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ものは言いよう

作者: 井上さん
掲載日:2026/03/18

名前借りました


名前の元ネタが分かる方、お仕事お疲れ様です

「お前の目は血の色だな」


 婚約者のエキスカが言ったのは、初めて会った、婚約者同士の顔合わせの時だ。


よほど私が気に食わなかったのだろう。

顔を合わせる度に、必ず悪口を言った。


「お前の髪は黒くて地味だな。」


「お前は静かすぎて、誰もいないみたいだ。俺は、賑やかなのが好きなのに」


「読書が好き?暗いな。俺は外に出たいのに、連れて行きたくない」


「書庫に行きたい?俺は外に行って、身体を動かしたい」


 全く噛み合わない。合わせる気もない。


お互いに、合わせる気がなかった。


 エキスカとは、出掛けた事もないし、贈り物をされた事もないし、エスコートされた事も無い。

 本当の政略結婚だ。

月に1回、決められたお茶会でだけ、嫌々会うだけだった。






「お前とは婚約破棄する!真実の愛を見つけた!」


 エキスカが浮気して、知らない令嬢と一緒にいるのは知っていた。


「そうですか」


 だから、あっさりと受け入れた。


「はぁ?悔しくて何も言えないのか?」


 縋りつくとでも思ってたのか?

凄い妄想だ。


お互いに、歩み寄らなかったのに、私に好かれていると思っていたなんて、現実が見えていない。


 その浮気相手のご令嬢のプローブも、エキスカの地位と金が目当てなんだけど、絶対に言わない。


エキスカは双子で、私と婚約した方が跡を継ぐ事になっている。

…と言うのを、忘れたのか?

分かっていて、真実の愛を選んだのか?


あえて聞かない。


「では、失礼」


 私は、父に婚約破棄の話をしに家に帰った。






 婚約破棄、それから、エキスカの双子の弟のコントラとの婚約。

手続きはすぐに終わった。


 コントラとのお茶会。


「お前の目はルベライトのようだな」


 ルベライトとは何だろう?

私が首を傾げていると


「今、注文しているんだ。できたら持ってくるね」


 双子の兄エキスカとは違って、にこやかに話すコントラ。

ちょっと戸惑ってしまう。


「今度、一緒に出掛けよう?新しい書店ができたんだ?行った事ある?」


 書店?私が読書が好きなのを知ってるの?

きょとんとしていると


「行った事あった?でも、新刊が出てるかもしれないよ?一緒に行こう?」


 と、続けた。


「私で良いんですか?」


「ん?だって婚約者だろう?一緒に出掛けるのは普通だろう?」


 その普通が、今まで無かった。

困っていると


「エキスカとは出掛けなかったの?」


 私は黙って頷いた。


「そっかぁ。じゃあ、これから慣れていこうね」


 コントラとは、お互いに色々な話をした。


「婚約者がいる生活は、全部初めてなんだね。私と一緒だね。これからよろしくね」


 嬉しそうに笑って帰っていった。






「お前の髪は、夜空のようだな…」


「静かで、読書が捗るなぁ…」


「今度、うちの書庫に案内しようか?」


 新しい婚約者コントラは、贈り物をくれるし、手紙もくれる。エスコートもしてくれるし、一緒に出掛けてもくれる。

月に1度のお茶会にも喜んでくるし、それ以外の日にも、お茶に誘ってくる。

 今までとは全然違う、忙しくも充実した日々を送っていた。







「ヘーベル!お前、我が家に来ているそうだな!婚約破棄したのに、俺に未練があるのか?残念だったな。俺にはもう新しい婚約者がいるんだ!」


 プローブと腕を組んで、ドヤ顔で言う元婚約者のエキスカ。


「私の事より、ご自分の心配をしたらいかがですか?」


「は?俺は、侯爵家の跡取りだぞ」


「…そうですか。失礼いたします」


 私は黙って去った。


やっぱり覚えてないのね…後継者が変わった事に、いつ気付くのかしら?

