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白と黒の戦い

「これが、団長同士の戦い……」

 高速で移動しながら交差する赤と黒。そのニ色が交わるたびに激しい粒子の火花を散らす。

 それと同時に限界を超えた動きの負荷で各部関節からはスパークがほとばしり、翼の装甲は破片となって戦場の空に舞っていた。

 その後を追うように飛行しながら、

「後少し……後少しで追いつくことが出来るんだ。あと数十秒、リードがもう少し耐えてくれれば!」

 両者は距離を置いた飛行状態から再び接近すると互いの武器をぶつけあった。激しい攻防が展開されその度に空気が震える。

 ライデンのガンランスが一旦引いた。その隙を突いてガンスピアを突き出すリードだが、その刃はライデンには届く前に分厚い盾に阻まれる。

 そして次の瞬間ーー頭上に振り上げられたガンランスがリードに向かって力いっぱい叩き降ろされた。

 リードはガンスピアで受け止めたがパワーを受け止めきれなかったのか、バランスを崩し機体ごと一気に高度を落とされてしまった。

 機体の翼をはためかせて機体の体勢を立て直そうとするリードだったが、その一瞬の隙をライデンは逃さなかった。

「リード! ……な、なんだよ、アレ」

 目にした光景――変化していくガンランスに、ヴァンの全身に戦慄が走った。

 その巨大なガンランスが花のように展開。そしてその中央には巨大な――ドラグノイドが放つエネルギー弾の倍を優に越えるほどの――粒子エネルギーが中心に出現した。

 それをリード機に向け、標準を合わせる一瞬の間――

「や、やめろ……撃つなーーーーーー!」

 しかしヴァンの叫びも虚しく、死を運ぶ巨大な青い光は撃ち出され、赤い機体に吸い込まれた。

 光りが膨張し――次の瞬間、大爆発を起こした。

「リイドーーーー!!」

 頭が真っ白になる。だがそれとは対照的に、心は黒々とした感情が飲み込んでいった。全身が火を噴くほどに熱くなり、視界は狭まり赤く染まる。

 よくも、よくもリードを……! 許さない!!

「ライデーーーーン!!」

 怒りに任せ、ガンブレードのトリガーをがむしゃらに引いた。次々にエネルギー弾が発射されていく。

 だがしかし、声に反応しこちらに気付いたライデンは機体を上昇させ難なく回避したライデンは機体をこちらに向けるとガンランスを構えた。

 鼻から、こいつに遠距離戦が通用するなんて思っちゃいない!

 即座に判断しガンモードからブレードモードに切り替える。

 リードが勝てなかった相手に俺一人の力で勝てるとは思えない……ならば、最初の一撃に俺の全ての力をぶつけてやる! 

 二振りのガンブレードを右後方に構えて、重ねる。

 粒子の光が強くなるのを感じると、重ねた柄を両手でめいいっぱい強く握った。

「うおおお!」

 白と黒の竜が交差する瞬間、速度を乗せたガンブレードの一撃を繰り出す。

 しかしライデンは素早い動きでガンランスを振り上げ、打ち下ろした。

 二振り、いや、一本の大剣と化したガンブレードとガンランスがぶつかる。生じた衝撃が空気を震わせ、激しい火花を散らした。

 渾身の一撃はガンランスを押し返し、ライデンの首筋にまで迫る――が、

 こ……渾身の一撃を、止めた……だと!?

 首筋に僅かに刃が届いたところで、進行は止まっていた。その首筋には僅かに血が滲む。

「いい技だ。だが……そんな無理な体勢では力は半減してしまう」

「く……っ!」

 ヴァンはライデンを睨み、

「よくも……リードをやったな!」

「戦争を終わらせるためだ。リードを倒したことでディオーネはもう降参しか選択肢は残されていない」

「そっちからいきなり仕掛けておいて、なにを!」

「攻められる理由を造ったのは……そっちだ!」

 ライデンの眼光が鋭さを増した。それと同時に、膠着状態で火花を散らしていたガンブレードが徐々に押し返されていく。

「な……に? それはどういう――」

「はあああ!」

「う、うわあああ!?」

 急激にライデンの力が強くなり、大剣となったガンブレードが一気に押し返され機体ごと後方に弾かれた。

 こいつ……リードとの戦いで消耗している筈なのに、どこにこんな力が!?

 崩された体勢を立て直す。そしてガンブレードを構えようと――しかし、出来なかった。

 腕が……動かない!?

 それに気付いた瞬間、手と腕を激痛が襲い、ヴァンの顔が歪む。

 まさかさっきの攻撃の反動で!? ここまでの痛みが……!

