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私の身の上に起きた「なろうの王道展開」。~これを超えるエピソードの方、挑戦お待ちしてます~

作者: いかすみこ
掲載日:2026/03/26

以前に友人に言われたこと。

「どうして、あなたって、そんなに変わったことばかり起こるの? 」


長年の友へ。奇遇ですね。

私も同じ疑問をずっと抱いていました。誰か教えて( ;∀;)

 

 それは一本の電話からでした。見慣れない番号。恐る恐る出ると、思いもかけない相手からでした。 高校を卒業して一番最初に勤務した会社の、指導係の先輩からです。

 私は慌てました。

 実は電話を受ける数か月前に、その会社を訪問していました。

 私は個人事業主です。フリーランスのエンジニア。開業にするにあたり、その会社に挨拶に行きました。私の始めた仕事は、最初に務めた会社と同業種です。相手は超大手企業なので、ライバルになるわけではありません。しかし、一応は事前に挨拶をしておいた方が良いだろうという小心者的な発想でした。


 その時は、顔見知りだった先輩に頑張れよと言われただけだったんですが……


「えっと、やっぱりお叱りですか? 」


 会社で受けた研修や指導してもらった知識で仕事するわけです。裏切り者と言われるのでは……おびえていると、否定されました。


「ちがう、ちがう! うちも人手不足だから、全然気にしてない」


 じゃあなぜ? と聞こうとしたら、答えを教えてくれました


「OB会に出席しないか? 」


「OB会!? 」


 思いがけない提案です。

  詳しく説明されました。OB会は定年退職をした社員が集まって宴会するそうです。 先輩は幹事役。コロナでしばらく中止されていたが、数年ぶりに開催されるらしいと。


  「なぜ私が? 私、入社をして数年で辞職しましたよ。それに辞めたのも20年以上前ですし」


  「主催者の元部長に頼まれて。この間、会社に来た時に名刺をおいてっただろう。それを知って、ぜひにと」


 ますます困惑しました。宴会の盛り上げ要員? 理由が思いつきません。


 まあいいや。深く考えないのが、私のライフハック(生活の知恵)です。

 その会社は、業界最大手です。仕事に役立つ話が、聞けるかもしれません。


「はい、じゃあ出席で……あっすみません。課長だったTさんって来ます? 」


 実は私が辞めた理由が、当時の直属の上司だったT課長からのパワハラ。メンタルを病んでしまい、仕方なくの退職でした。


 20年以上前とはいえ、まだ記憶に残っています。顔を合わせるのは、避けたいです。 いまだに当時を引きずっている私は、先輩に聞きました。


「大丈夫! 来ないから!! お前があの元課長にパワハラされていたのは俺も覚えているから」


 おおっ、さすが今は優秀な管理職。


「すみません。20年以上も前のことを。まだ会いたくないですよ。 本当に私って執念深いですよね。ははは……」


 笑ってごまかします。


「……いや、お前は自分で考えているより執念深くないぞ……」


「ええっ!? だって私、20年以上前のことをしつこく覚えていて、いまだに会うのを嫌がっているんですよ。本当に大人げないですよね。ははは 」


 先輩はしばらく沈黙しました。


「……うん、まあいいや。とにかくTさんは絶対に来ないから安心して。本当に出席ありがとうな。みなお前に会えるの待ってるから」


 20年以上前に辞めた自分が行っても大丈夫なのか、そもそも覚えられているかも謎ですが、とりあえず当日を待つことにしました。


  ホテルのパーティ会場。受付をすまして中に入ると、様々な人に声をかけられました。


 懐かしい人たち。

 意外とみな覚えていてくれていたんだな、と嬉しくなります。女性のエンジニアは、当時は私一人だけでしたから印象に残っているんだなと思いました。


  電話をくれた先輩が手招きしてくれました。


 案内されたのは、当時の事務の女性の先輩の席の隣。


  ここで、OB会に呼ばれた理由に思い至りました。


 私がいた会社は超体育会系。従業員はほぼ男性です。宴会も女性はその事務の先輩だった人だけです。主催者の人が事務の先輩が女性一人では心細いだろう、と配慮。同じ女性として呼ばれたのだと考えました。


