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朔望の月  作者: お春
2/13

追いかけて、落ちて。

出来るときに沢山投稿します(^^)


「あっつー…」

結衣子が太陽を見上げ、顔をしかめる。

朔もつられて見てみれば、目を潰す程の輝きが

、雲一つない青空を支配していた。

こんな日は、やっぱり部屋でのんびりしていたい。

外になんていたら、熱中症で倒れてしまいそうだ。

「アイスどこで食べる?」

「そこ。日陰だし」

しっかりと奢らされたアイスを手に持ち、朔は広場のような所にあるベンチに腰掛けた。

広い公園には、小さい子供の姿も見える。

よくもまぁ、暑いのにあんなにはしゃげるものだ。

若いっていいなぁ、とか思いつつ、朔は吹き出る汗を拭うのも億劫になって、さっさとアイスの袋を開ける。

冷たい。

ひんやりとした感覚が、喉元を通り抜けてゆく。

「はぁ、生き返るーっ。やっぱり夏に食べるアイスは最高だね、朔」

結衣子の言うとおりだ。

最高。…でも。

「頭いたい…」

頭を、何ともいえない痛みが走る。

初めての体験。

キーンという表現が似合うこれが、噂に聞くアイスクリーム頭痛というものらしい。

かなりいたい、これ…。

「あんた、がっつきすぎだって」

アイスなんて溶けてこぼれるのが嫌で、あんまり食べないから。

しょうがないんだよ。

と反論しようとしたその時、足にぽとりと何かが落ちた。

「あ」

…アイス。

思いっきり、こぼれている。

棒に残った方が少ないんじゃないの、これ。

「わ、朔こぼれてるじゃん!」

「…どうしよ」

「ティッシュとか、タオルは?」

「…」

持ってるわけがない。

手洗っても自然乾燥で事足りるから。

「…あんたが持ってるわけないよね」

いろいろと悟ったらしい結衣子が、バックをごそごそとあさり出す。

「しょうがない、これ使って」

可愛いキャラクターの描かれた、ハンドタオルが差しだされる。

さすが女子。

タオル持ち歩きなんて、尊敬します。

朔はそんな事を考えながら、差し出されたタオルでアイスをぬぐいとり、個体は地面に捨てた。

「洗って返す」

「いいよ、別に」

「…じゃあ、お言葉に甘えて」

朔はアイスでべたべたのタオルを結衣子に渡す。

そう言ってくれるなら、甘える事にしよう。

その方が、めんどくさくなくて良いし。

「いや、そこは甘えないでよ、人として…。まぁいいや」

彼女は文句を言いながらもタオルを受け取る。

「そろそろ行く?」

バックにしまう途中に、ケータイで時間を確認した結衣子が立ち上がる。

「行く」

朔も頷いて、ゴミを袋に入れてから立つ。

手に持ったゴミをどうしようかと、辺りをきょろきょろと見渡せば、広場の奥の方に白いフェンスでできたようなゴミ箱があった。

遠い…。

距離にすればほんの20メートル程だが、日向だし、相変わらず太陽はギラついてるしで、朔は顔を歪めた。

「めんどいなぁ…」

嫌気がさして、ぽつりと呟く。

「なんか言った?」

聞こえていなかったのか、結衣子は首を傾げる。

「別に。ちょっとゴミ捨ててくる」

追求されるのもだるい。

ゴミ捨てて即戻ってこよう。

朔の持つゴミ袋がかさりと音をたてる。

が、その音も蝉の大合唱により打ち消され、朔の耳には入らなかった。

「あつ…」

射るような鋭い熱が、身体中を這いずりまわるような感覚。

それに思わず立ち止まり、朔はゴミを捨ててから動く事を躊躇った。

ゴミ箱の中からは、特有の臭いが溢れている。

うわ、これ臭い。

絶対なんか腐ってるよ…。

耐えきれなくて、朔は視線をあげ、涼しげに広がる森林を見つめた。

「…?」

なにあれ、…猫?

少し遠くを、白銀の生き物が走っていく。

猫にも見えたそれは、なんと二足歩行で走る、走る、走る。

「朔ー?あんた何してんの…って、ちょっと!」

結衣子の声が、朔の背中にぶつかる。

朔が木々を通り過ぎれば、蝉が驚いて飛び立つ。

追いかけていた。

いつの間にか、身体が動いて。

暑さなんて、流れる汗なんて忘れて。

だって、あんな生き物見たことないし。

それにやっぱり、興味のあることはとことん追求する性格だから。

「朔っ!」

「結衣子」

隣には、汗だくの結衣子がいた。

「あんた、何いきなり走り出してんの…っ」

「ちょっと面白いことがあって。ほら」

指をさして示せば、結衣子の目が大きく見開かれた。

凄い驚きよう。

「何あれ…狐、だよね?」

狐?

朔は自分で示した指の先を見る。

「…ほんとだ。狐、だ」

白銀の、狐が二足歩行。

わけがわからなくなって、朔は一瞬瞳を閉じた。

何か、こんな感じの話、聞いたことのあるような。

これって…。

思い当たる節をみつけて、朔は目を開いた。

「…あれ」

「?」

「いない…」

いつの間にか、狐がなくなっていた。

「ほんとだ…」

木々が生い茂るなか、2人の少女が顔を見合わせる。

「暑くて、脳がおかしくなったのかな、私たち」

結衣子は自分の頭を叩いた。

「でも、いたよね?確かに見たし」

目を離した隙に、別の方向に行ってしまったのかも。

そんなことを思っても、納得のいかない朔は一歩を踏み出す。

「どこ行くの?」

「探す」

「戻らないわけね…」

汗だくの2人は、見えない狐を追って歩き出す。

結衣子はぶつぶつと文句を言っているが、朔は気にしない。

狐の方が今は大事。

「ねぇ、やっぱり戻らない?図書館行かないと」

後ろについていた結衣子が、さらに奥に行こうとする朔を引き止めるように声をはった。

「ちょっと待って」

見つけられる気がするから。

そう言って、ごく普通に前へ足を踏み出した、その時。

ふと、朔は身体が宙に浮いているような気分になった。

「え」

いや、正確にいえば、浮いていた。

「朔っ!?」

結衣子の声が、遙か遠くへと消えてゆく。

地球の重力により、朔は闇の中へと引き込まれる。

落ちている。

猛スピードで、真っ暗なトンネルを急降下。

「…」

聞いたことのある、このシチュエーション。

ウサギを追った、かの有名な少女と同じ。

これって…。

「…アリス?」





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