 コントラの双子の兄弟だからといっても、私に教える義理は無い。


私と婚約したコントラは、今、後継者としての教育を受けている。


婚約披露パーティーをして、コントラが後継者ということも発表した。

招待したエキスカと、プローブとプローブの家族は、来なかったけど。



 最近は、社交にも連れて行かれて、他の貴族達は、コントラを後継者として見ている。


 知らないのは、エキスカと、プローブとプローブの家族だけだろう。

プローブは、侯爵家に嫁げると思い込んでいる。

態度にも言葉にも表れている。


「俺は、次期侯爵だぞ」


「私は、次期侯爵夫人よ」


 何も知らない人は、そうなんだ…と信じたが、事情を知っている人からは、呆れた目をされていた。

でも気付いていない。


 色々な所でこれをやり、やりたい放題していた。






 侯爵様は婚約の時に、後継者の話は何もしていないと言っていた。

婚約したいと言うから、婚約させただけだと。


ただ、「将来どうするか考えておくように」としか言わなかったらしい。

 プローブの両親にも。

家を継がない者は、王宮に文官として勤めるか、騎士になるか、継げる爵位が無ければ平民だ。


 自分が侯爵家を継ぐと思い込んでいるエキスカは、将来の為に何かをしている気配はない。


後継者の教育も受けてないのに、跡継いでどうするんだろう?


 そんな事も考えられない、頭お花畑の人なので、2人はお似合いだな、と思って、2人の事は忘れた。



 今日は、コントラとの社交がある。


別の侯爵家にお茶会で呼ばれていた。

後継者同士の交流のお茶会らしい。


今後の国を支える若者同士知り合えば、協力したりもできると、主催者が考えたらしい。


 その通り、知り合いが増え、また婚約者の令嬢とも知り合い、新しい交流が増え、お茶会は成功した。

新しい取り引きもあったらしく、また開こうという事になった。


 私は、知り合った令嬢達と、手紙のやり取りを始めた。








「コントラ、俺が跡を継いだら、お前は出ていけよ」


 エキスカが偉そうに言う。後継者でもないのに、どうやって継ぐのかな?


「貴方みたいな能無し穀潰しを、我が家に置いておくわけないでしょう」


 プローブも、偉そうに言う。それは、自己紹介かな?

男爵家の令嬢で、侯爵家の教育を受けてないのに、夫人になれるとでも?


2人は、相変わらず


「次期侯爵だぞ、優先しろ」


 とか


「私は次期侯爵夫人よ!私の言う事が聞けないの?」


 とかやっていた。


そんな人と付き合いたい人はいないのか、友人達は離れていった。







 今日は夜会。

この国の全ての貴族が招待される、大規模な夜会だ。


 爵位の高い順に、家ごとに王家の方々に挨拶をする。


 父である侯爵様の後に、エキスカが言った。


「侯爵家の跡継ぎとして、立派に王子を支えたいと思います」


「ん?お前が?」

 