 ようやく安心しました。 実は当時の上司たちに説教される可能性が捨てきれず、内心ビビりまくっていたからです。


 事務の元先輩と、雑談と近況報告に花を咲かせました。


 定刻になりました。 主催した元部長からの、開催の挨拶です。


「皆さんにお会いするのは数年ぶりです。コロナで開催を見送っていたからです。私はこの数年の間に大病をしました。手術が奇跡的に成功し、主治医から奇跡ですと言われ決意しました」


  おおっ、大変だったんだな!


「生きているうちに、やり残した事を果たそう。会いたい人に会っておこう。伝えたいことを告げよう。後悔の無いように生きたい。そう決意し、今回の会合を開かせていただきました。協力してくれた、社員の皆さん、そして集まってくれた皆様方、本当にありがとうございます」


  主催者の挨拶は、会場中の拍手で終わりました。


 人生の大先輩からのスピーチに、柄にもなく感動。

  さて私も悔いなく生きようと、目の前のごちそうに手を出そうとしました。


 しかしできませんでした。先ほどまで壇上で挨拶していた元部長が、私の前に来たからです。

 私は、しまったと思いました。会社員時代は、まず偉い人にお酌をしなければいけなかったのを忘れていました。

 慌てて、元部長のグラスにビールを注ごうとしました。しかし止められました。

 そして、なぜか頭を下げられました。


「いや、本当にすまなかったね。いまだに当時の光景が目に焼き付いていて」


 えっ何の光景?


 恐る恐る、聞いてみました。


「なにを……?」


 元部長は、ハンカチを手にし頬を拭きながら言いました。


「ほら、あなたが受けていたひどいイジメだよ」


 イジメ!?……私が直属のT課長から受けていたパワハラのこと……?


「えっと、なぜそれを○○さんが……謝罪を……」


 元部長は言いました。


「いや、だって知っていたのに止められなかったから……」


 管理職の責任感ということか……えっでもイジメって、した方は忘れてもされた方は忘れないって俗説があるよな。私はされた方だから、まだ覚えていても不思議でないけど、なんで当事者でもない元部長が……?

「よく……20年以上も前のことを……ご記憶で……」


 私の内心。(すげーっ!?確か、この人って県の支社で一番偉かった人。当時の部下って200人以上いたはず。エリート管理職って、頭の中にデータベースでも入っているの!? )


 とりあえず、恐縮しまくる主催者の元部長に、こちらも平身低頭でお詫びとお礼を返しました。


 さて今度こそ、ごちそうをと気を取り直しました。


 しかし、今度は元事業所長が待っていました。


「さっきの○○さんと同じで。俺もTさんを止められなかったことを、わびたくて。悪かった」


「……あっいえ、お気になさらず。もう20年以上前のことですから……」


 ふと、気が付くと目の前には出席者の方の列が並んでいました。そして口々に私へ謝罪の言葉を述べていきます。


 宴会が始まる前の壇上でのスピーチが、頭に浮かびました。


『生きているうちに、やり残した事を果たそう。会いたい人に会っておこう。伝えたいことを告げよう。後悔の無いように生きたい。そう決意し、今回の会合を開かせていただきました』


 もしかして……主催者の元部長のやり残したことって……このOB会の目的って……私への謝罪……!?


 ホテルの豪華なパーティ会場。高い天井にはキラキラ輝くシャンデリア。目の前のテーブルにはサラダやローストビーフが載った皿が、所狭しと並べられている。出席者の前にはワインやビールなどのお酒の瓶とグラス。(私のグラスはウーロン茶)。そんな宴で、お偉いさんたちから一斉に謝罪を受ける。


 えっこれ、知ってる。なろうでよくある場面だ……


 主人公が理不尽な理由で国を追放されて、しばらくして誤解が解けて王宮に呼ばれ王様や大臣たちに謝られる。


 テンプレ展開きました~!!!