「これ以上犠牲者を増やしたくなければ、早く降参するよう軍に伝えろ! さもなくば……お前を見せしめに終結させる!」

 ライデンはガンランスを後方に引いて構え、黒い竜の翼から大量の粒子が放出され一気に加速をかける。

 瞬間、串刺しにされるイメージが脳裏に浮かぶ。それは、間近に迫った「死」のイメージ――

 攻撃力を最大限に引き出せるタイミングで撃ち出された長大な槍が目前に迫る。

 なんとか逸らさなければ、やられる!

 両手を襲う痛みを堪え、二振りのガンブレードを胸の前で構え防御体勢を取った。

 直後、撃ち込まれたガンランスの刃がぶつかり重たい衝撃が全身を軋む。

 ガンブレードから伝わる衝撃に、手が、腕が、肩が悲鳴を上げる。そして、


 バキィン!


「なっ……!?」

 目の前には見慣れた刀身が宙を舞っていた。粒子の刃はエネルギーの供給源を失い、空中に飛散。残るは刃のない刀身と、先端に開いた銃口――


 が、ガンブレードが……折れた……!?


 絶望と同時に襲う浮遊感。

 ライデンの強力な一撃に、ヴァンの足場が支えきれずにドラグノイドから外れていた。

『ヴァン!?』

 ハルの焦りの声が響く。

 足場の踏ん張りが効かなくなった為に体勢が崩れる。しかし、それが逆に功をそうした。

 バランスを崩した事で突きの線上から上体が逸れ、ガンランスはこめかみの辺りをかすめた。頭に巻かれていた布がちぎれ飛び、こめかみに痛みが走る。

 そこに大きな盾が上から振り下ろされた。直後、胸部に鈍い衝撃――

「がっ……!」

 肺から空気が絞り出され、ヴァンはまともに悲鳴を上げることも出来なかった。

 浮遊状態で上からのプレスに抗う術がある筈もなく、ヴァンは宙に身体を投げ出されていた。

「ぐ……。は……ハル!」

 呼吸困難になりながら、精一杯に、叫ぶ。

 落下速度を超える勢いで迫る白のドラグノイド。

 その後方ーー上を見ると、ライデンのドラグノイドがエネルギー砲の発射態勢に入っていた。

「ハル! 後ろ――」

『構いません! 避ければ、ヴァンが死んでしまいます!』

「――!」

 直後、白のドラグノイドの後ろ半分が爆発した。

『早く掴まって!』

 横に並んだドラグノイドの首に掴まる。迫る地面を避けるために翼を大きく広げてハルは逆噴射をかけた。

『間に合いません! 振り落とされないようしっかり掴まっていてください!!』

 ハルがそう言い終わって一瞬後、地面に衝突し激しい衝撃がヴァンを襲った。

「あああ!?」

 衝撃に耐えきれず、ヴァンの身体は再び宙に放り出された。

 地面に背中から叩きつけられ、呼吸が出来なくなる。そのまま地面を転がり、やっと止まった。

 意識が朦朧とする。視界は暗く、口の中には土と血の味がした。

 ジャリ――っと、大地を踏みしめる音が聞こえ、ボヤケた視界の隅に黒い人影が映る。

「う……ライデン。お前……」

 痛む身体に鞭を打つ。こめかみの傷が再び開き、血が頬を伝い地面に落ちたが、構わず上半身を無理矢理起こして右手の刀身が半分しか無いガンブレードをライデンに向けた。

 ちらりと周りを見ると、ドラグノイドは岩場に衝突し止まっていた。

 墜落の衝撃を受けた前足は付け根から吹き飛んでおり、地面にはボディーが地を削った跡が長く伸びていた。

 ああ……すまない、ハル……。ちくしょう……リードの仇を取ろうと挑んだってのに、あっという間にこの有り様か……。

 再び視線をライデンに戻す。

「今度会う時は戦場で無いことを願うんだなと、俺は言った。そして、戦争が起きてしまった以上、終結させる為に俺は全身全霊で戦う」

 残った力を振り絞って立ち上がる。

 身体のあちこちが悲鳴を上げ、左腕は上がらず、右腕はガンブレードをなんとか構えるだけで一苦労だった。

 ライデンの歩みが止まる。ライデンの武器が十分に届く距離まで近付いてきても、ヴァンの折れたガンブレードは届かない。

「さらばだ……ヴァン・フライハイト!」

 ガンランスを構えた腕に、力が入る。

「――止めなさい!!」

 突然、ディオーネの軍艦から、町から、通信機から、そして、王宮から――あらゆる音声機器からその声は流れ、戦場に響きわたった。そしてディオーネの王宮からホログラムが投影された。そこに映し出される少女の姿に、ヴァンは無意識にその名を叫んでいた。

「リ、リリア!!」

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