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開戦

 戦艦を追いかけるように飛行し始めて一時間後、ヴァンはガイアの戦艦を目に捉えた。

 しかしそれと同時に、故郷のディオーネ。そして既にディオーネとガイアの間には最終防衛線というように、十隻のディオーネ戦艦が横一直線に並んでいるのが見えた。

「ガイア戦艦が接近しているのに気付いてディオーネも所有している戦艦を出したのか!」

 でもこれじゃあ、一触即発じゃないか! 頼む、最悪の事態にだけは……!

 心の中でそう呟くと、ヴァンは拳を強く握り、天に祈った。

 その時ディオーネ戦艦の一隻から、大音量でガイア艦隊に呼びかけが始まった。

「ガイア戦艦に告ぐ! これ以上自国に接近すれば、侵略行為と見なす! 即刻進行を停止し領内から出ろ! こちらの指示に従わぬ場合――」

 先頭の巨大戦艦から幾つもせり出している鉄の砲身が、ゆっくりと動いているのが見えた。

 走る戦慄に、背筋が凍りつく。眼の前の現実が信じられず、ヴァンは反射的に声を張り上げていた。

「や、やめろ……撃つなーーーーー!!」

 ドオン!!

「ああっ!!」

 叫びは虚しく消え去り、替わりに轟音が鳴り響く、大気を震わせ、次の瞬間にはディオーネ戦艦から爆発音が響き煙が噴き出した。

 それが、開戦の狼煙となった。


 * * *


「初弾命中! ディオーネ戦艦から鋼竜騎士団。続いてガンシップが発進してきます!」

 クルーの報告に、カーティスは不適に笑うと艦長席から立ち上がった。

 手を前方に突き出し、声を張り上げる。

「これでこちらの意思は十分に伝わっただろう。さあ、戦争を始めようじゃないか……我が軍も鋼竜騎士団発進! 続いて、ガンシップを全て発進させろ! ディオーネに、絶対的な力の差を見せつけるのだ!」


 * * *


「いきなり撃ってくるとは……ガイアの連中、マジで狂ってやがるぜ……」

 自国の戦艦から昇る黒煙を見て、リードはボヤいた。 

「向こうも早速、鋼竜騎士団を出してきやがったか。やれやれーー5年前は共に国の存亡を守るために戦った仲だってのにな」

 赤いドラグノイドのコクピットの中、リードは映し出されたガイア戦艦から発進するドラグノイドの姿に眼を細める。だがしかし、それもすぐに見開かれることとなった。

 戦艦からドラグノイドが次々を発進。それに追随するようにガンシップが発進しているのが見える。だがしかし、その次々と発進するガンシップに、リードは目を疑った。

「な、なんだ……こりゃあ……冗談だろ?」

 団員から、焦りを含んだ通信が入る。

「だ、団長……これはいったい?」

「俺だってわかんねえよ。こんな……こんな馬鹿なことはありえねえぜ……なぜ全てのガンシップが、粒子を尾を引いてる!?」

 アースクリスタルは絶大なエネルギーを得ることが出来るが、その数は両国共に三十個ほどしか保有していない。そのために、戦艦クラスの動力源と鋼竜騎士団のみが与えられる力ーーこんなことが、あるはずがないのだ。

 だがしかし目前に広がる光景は、戦艦から発進したガンシップの全てが粒子の尾を引いていた。その速度は、アースクリスタルの恩恵で通常のガンシップではありえないほどの速度が出ていることは見て明らかだった。

 その光景に、リードは奥歯をギリッと噛んだ。

「理由はわからんが……ガイアはアースクリスタルを複数持っているってことだけは確かだ。それが……現実だ……! 全機、後ろを取られるな! 複数機に後ろを取られたら、いくらドラグノイドでも逃げきれなくなるぞ!」

 団員に告げ、リードは機体を加速させた。


 * * *


 眼の前の光景に、ヴァンは絶望が心を蝕まれていくのを感じていた。

 開戦から三分と経たずに両国のガンシップは入り乱れ、ディオーネの空に戦火の光が幾つも瞬いては消えていく。既に、ディオーネは劣勢に回ろうとしていた。ガイアのガンシップが早すぎるのだ。

 空中戦において速度の優位性は絶大なアドバンテージとなる。

 その証拠にガイアのガンシップが機銃を撃つ度、ディオーネのガンシップが煙を噴いて落下していった。

「なんとか止めないと……このままじゃ、ディオーネが……故郷が落ちる!」

 でも、どうすれば? このまま突き進めばもうすぐ俺も戦火に入り込むことになる。けど、俺一人にこの戦争を止められるだけの、覆すことができるだけの力は無い。だからってこのまま、ディオーネが落ちるのを見てなんて、いられるわけがない!

 覚悟を決めて戦火に突入しようとした。そのとき、

「ヴァン。あたしを王宮に連れていって。ガイアに、これ以上こんな戦いを続けさせない……」

「なにを言っている!? 今リリアが王宮に行ってどうなるってんだ! それよりも何か別の方法をーー」

「あたしが……あたしが何とかする! だからお願い。一刻も早く王宮に連れていって!」

 懇願するかのような声で、言う。

 その哀しみを帯びた声に、ヴァンは苛立ちを押さえて、

「……何か、策があるってのか? 王宮に行けばこの戦争を止める術がある。それが……この戦争を止める一番の方法だと?」

「うん。もう、この方法しかないの。だから、あたしを王宮に連れていって」

「リリア……」

 いったい、リリアがどんな秘策を持っているのかは分からない。けど、この戦争を止めることが、本当に出来るというのなら……今はそれに、リリアにかけるしかない!

「よし……行こう。王宮へ!」

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