 しかし、テンプレと違う展開が一つ。


 謝罪を受けてる私が、状況を理解しきれていません。


 頭を下げるかつてのお偉いさんに、こちらもぺこぺこと下げます。


 数多いなろうのテンプレでも、こんな中途半端なキャラは読んだことありません。


 お偉いさん達の謝罪ラッシュの間、私はずっとなろうのテンプレのことを考えていました。

 10人以上から謝罪を受け、ようやく終わりました。私は隣の席の総務の先輩に、驚きを伝えようとしました。


 しかし、できませんでした。なぜなら彼女も謝罪し始めたからです。


「私からも謝らせて。あの頃、更年期で体調が悪くてフォローができなくて……」


 いやいや、経理作業に慣れない私をフォローしまくってくれたじゃないですか!


 結局、ぺこぺこ謝るのが続きました。


 謝罪を全員から受け、宴も終わり解散となりました。


 とりあえず、一番の目的であったごちそうを食べるも完遂しました。(おいしかったです)

 幹事役だった元先輩に出口でお礼を言われて、会場を後にしました。


 一週間後にちょうど定期的に受けている、メンタルクリニックのカウンセリングがありました。

 顔なじみのカウンセラーさんに、己の身の上に起きた宴のエピソードを語りました。


「それは珍しい、経験をしましたね」


「本当にドラマみたいでしたよ。でも20年以上前のことを、皆さんよく覚えてましたよね。当事者でもないのに」


「……見てる人もイジメはストレスになるんです。面前DVって言って、トラウマになります……」


「そっか、悪いことをしました」


「いやいや、あなた被害者! 悪いことをしたのは、当時の課長! ……でも、どんなパワハラだったんですか? メンタル病んで辞職って相当な事だったんですか!? 」


「えっと、確か……課の飲み会で20人ぐらいの前で無能だ、役立たずだと罵られる。やはり課の会議の時に『お前なんか、いても役に立たないんだよ。全員分のお茶を入れてこい』と言われ出席させてもらえない。会社から補助が出ている忘年会に、自分だけ連絡がない。支所のお花見のあとの焼き肉の片付けを一人でやらされる。50人分の鉄板を屋外の水道で。水が冷たくて寒かったのを覚えてます。会社の福利厚生で利用できるはずの通信教育『お前なんか、勉強しても役に立たないんだよ』と言われ、申請却下。同じ理由で、資格試験の合格祝い金の申請も却下。危険が伴うので、二人以上が推奨される仕事を一人でやらされる。あとは、えっと……いろいろありすぎて……何しろ毎日の事で……細かいのが思い出せず……」


「……わかりました……十分です……20年前って、そんなドラマみたいなイジメが現実にあったんですね……」




今回の教訓。


人は現実でテンプレが起きても、テンプレ通りの行動はできません。(`・ω・´)キリッ


ちなみに私がT課長にパワハラされた理由は、「女のくせに生意気だ」でした。

当時は女性エンジニア、少なかったんです……

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― 新着の感想 ―
 とんでもない会社キタァァァァァ……。  見てて不快になるぐらいのパワハラ横行してたなら、配置転換ぐらいしそうなものですが。 それが無かったという事は、いかすみこ様とT課長のチームが仕事上では成果を上…
今更謝られても…ですよね。 ちなみに仕事中に同居している親から連絡があり 「隣の家が火事でお前の部屋(の壁)が燃えている。」 …っていうのはありました。 タイガーボードだったのて外側だけ炙られた感…
 読ませていただきました。  20年以上前なのに謝られたこと、それはその人たちが後悔していたから。それと、いかすみこさまの人柄や能力を分かっていたから(これが重要)。  そんなふうに思えました。  …
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