少女、2人
一応、和風ファンタジーを目指しています。
不思議の国のアリスをモチーフとしていますが、微妙です…。
未熟ですが、どうぞよろしくお願いします(^^)
森月 朔。16歳。
日本人。一応女子高生。
只今、自宅で宿題中。
「朔ー、あんたほんとに女子高生?」
「うん、まぁ。…なんで?」
朔はため息をつく友人をみて、首を傾げた。
「…あんた、人からよく、変わってるね~とか言われない?」
「…」
「図星か…」
もう一度、深いため息をついたのが、
星野 結衣子。同じく16歳。
高校入学時にできた、朔の友達。
そして彼女は、朔にとっての最後の友人である。
高校に入学したての頃は、朔の周りには友達と呼べる人たちが沢山いた。
帰り際に同じクラスの男子について話したり、休日に遊んでプリクラを撮ったりもした。
が。
4月中に、友人と呼べる人の数は半分に減った。
5月には、半分が半分になった。
6月には、数える程度に。
7月は変わらず。
そして夏休み真っ盛りの8月。
あれだけいた友達が、遂に1人になった。
理由はわかっている。
この、めんどくさがりな性格。
何をするにも適当で、最初こそ合わせていた話も、途中でめんどくさくなってやめる。
外に出るよりも家で寝ている方が好きな極度の出不精。
なのに興味のある事は熱中したら止まらない。
周りから、一緒にいてもつまらないと言われるのも、納得できる。
本当は、それじゃあだめだとわかってはいるものの、なかなか直せない。
というか、直すのすらめんどくさい。
それが彼女の性分なのだ。
「…部屋も汚いし…あんたさぁ、そういうとこがだめなんだって。…聞いてる?」
聞いてる?
突然の問いかけに、朔は戸惑った。
全くと言っていいほど、耳に入らなかった。
「…ごめん、聞いてない」
正直に、そう言う。
「…そうだね。あんたに説教しても聞くわけないよね。っていうか、そこは普通聞いてるって言うべきじゃない?」
結衣子は半分呆れたように朔から視線を外した。
暑いのか、流れる汗をタオルで拭う。
だって、嘘ついたら後がめんどくさいじゃん。
…とは言わず。
「次からそうする」
「…」
はぁ、とまたため息をつかれる。
今日で3回目。
会ってまだ10分足らず。
「結衣子、宿題やろ」
がっくりと肩を落とす彼女に朔は声をかける。
とりあえず、今日の目的を果たしてから結衣子のため息について考えよう。
朔は目の前にある問題集を一冊とり、問題を解き始める。
「…自由人め…」
それをみて、結衣子がぽつりとこぼした言葉も、朔の耳には入らない。
頭を巡るのは、数字と記号と公式。
心地よいリズムにのって、手に持つペンが踊る。
勉強は、朔にとって苦痛ではない。
特に考え込むこともなく、答えがわかるから。
元友達の中の何人かに、頭がいいね、と言われたから多分そうなのだろう。
比較をしたことがないから、いまいちよくわからないけれど…。
とりあえず、人間関係よりも何千、何万倍も楽なことは確かだ。
「ねー、朔」
しばらくして、結衣子の声が聞こえた。
見れば彼女が、下敷きでパタパタと顔をあおぎながら、斜め上を見つめている。
「なに?」
「あつい」
なるほど、結衣子はエアコンを見ていたらしい。
でも残念。
「…図書館行く?」
「なんでよ」
「これ、壊れてるから」
去年の夏、宿題奮闘中にいきなり温風がふいて、それからすぐに風すらふかなくなった。
「…」
結衣子はあり得ないというような目で朔を見つめてきた。
「…行かない?」
「アイス、奢ってよ」
エアコンを買いに行くより、そっちのがまし。
買いに行くのなんて、めんどうな事の極みだしね。
朔は頷くと、荷物をまとめ、結衣子と共に部屋を出た。
階段を降りて、玄関で靴を履く。
サンダルがよかったけど、スニーカーしかないからそれを履いた。
「…あ」
「どうしたの?」
「…財布忘れた」
めんどくさいが、取りに行かないと。
アイスが買えない。
「あんたねぇ…」
結衣子が呆れたような声を出す。
靴を履いたままの状態で、部屋まで行こうとする朔の耳には、はぁ、という結衣子の小さなため息が聞こえた。
…4回目。
そろそろ結衣子も私から離れてゆくのかな。
何となく察しはついていた。
彼女のため息の理由。
それでも、離れていったらいっただ。
いつものように、友達から元友達にカテゴリーを変えるだけ。
他の子たちの方に行ったって別に。
引き止める理由なんてないんだし。
ひとりぼっちは慣れている。
…あぁ、でも。
「はぁ…」
ただ少しだけ、心の奥底で泣いている朔がいることも、確かであった。