泡沫の夢。
沢山傷付き、傷付けた。それでも一緒にいたいと願ったのは、君だから。
子供が出来たら、なんって名付けようか?
そんなやり取りがあったのは、疾うの昔。大事だった“筈”の我が子に手を掛けて、満足気に笑う男は誰?
空っぽの浴槽に、少しだけ出したリンスを塗りたくり、その中へ湯を張る。そうする事で浴槽は滑り易くなり、最初に入った者が転倒する確率が上がるのだ。
数ヶ月に一度、通院している先で、とあるナースに俺は首ったけだ。そのナースや関係者から、彼女と俺の関係性を進展させる為に、現在ある家族を亡き者にしないか?という提案を受けて躊躇っていると、浴槽でのやり方を教えてもらった。
もし転倒して大怪我、または死んだら、家族の運が悪かった。逆に助かったら、コイツ等が生きてるから自分達は一緒になれない、憎い…死んでくれ…って、考えればイイ、と。
賢い彼女の名案に、俺は乗った。そして実行し、漸く念願が叶う。
「ハハハッ!!!!漸く…漸く、彼女と俺は……」
漸く邪魔者はいなくなった。後は、彼女に連絡してーーとほくそ笑むも、ふと視界に入る、“我が子”だった物体。
……ほんっっっと、死んでも“邪魔な存在”だ。なんでこんな奴なんか生まれてきたんだろう…。コイツがいなかったら、あんなクソ女とも結婚せずに済んだのに……あーあ。
俺の人生、ほんっっっとうにコイツ等のせいで狂わされたわ。
…さぁー、ってと♡リンス風呂を提案してくれた、愛しの賢い彼女に連絡して、早く結婚の話を……。
その後、俺は警察に捕まった。愛しの彼女が、俺を売ったからだ。人殺しした人間だから、怖くて通報したんだって…。
俺は只、君が好きだから…君と一緒になりたいから…家族を殺して、それで……。