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『転生したら弱小領主の嫡男でした!!元アラフィフの戦国サバイバル~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』  作者: 姜維信繁
転生!そして長崎が横瀬に変わる!?-歴史改変仕方ない。やること多すぎです。-
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26年ぶりの父との邂逅

「幸い挫滅している部分も少なく、壊疽えその心配はありません。ただ、毒素が血を巡って五臓六腑を侵しております。持ち直したとしても、後は運を天に任せるしかありませぬ。」


親父は一時は回復した。


起き上がれもしたが、また寝たきりになった。


医師はなかなか塞がらない傷口を水で洗い、包帯を取り替えて、止血と化膿どめの膏薬を塗り終えて、首を振りながら言った。


「は?!何言いよっとや!医者やろが!治せや!治すとが仕事やろがあ!!」


俺は医者につかみかかる。


平九郎、と母が俺の手を抑えて制す。母だってきついはずだ。


去年息子を一人なくしているんだ。この上自分の最愛の人まで失う事があったら、生きる希望を失うだろう。


医者は一礼して部屋をでる。


「しかし母上!・・・・」

なおも収まらない俺が何かを告げようとすると、


「やかましいのお、おちおち寝てられんわ。」

親父が目を覚まし、天井を見つめながら独り言を言う。


「目が覚めましたか!」「あなた!」

身を乗り出す。頭の中のもやもやした黒い雲が晴れた。


「うむ。」


「父上、ご無理なさらないでください。」

起き上がろうとするので止めようとするが、親父はそれを手で制する。


すうぅぅぅ、はあぁぁぁ。深呼吸をした後で父は

「平九郎、家督をつげ。」


一言、静かに言った。


「え?いま何と?」


「なんども言わせるな。家督をつげと言ったのだ。」


「え?いやしかし、それがしはついこの前元服をすませたばかり。それに父上はまだご存命で、元気になったではないですか。」


頭がぐるぐるまわる。理解が追いつかない。家督だって?


「これが、元気に、見えるか?・・・それに死ぬ前に家督相続など、、、珍しくもない。どこでもやっている。逆に、だからこそ、だ。医者も言っていたであろう?運を天に任せるしかない、と。」


親父の声に力はない。やはりつらそうだ。ゆっくり、しかしはっきりと続ける。


「初陣もこの前立派に果たしたではないか。大将首まで取って。」


「あれは、その・・・。無我夢中で何も覚えておりませぬ。」

俺は照れ笑いを隠しながら言う。


「それから、な。先日言っておった産物の件な、あれはもうよい。」


?どういう事だ?


「それはいったい?」


「わざわざ俺に見せなくてもいい。自信があるのだろう?ならばよい。」


しかし・・・、と言おうとした俺の言葉を遮って、


「良いのだ。これからはお前の好きにしろ。」

やはりつらかったのだろう。親父はもう一度横になる。


「吉野、すまないな。苦労をかける。」

母を見ながら、もう一度手を握る。


「本当です。でももう慣れました。」

すねたような母の言葉に、親父は微笑みを浮かべる。


「少し、平九郎と二人にしてくれないか。」

母は少し残念そうだったが、はい、と静かに答えて立ち上がり、すすす、と部屋をでた。







「さ、い、かい・・・・ばし」


え?なんだって?さ、い、西海橋!!??


「親父、今なんと?」


「西、海、橋の、アイスクリーム、そんなにおいしかったか?」


なんだ、いったい、どういう事だ?


「アイスが食べたい食べたいって、ダダをこねてただろう?」


「モナカから食べたり、ぺろぺろなめたり、かぶりついたり、三人ばらばらで。」

ふふふ、と思い出して笑う親父。


おいしいけれど特別ではなく、味も普通のシャリシャリしたシャーベットみたいなアイスクリーム。


どういう事だ?この人はいったい何を言っているんだ?誰なんだ?


「小学校の運動会の時、みんな持ってるからって、メーカー品のジャージが欲しいって、ダダをこねたよな。」


小学校?メーカー?ジャージ?どれもこの時代の言葉じゃない。


「ごめんな、あの時は。お金が足りなくて上下セットじゃなくて、バラバラのメーカーの、しかも上はTシャツだけなんて。」


なんだ、どうした?俺のこの頬を伝っているのは涙なのか?


「そう不思議そうな顔をするな、武。」


「おやじ、なのか?本当に親父なのか?」


「そうだ、お前の父親だ。久しぶりだな。何年ぶりだ?ややこしいな。」


とめどなく涙が流れた。前世の親父が死んだ時、もちろん悲しかったが、涙はでなかった。身内の死って、人の死って、こんなもんなのかな、と妙にドライだった。


それが、涙が止まらない。いろいろ聞きたいのに


「ぐすん、えぐっ、親父、おやじ、おやいs.うsじうsおやじ・・・」


嗚咽まじりで言葉にならない。


「俺も最初にこっちに来たときには驚いた。状況が飲み込めるまで時間がかかった。それでも当主になってからだったから、表立って俺を非難するやつはいなかった。」


「色々と試しながらやってきたが、お前みたいに歴史の知識なんてないから失敗失敗失敗の連続さ。ましなのは木綿と帆船くらいだ。」


「とにかく、あとはお前の番だ。頑張ってくれよ、ご当主様。・・・・・・・・・・・・・・・・少し、疲れた。寝るよ・・・・。」


そう言って親父は再び目を閉じた。

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