目を向けるなよ。誰だそんなこと教え込んだやつは。

 俺は、「そんなことしてねえよ」とあしらい、

「本題に戻るけど、とりあえずこれからどうするんだ? こっちもそろそろディオーネに戻ろうと思うんだけど」

 ジト目で睨むのを止め、まじめに考えだすリリア。

「そうね……せめて今日一日だけ、このまま戻らずにいたいんだけど……。ねえヴァン、どこか安全でいいところ無い?」

 どこか期待を込めた眼差しを送りながら言うリリアは、やはりどこか楽しそうだった。

 ……こりゃあ、簡単に帰れそうにないなあ。

「とりあえず、ギルドに連絡取らせてくれるか? 戻るのが遅くなりそうだと伝えときたいんだ」

「そ、そんなこと言ってあたしのことを通報する気じゃないでしょうね?」

 だからジト目でこっちを見るなよ。

「あのなあ、危険な外界で連絡が取れないことは死を意味するんだ。定期的に連絡を入れなかったらギルドから捜索部隊が出てくるんだよ。連絡は絶対にしなきゃならない」

 話を聞いて納得したのか、リリアは了承した。でもその顔は渋々といった感じだ。

 構わずに通信機を操作し、ギルドに通信を繋いだ。依頼が無事に完了したことと、モンスターに襲われたが無事で、だがそのせいで戻るのが遅くなりそうだと伝えた。

 本当にリリアのことを伝えようかと迷ったが、リリアが不安そうな眼差しでこちらを見るので、やっぱりやめて、通信を終えた。

「言わないでくれたのね。ありがとう」

「いいよ。家出中なんだろ? ギルドには遅くなるって連絡したから、今日は気の済むまで外を満喫するとイイ。その後で俺がガイアに送ってやるからさ」

「ほんと!? やった! ヴァン、あなたイイ人ね!」

「んなっ……!」

 リリアの唐突に放った言葉と、その満面の笑みで、俺は呆気にとられてしまった。鼓動が早くなるのを感じ、照れ隠しに鼻をかく。

「ま、まあな。それじゃぁ、どこか行きたいところあるか? ただし、モンスターのテリトリーを侵さないところに限るけどな」

「あ! そこを突くなんてひどーい! 不可抗力だもの、あれはしょうがなかったの!」

 そう言い、そっぽを向くリリア。その反応を見て、ついつい笑ってしまった。

 そんな俺の反応を見て、更に頬を膨らませるリリア。これがまた面白く、俺は更に笑ってしまう。

 だがそのとき、突如危険を知らせるアラート音が鳴り響いた。

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