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朔望の月  作者: お春
5/13

お月様のでる頃に

遅くなりましたが

あけましておめでとうございます。



駄文晒してすみません(゜Д゜)

夜も深まって来た頃、3人の少女はひそひそ話に盛り上がっていた。

いや、正確に言えば、2人。

「りつちゃんのお兄さん、かっこいいよね」

と結衣子。

「いえ、兄は顔だけですよ。商売も喧嘩も下手で、困る位なんです…」

それに、りつが答える。

朔は全く発言しない。

なぜなら興味がないから。

それだけ。

朔と結衣子の布団が並び、その前にりつの布団。

枕同士が向かい合うそれは、朔にとって苦痛でしかなかった。

…眠い。

が、それなら寝てしまえ、というのも朔にはできなかった。

「あははっ。…ねぇ、朔起きてる?」

「…うん」

…このように、知ってか知らずか、結衣子が本当にちょうどいいタイミングで朔の眠気を飛ばす。

それをだめ押しするかのように、2人の少女の甲高い声がひっそりとした室内に響き渡る。

…もうちょっと、静かにできない?

朔はこの状況にざっくりとした既視感を覚えていた。

修学旅行。

朔にとって、あるたびに苦汁を舐める行事。

同じ部屋になった子たちが、夜通し吉沢君がかっこいいだの、中森さんがうざいだの言い合ってたなぁ…。

と朔はそんな会話を頭の片隅から引っ張り上げる。

あの時も、やけにテンションの高いひそひそ話のせいで眠れなかったのだ。

まさかここで再び巡り会うとは。

お願いだから、部屋変えてくれないかなぁ…。

小学校からずっと体験してきた苦しみに、朔は重いため息をつく。

盛り上がる2人をおいて、朔は睡魔を快く迎える事にした。

布団にもぐり込むと、耳をふさいで目を強く閉じる。

もう絶対寝る。絶対、絶対…。

低迷する意識もそのままに、朔はゆっくりと眠りに落ちて。

「朔?」

…起こされた。



「朔、顔色悪いよ?大丈夫?」

「…うん、気にしないで」

多分寝不足が原因だから。

次の日の朝、朔は最高に機嫌が悪かった。

眠いという生理的欲求を満たす事ができず、イライラとしている。

こんなんじゃ、ダメだ。

今日出発なのに。

「ね、朔見て。月がピンク」

結衣子が朔の気を紛らわそうと、開けた障子の向こうを指差す。

「…ほんとだ」

その言葉を気にしてみれば、本当に月はピンク色をしていた。

朝と呼べないほど真っ暗な空に、淡いピンクの月が2つ。

形は変わらず三日月と楕円。

「ここではその月の時が朝なんです」

不意に声がして振り向けば、静かに微笑みを携えるりつの姿。

「あ、おはよう。りつちゃん」

「おはようございます、結衣子さん、朔さん」

朔には挨拶をするという常識がなかったが、 とりあえずされたので返す。

「おは」

「なんかまだ夜みたいだよね。変な感じ」

結衣子に遮られる。

ちょっとムっとするが、当の結衣子は気にしない。

いや、気づいてない。

「…ねむ」

なんだかもう、どうでもよくなって1つ大きく欠伸をする。

「寝不足ですか、朔さん」

それにすぐさま反応したりつが心配そうに尋ねてきた。

やっぱり年下に見えない。

睡魔なんてぶっ飛ぶ位、かわいすぎる。

この子、モテるだろうな。

朔は心の内でとにかくりつをべた褒めすると、大丈夫だよ、と言ってにこりと笑った。

とその時、微かに障子の開く音が聞こえた。

「起きられましたか」

同時に後ろから声がしたので振り返ってみれば、麻之助が部屋の前に立っていた。

「兄さま。もう支度は整っています」

「そっか。…では、この後の事についてなんですが」

麻之助が部屋に入ってきて座る。

それをみて、3人も円になるように座った。

それまで和やかだった雰囲気が一変して緊迫する。

それほどまでに、妖姫様への道は険しいらしい。

「ここから少し行ったところに、森があります」

昨日カルタ衛兵がいたところか。

夜だからと言うのもあるが、かなり薄暗く見えた。

やだなぁ…虫とか出そう。

暗いのよりも、虫に刺されるのが嫌。

痒いし。

そんな事を考える朔をおいて、麻之助は続ける。

「その森を抜けると、物知りな天狗のおじいさんがいます。その方に、城への道を聞いてください」

天狗?

まじで言ってる?

…この世界って、本当に何でも有りなんだ。

朔は驚きを通り越して感心した。

月が2つあるなら、天狗くらいいてもおかしくないか。

とりあえず、納得する。

「森は危ないので、抜けるまでは私たちもついて行きます」

どうやら城まではついて来てくれないらしい。

しょうがない事だけど、知らない土地で結衣子と2人じゃ心細い。

彼女もそう思っているらしく、視線が飛んでくる。

朔はそっと苦笑いした。

「それと、夜は絶対にどこかへ泊まってください。野宿をすれば、絶対にカルタ衛兵に捕まりますから」

「こわ…」

麻之助の言葉に、結衣子が怯える。

そりゃ異世界に飛ばされるなんてかなり怖いけど、多分大丈夫でしょ。

一方の朔は持ち前の楽天的な考えで、麻之助の注意をそれとなく受け流す。

「いいですね?では、行きましょうか」

麻之助はにこりと笑むと、たちあがる。

「え、もうですか?」

外にでること大嫌いな朔は彼の早急さに驚いて声をあげる。

いくらなんでも早すぎない…?

まだ起きたばっかりだし。

だが、麻之助はきっぱりと言い放った。

「森を抜けるには半日かかるんです。この時間に出ても着くのは夕方になりますから。さぁ、行きましょう」

きっぱりながらも申し訳無さそうな麻之助の言葉に、朔は渋々ながら動いた。

しょうがない。

さっさと行って、さっさとこの世界からおさらばしよう。

朔は1つ大きく欠伸をすると、ぐるりと家を見渡した。

…そうだ、歴史の教科書。

どこかで見たことのある内装は、中学の時に歴史の教科書で見たんだ。

「はー、すっきり」

朔はやっともやもやが晴れたような気分になって、1人顔をほころばせた。

「朔ー?早く行くよ?」

すでに先に出ていた結衣子によばれる。

普通においてかないでよ。

「今行く」

朔はほころばせた顔をいつもの仏頂面に戻すと、部屋を後にした。






アクセス本当に

ありがとうございます(^O^)

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