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森の調査①

書くのめちゃくちゃ楽しい!!

今日もう一回更新します!

 アルディアの朝は早い。夜明け前から人が動く。パン屋は火を入れ、荷車は門へ向かい、探索者たちは武器を整える。レンが広場に着いたとき、すでに何人かの若者が集まっていた。昨日の張り紙を見て来た新人たちだろう。どこか落ち着かない空気が漂っている。武器を持つ者もいるが、手慣れている様子ではない。森に慣れている人間は少ないようだった。レンは少し離れた場所に立ち、広場を観察する。都市の広場は村とは違う。人の数が多く、音も多い。だが人の流れには一定の規則がある。商人は市場へ、労働者は工房へ、探索者は門へ向かう。観察していると自然と動きが読めてくる。しばらくして背の高い青年がレンの横に立った。


『お前も新人?』

「そうだ」

『俺もだ、名前はガルド』

「レンだ」


 ガルドは腕を組みながら広場を見回した。


『思ったより人が少ないな』

「八人くらいか?」

『まぁ森の噂のせいだろうな』

「変異体とやらの話か」


 ガルドが苦笑する。


「門でも言われたよ化け物が出るってね」


 そこへ弓を背負った青年が近づいてくる。


『本当に出るらしい、探索者が何人かやられた』

「お前、名前は?」

『…ミルクだ。そういうあんたは?』

「レンだ。よろしく」


 ミルクはレンの足元を一度見た。


『森を歩く人間だな?足音が軽い』

「癖なんだよ」

『狩人か』

「昔ちょっとな」


 ミルクが少しだけ頷いた。


『森を知らない奴が多いから助かる』


 そのとき元気な声が聞こえた。


『おはようございます!』


 振り向くと小柄な少女が手を振っている。


『私も新人です!リナっていいます!』


 ガルドが笑う。


『おいおい元気だな、怖くないのか?森だぞ』

『探索者さんがいるじゃないですか』

『まあな』

『だから大丈夫ですよ!』


 広場にさらに数人集まり、全部で八人になった。年齢はほとんど同じくらいだ。二十前後。都市育ちが多いらしく、森の装備も軽い。レンは少し気になった。靴の底が薄い。枝や石が多い森では歩きにくいはずだ。だがそれを言う必要はない。森に入れば自然と分かることだ。そのとき広場の空気が変わった。二人の男が歩いてくる。昨日見た探索者だった。四十代の男と三十代の男。新人たちの会話が自然と止まる。探索者は新人を一人ずつ見た。


『八人全員揃ってるな』


 三十代の探索者が言う。


『今日の仕事は俺らがする森の調査、それの補助』


『荷物を運ぶ、周囲を見る、指示に従う。たったこれだけでいい』


 四十代の探索者が続ける。


『森では勝手な行動は禁止、単独行動も禁止、何か見つけたら報告。これを徹底しろ、分かったな?』


 新人たちは頷く。探索者はさらに言った。


『皆森の噂は聞いているな?変異体が出現している』


 空気が少し重くなる。探索者は淡々と続ける。


『普通の獣とは生物としての格が違う。体が大きい、力が強い、速い。ただ純粋な身体能力だけで探索者がやられてる、新人が戦える相手じゃない』


 ガルドが小さく言う。


『出る可能性は?』

『低い…がゼロじゃない』

『種類は?』

『猪型』


 広場が少し静かになった。猪は森でも危険な獣だ。それが大きくなった存在なら、危険度は想像できる。探索者は短く言った。


『街道付近ならまず出ないはずだ…だが警戒はする』

『質問は以上か?出発する』


 新人たちは列になり、都市アルディアの門へ向かった。門を抜けると景色が変わる。石の道が土の道に変わり、建物の代わりに畑が広がる。さらに進むと森が見えてきた。レンは森を見た瞬間、わずかに目を細めた。やはり違和感がある。遠くから見ても分かる。森が静かだ。鳥が少ない。風の音が強く聞こえる。ミルクが小さく言った。


『……静かだな』


 レンが答える。


「分かるか」

『あきらかに鳥が少ないし音がしない、普通の森じゃない』

『そうか?俺には普通に見えるぞ』

『森はもっと騒がしい』

『綺麗な森ですけど』


 レンは答えなかった。説明しても分からない。森の違和感は、長く森にいる人間しか気づかないことが多い。探索者たちは前を歩きながら森を観察している。どうやら同じことを感じているらしい。やがて一行は森へ入った。木々の影が濃くなる。空気が少し冷える。足元には落ち葉が積もっていた。レンは自然と歩き方を変える。足音を殺す。枝を踏まない。狩人の歩き方だ。しばらく進んだところで探索者が止まった。


『ここで休むぞ』


 荷物が下ろされる。新人たちは少し緊張が解けた様子だった。ガルドが水を飲みながら言う。


『思ったより普通だな』


 ミルクが森を見ながら言う。


『まだ浅い』


 レンは地面を見ていた。落ち葉の下に残る跡。新しい土の乱れ。何かが通った跡だ。だが普通の獣ではない。重い。レンは少し離れた場所を見た。木の幹に深い傷がある。何かが体をこすりつけた跡だ。普通の猪では届かない高さだった。レンは静かに息を吐いた。どうやらこの森の異変は、本当に街道の近くまで来ているらしい。探索者が立ち上がる。


『休憩終わり、もう少し奥まで調べるぞ』


 新人たちは再び歩き始めた。森は相変わらず静かだった。風だけが葉を揺らしている。その奥で、何かがゆっくりと動いていた。だがそのことに気づいた者は、まだ誰もいなかった。

※この小説は作者の完全な自己満です。

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