 王子が聞いた。


「はい」


「何を言っているんだ?跡継ぎは、コントラだろう?」


 王子がまた聞いた。


「違います!俺です!」


 エキスカが叫ぶが、コントラが横から


「申し訳ありません。兄は現実が見えていなくて、自分が跡継ぎだと思い込んでいるのです」


 と、言うとエキスカがまた叫んだ。


「何だと!?お前、俺が羨ましくて妬んで、そんな事を言って俺を貶めるのか?」


 王子が矢継ぎ早に言う。


「侯爵に後継者と言われたか?」


「後継者教育を受けてないのに?」


「後継者として発表されたのはコントラなのに?」


 そこで、黙っていた侯爵が言った。


「将来の事を考えておけと言っただろう?」


「それは、跡を継ぐ事だと」


 エキスカが言うが


「誰がお前を後継者にすると言った?」


 侯爵は冷たく言った。


「え?え?」


「侯爵家の跡継ぎだと、偉ぶって恥ずかしい言動をして!」


 その時、プローブの父が言った。


「侯爵様!話が違います!」


「私はこいつが後継者だと一言も言っていない。貴方は、侯爵当主と侯爵子息の話、どちらを信じた?」


 プローブの父は驚いた目をした。

妄想癖のエキスカの話を信じるからいけないんだよ。

ちゃんと、侯爵家を継ぐのは誰か、侯爵様本人に聞けば良かったのに。


「後継者はこの2人の婚約披露パーティーの時にコントラだと発表した。お前は来なかったがな。来ていればこんな恥はかかなかったものを」


 侯爵は言いながら、私とコントラを示した。


「誰も教えてくれなかったのか?婚約者がいる男を寝取った娘と注意しない親だから、関わりたくなかったんだろうな」


 侯爵の言葉に、王子が続ける。


「それに、後継者でもないのに、次期侯爵だと言い、次期侯爵夫人だと言う2人に注意をせず、野放しにしていた。お前の家はどういう教育をしているんだ」


 その時、エキスカがコントラに話しかけた。


「お前、ヘーベルと婚約したのか?」


「そうですよ」


 コントラが答える。


「こんな地味で暗くて、目が血の色なのに?」


 エキスカの言葉に、コントラが怒りを表す。


「貴方の目は節穴ですね。こんなに可愛いのに!」


「どこがだ」


「私の目の色の紺色のドレスがよく似合う。髪は夜空のように綺麗だし…目はルベライトの色のように綺麗だし…」


 ウットリして私の手を取り、指輪を見せるコントラ。

その指輪には、婚約した時に言っていた、ルベライトという赤い宝石がついていた。


「コントラが後継者として王宮に書類が提出されている」


 王子が言う。


「私と婚約した方が後継者になる契約なんですよ」


 私も言った。


「え!?どうして?」


 驚いたエキスカが目を丸くする。


「お忘れですか?婚約した時に、侯爵様が仰ってましたよ。我が家は伯爵家といえども王家からの信頼が篤い。だから、どうしてもと、お願いされて婚約したのですが」


「お前が俺に一目惚れしたんだろう?」


 エキスカが信じられないと首を振る。


「まさか。初対面で『お前の目は血の色だな』と言った方に一目惚れするとでも?」


 グッと詰まるエキスカだが、


「…婚約者しなおそう!」


 と妄言を言った。


「貴方はプローブと婚約しましたよね?私はコントラと婚約しています」


「はぁ?お前、俺が好きだっただろう?プローブとは、婚約破棄する!だから…」


「よくそんな妄想ができますね。貴方が大勢の前で婚約破棄した事は、皆さんご存知ですよ。自分が後継者になりたいからと、婚約者のプローブを捨て、また私と婚約しようとは…」


 エキスカが周りを見たら、冷たい目で見られていた。


「そんな…」


「初対面から私を嫌ってましたよね。私もです。婚約破棄してくださりありがとうございました」


 私はそう言うと、コントラと寄り添う。


「ヘーベルとの婚約は俺のだって言ってたのに、いつも文句ばかりで、とうとう捨てちゃって。びっくりしちゃったよ。でもありがとう。こんなに可愛い婚約者ができた」


 私達は見つめ合った。


「侯爵にならないなら婚約破棄するわ!」


 その時、プローブが叫んだ。


「何だと?」


 エキスカがプローブに向かって叫ぶ。


「侯爵にならないなら何の価値もないもの」


「俺を愛していると言っていただろう?」


「次期侯爵だからよ!」


 そこで、侯爵様が言った。


「お前達は婚約破棄できない。もし婚約をなくすなら、ヘーベルに慰謝料を払う事になっている」


「「え?」」


「お前達が婚約する時に言ったはずだ。お前達は真実の愛だから大丈夫だと言っていたではないか」


「「そんなぁ~」」


「エキスカ!お前は侯爵家から出ていけ。侯爵家の者として相応しくない行動をした」


「父上!」


「将来の事を考えていないお前が悪い。結婚して2人で何とかしろ」


「「そんな〜」」


 エキスカとプローブは、王子の命令で、近衛に支えられながら退出させられた。


「皆のもの!騒がせたな!夜会は始まったばかりだ。楽しんでくれ!」


 侯爵様とコントラと私も、王子達王家の方々に礼をし、周囲の人々にも礼をして、場を退いた。





 私は、初めて婚約者にエスコートされて夜会に参加した。と、言ったら、コントラは


「今日は楽しい思い出を沢山作ろう」


 と言った。


「婚約者に贈られたアクセサリーとドレスで夜会に参加するの、初めてなのよ。嬉しい」


「可愛いなぁ…私の可愛い婚約者殿。私と踊っていただけませんか?」


 コントラが、笑顔で手を差し出す。


「はい」


 コントラの手に自分の手を重ね、エスコートされてダンスホールへと行き、ダンスを踊った。


ルベライト 赤色トルマリン

広い心、貞節、思慮深さ、愛の情熱



読んでいただきありがとうございます

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